2025年春、ファッション好きの間で話題となっているバレンシアガ(Balenciaga)のYouTube広告。
その中でも、シルバーのドレスをまとい、圧倒的な存在感を放つ一人の女性に注目が集まっています。
「この女性は誰?」 「なぜこんなに印象的なの?」という声がSNSを中心に急増中です。
本記事では、その女性の正体や、広告の背景、そしてバレンシアガが仕掛ける現代ファッションの新たなメッセージについて、深掘りしていきます。
バレンシアガの2025年サマーキャンペーンとは?
オールド・ハリウッドへのオマージュ
バレンシアガの2025年サマーキャンペーンは、世界的に著名なフォトグラファー兼映像作家ナディア・リー・コーエン(Nadia Lee Cohen)が手掛けたことで大きな注目を集めています。
今回のキャンペーンは「The Screen Tests(ザ・スクリーンテスト)」と題され、1930~50年代のハリウッド映画の衣装テスト(※1)を現代的に再解釈したビジュアルが特徴です。
※1:衣装テスト…映画撮影前に俳優が衣装を着てカメラテストを行うこと。役柄や雰囲気を確認するために用いられる。
豪華キャストが“キャラクター”を演じる
出演者には、カイル・マクラクラン(Kyle MacLachlan)、リンダ・ホーニマン(Linda Honeyman)、レイチェル・セノット(Rachel Sennott)、そして今回注目のSunnyi Melles(サニーイー・メルズ)など、映画やアート、ファッション界の多彩な顔ぶれが揃っています。
彼らは「ファム・ファタール(運命の女)」「アーティスト」「隣の家の少女」「悪役」「天才」など、映画でおなじみの“原型的キャラクター”に扮し、衣装と演技で個性を際立たせています。
シルバーのドレスの女性、サニーイー・メルズとは?
“ソーシャライト”としての登場
話題のシルバーのドレスを着た女性は、ドイツ出身の名女優Sunnyi Melles(サニーイー・メルズ)です。
彼女はキャンペーン内で「The Socialite(ソーシャライト)」――つまり社交界の名士――という役柄を演じています。
Look 56と呼ばれるコレクションのドレスを身にまとい、モノクロームのカーテンを背景に、まるで1950年代の映画のワンシーンのような雰囲気で登場します。
ナレーションで際立つキャラクター性
動画内では、ヴィンテージ映画のスクリーンテストを思わせるナレーションが流れ、彼女のキャラクター像がユーモラスかつ皮肉を交えて紹介されます。
“ここに登場するのはニューヨークのソーシャライトの原型。現代家族の厳格なマトリアーク(家長)であり、彼女の舌を満足させるのは、最も苦い失望だけ…”
このような語り口が、Sunnyi Mellesの持つ独特の存在感や、バレンシアガが描く“現代の社交界”像を際立たせています。
ファッションとアイデンティティの交差点
衣装がキャラクターを作る
このキャンペーンの最大の特徴は、「服装やスタイリングが、その人のキャラクターや役割をいかに形作るか」という点です。バレンシアガのクリエイティブ・ディレクター、デムナ(Demna)は、服を単なる“着るもの”ではなく、“なりたい自分”を演じるためのツールとして捉えています。
例えば、サニーイー・メルズが着るシルバーのドレスは、単なる高級ドレスではなく、“社交界の女王”というキャラクターを象徴するアイテムです。
ドレスのシルエットや生地感、スタイリングは、彼女の立ち居振る舞いや表情と相まって、観る者に強烈な印象を与えます。
キャンペーンに登場するアイテムの数々
今回のサマーコレクションでは、以下のようなアイテムが登場します。
- 新作「Rodeoバッグ」:ミネラルグリーン、グレー、アーモンドなど3色展開
- バスケットボールスニーカー:スポーティーかつラグジュアリーなデザイン
- Scholl(ショール)とのコラボクロッグ:80mmヒールのサンダルやプラットフォームクロッグなど
- ドレス、パワーショルダーコート、デニムセット、ポロシャツなど多彩なラインナップ
これらのアイテムは、単なる“商品”としてだけでなく、それぞれのキャラクターの個性や物語を表現するための“舞台衣装”として機能しています。
バレンシアガが投げかけるメッセージ
「あなたは誰になりたい?」
今回のキャンペーンが投げかける問いは、「あなたは誰になりたい?」というシンプルかつ深いものです。
現代社会では、SNSやファッションを通じて、私たちは日々“なりたい自分”を演じています。
バレンシアガは、服やスタイリングを通じて、その“演じる力”を最大限に引き出すブランドであることを、今回のキャンペーンで強く打ち出しています。
ファッションの“演技性”と現代性
かつてのハリウッドスターが衣装やメイクで“スター”になったように、私たちも服を着替えることで“新しい自分”を演じることができます。
バレンシアガはその“演技性”を、現代の価値観やジェンダー観、アイデンティティの多様性と重ね合わせ、ファッションが持つ力を再定義しています。
バレンシアガの革新とマーケティング戦略
キャンペーンのインパクトと数字
- 2025年3月18日に公開されたこのキャンペーン動画は、YouTubeやInstagramなどで累計500万回以上再生され、SNSでの関連投稿は1万件を超えています(2025年5月時点)。
- 参加キャストは総勢10名以上。俳優、アーティスト、モデルなど多様なバックグラウンドの人物が登場し、それぞれ異なるキャラクターを演じています。
コラボレーションと新作アイテム
今回のサマーコレクションでは、イタリアの老舗フットウェアブランドSchollとのコラボレーションによるサンダルやクロッグも話題です。
80mmヒールのサンダルや、伝統的な木製ソールを現代的にアレンジしたプラットフォームクロッグなど、快適さとデザイン性を両立させた新作が揃っています。
また、RodeoバッグやLe City Basketなど、バッグの新バリエーションも登場。バレンシアガのアイコンである“ビッグシルエット”や“パワーショルダー”を取り入れたウェアも健在です。
まとめ
バレンシアガの2025年サマーキャンペーンは、単なるファッション広告を超え、現代社会における“なりたい自分”や“演じること”の意味を問い直すアート作品のような存在です。
シルバーのドレスを着たサニーイー・メルズは、“ソーシャライト”というキャラクターを通じて、ファッションが持つ変身力や、自己表現の自由さを体現しています。
「服は自分を語るもうひとつの言語」。バレンシアガの広告は、そんなメッセージを私たちに強く投げかけているのではないでしょうか。
今後もバレンシアガがどのような“新しい自分”を提案してくれるのか、目が離せません。