突然の“同意強制”に戸惑うユーザー
2025年5月、LINEとYahoo! JAPAN(現・LINEヤフー株式会社)の利用者、約1億人に衝撃が走りました。
アプリを開くと表示される「同意する」ボタン――それ以外の選択肢はなく、同意しなければサービス自体が使えない仕様に。
SNSや掲示板では「なぜ今、強制なのか」「プライバシーは守られるのか」「回避策はあるのか」と不安や疑問の声が噴出しています。
本記事では、今回の同意強制の背景から、回避策の有無、個人情報保護の観点、そして今後の私たちの選択肢について、専門的な視点と筆者の見解を交えて深掘りします。
なぜ今「強制同意」なのか
LINEヤフー統合と新プライバシーポリシー
2023年10月、LINE株式会社とヤフー株式会社は経営統合し、2025年5月からプライバシーポリシー(※1)が一本化されました。
この統合で、LINEとYahoo! JAPANのサービス間でユーザー情報の連携が進み、利便性向上や新サービスの提供が期待されています。
(※1)プライバシーポリシー:サービス運営会社が、ユーザーの個人情報をどのように収集・利用・管理するかを定めた規約。
「同意保留」はもうできない
これまでは「あとで確認する」などで同意を先送りできましたが、2025年5月以降は「同意しなければ一切サービス利用不可」となりました。
実際、LINEアプリやYahoo! JAPANアプリを起動すると「同意する」以外の選択肢が表示されず、同意しない限りメッセージ送受信や検索など、基本機能も使えません。
具体的な数字で見る影響
- LINEの国内月間アクティブユーザー:約9,600万人
- Yahoo! JAPANの国内月間アクティブユーザー:約5,400万人
- 統合後のID連携数:2,600万件(2024年末時点)
これだけの規模のサービスで「同意強制」は、国内のインターネット利用環境に大きなインパクトを与えています。
回避策は存在するのか?――現状の結論
公式には「回避不可」
結論から言えば、現時点でLINEとYahooの新しいプライバシーポリシー同意を「回避」する公式な方法はありません。
同意しなければ、アプリの機能は一切使えず、事実上「同意するか、使わないか」の二択です。
法的な観点から見た「強制同意」
欧州のGDPR(一般データ保護規則)では「自由な意思による同意」が原則ですが、実際には巨大プラットフォーマーが「同意しないなら使えない」という“強制同意”を求めるケースが後を絶ちません。
LINEヤフーの今回の措置も、こうしたグローバルな潮流の一例といえるでしょう。
非公式な抜け道は?
SNSなどでは「アプリのバージョンを戻す」「Web版を使う」などの“裏技”が噂されていますが、いずれも一時的なものであり、根本的な解決策にはなりません。
また、セキュリティやアカウント停止のリスクも高く、推奨できません。
プライバシーへの懸念と利用者の選択肢
度重なる情報流出と不信感
2024年11月には、LINEアプリ利用者約44万人に影響する大規模な個人情報流出が発生し、39万人分の情報漏洩が確認されました。
過去にも中国の委託先からLINEユーザー情報にアクセスできた事例や、Yahoo! JAPANのID情報が韓国NAVER社に提供されていた問題があり、ユーザーの不信感は根強いものがあります。
どんな情報が収集・利用されるのか
LINEヤフーのプライバシーポリシーでは、以下のような情報が収集・利用されると明記されています7。
- アカウント情報(氏名、電話番号、メールアドレスなど)
- デバイス情報、位置情報
- サービス利用履歴、購買情報
- サードパーティ(外部委託先)への情報提供
この情報は、サービスの利便性向上や広告配信、セキュリティ対策などに利用されます。
利用者ができること
- プライバシー設定の見直し:LINEやYahooのアプリ内で、広告設定や情報共有範囲を最小限にする
- 利用停止・退会:どうしても同意できない場合は、アカウント削除や他サービスへの乗り換えを検討
- 情報の最小化:必要以上の個人情報を登録しない、不要な連携アプリを解除する
今後の展望
データ統合のメリットとリスク
LINEヤフーは、統合によって「ユーザー体験の向上」「新サービス創出」「広告の最適化」などを掲げています。
例えば、LINEとYahooのIDを連携することで、クーポンやポイント、金融サービスなどの利便性が高まる一方、個人情報の一元管理によるリスクも高まります。
「同意強制」は社会的課題
巨大IT企業による「同意しないなら使えない」という姿勢は、ユーザーの選択肢を著しく狭めています。
日本国内でLINEやYahooの利用が生活インフラ化している現状では、実質的に「同意せざるを得ない」状況です。
一方で、プライバシー保護の意識が高まる中、今後は「選択できる同意」「限定的な同意」など、より柔軟な仕組みが求められるはずです。
グローバルな規制動向にも注目
欧州では“強制同意”に対して規制当局が介入し、企業に是正を求める事例も増えています。
日本でも今後、個人情報保護法や消費者保護の観点から、より厳しい規制やガイドラインが策定される可能性があります。
プライバシーポリシーと法的義務
プライバシーポリシーはなぜ必要?
日本の個人情報保護法や、米国カリフォルニア州のCCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)など、世界各国で「個人情報を収集するサービスはプライバシーポリシーを設け、利用者に明示すること」が義務化されています。
これは、ユーザーの権利を守り、企業の透明性を高めるためのグローバルスタンダードです。
LINEヤフーの今後の展開
2025年以降、LINEヤフーは「Connect One」構想のもと、広告やID連携、ミニアプリの拡充など、さらなるサービス統合を進めていく方針です。
これにより、企業とユーザーの“1対1”の関係がより強化される一方、情報管理の厳格化が求められます。
まとめ – 私たちにできること
- 2025年5月以降、LINEとYahooのプライバシーポリシー同意は「強制」になり、同意しないとサービスを使えません。
- 公式・非公式を問わず、現時点で「同意回避」の抜け道はありません。
- 個人情報保護への懸念がある場合は、プライバシー設定の見直しや利用停止など、自分に合った選択を。
- 今後もサービスのアップデートや法規制の動向に注視し、納得できる形でデジタルサービスと付き合う姿勢が求められます。
「同意するしかない」現状に違和感や不安を覚える方も多いはずです。
しかし、私たち利用者が声を上げ、より良いプライバシー保護の仕組みを求めていくことが、今後のサービス改善につながると信じています。