2025年5月、スイス南部の美しい山村ブラッテンを突如として襲った大災害が、世界中に衝撃を与えました。
標高の高いロイチェンタール渓谷に位置する人口約300人のこの村は、上空にそびえるビルヒ氷河(Birch Glacier)の崩壊によって、ほぼ壊滅状態となりました。
事前に住民は避難していたものの、1名が行方不明となり、多くの家屋が土砂と氷に飲み込まれました。
地元当局やスイス政府は緊急対応を進め、軍の災害救助部隊も出動。
SNSでは現地映像が拡散され、気候変動による氷河融解のリスクが改めて注目されています。
本記事では、災害の詳細、背景にある気候変動、現地やSNSの反応、今後の課題について多角的に解説します。
氷河崩壊の瞬間と被害の全貌
2025年5月28日午後3時半ごろ、ビルヒ氷河の大規模な崩壊が発生しました。
150万立方メートルもの氷と岩石、泥が一気に村へと流れ込み、厚い茶色の泥流と巨大な砂埃が村を覆いました。
BREAKING: Massive Glacier Collapse in Blatten, Valais (Switzerland) – May 28, 2025
— Weather Monitor (@WeatherMonitors) May 28, 2025
Over 3.5 million m³ of ice, rock, and snow collapsed from the Birch Glacier, putting 9 million tons of pressure on the glacier.
The entire village of Blatten (approx. 300 people) was evacuated in… pic.twitter.com/ntmV35GL8o
地震計はマグニチュード3.1の揺れを記録し、現場には雷鳴のような轟音が響き渡りました。
事前に地質学者が氷河の異常な動きを観測し、5月19日には住民全員と家畜が避難していましたが、90%以上の家屋が破壊または埋没し、1名が行方不明となっています。
近隣のロンザ川(Lonza River)も氷河の土砂でせき止められ、洪水や二次災害のリスクも高まっています。
現地では軍や救助隊がドローンやサーマルカメラを使って捜索活動を続けています。
なぜ氷河が崩壊したのか――気候変動の影響
今回の氷河崩壊の背景には、地球温暖化による氷河融解と永久凍土(パーマフロスト)の融解が深く関わっています。
氷河は「山の接着剤」とも呼ばれる永久凍土によって安定していますが、近年の高温化でこの凍土が緩み、山体崩壊や氷河崩壊のリスクが急増しています。
スイスはヨーロッパで最も多くの氷河を抱えていますが、2022年には過去最大となる6%、2023年にも4%の氷河体積が失われました。
最新の調査では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑えられなければ、今世紀中にスイスの氷河は消滅する可能性が高いと警告されています。
多くの気候科学者はこの目標がすでに達成困難とみており、今後も同様の災害が増える恐れがあります。
現地とSNSの反応
ブラッテン村のマティアス・ベルヴァルト村長は「村は失われたが、心は失っていない」と涙ながらに語り、住民同士で支え合う決意を表明しました。
スイス政府は被災者支援と地域再建のための資金提供を約束し、軍の災害救助部隊も現地入りしています。
SNSやインターネット上では、現地の映像や被害状況が瞬く間に拡散され、「信じられない」「これが気候変動の現実だ」などの投稿が相次ぎました。
特に、被災した家畜がヘリコプターで救出される様子や、厚い泥流に埋もれた村の映像は大きな反響を呼び、「#Blatten」「#SwissGlacierCollapse」などのハッシュタグがトレンド入りしました。
Aerial footage of Blatten in Switzerland after glacier collapse. pic.twitter.com/TsmSXhUgIa
— Disasters Daily (@DisastersAndI) May 29, 2025
🇨🇭20 MAY 2025 | @NBCNews
— Hendricus G Loos (@XIII77IIIX) May 28, 2025
🚁 #Switzerland | 8 days before today’s #Birch glacier collapse, 300+ residents and animals were evacuated from Blatten due to rock instability near the Bietschhorn.
🐄 One injured cow, “Loni”, was airlifted.
🔎#Blatten #Valais #Landslide #Bietschhorn pic.twitter.com/htrHwm2ExX
また、過去にもブリエンツ村やボンド村で同様の避難・崩壊事例が発生しており、スイス国内外で「山岳地帯の安全対策」「気候変動への適応策」について活発な議論が巻き起こっています124。
今後の課題と展望――山岳コミュニティの未来
今回の災害は、スイスをはじめとするアルプス山岳地帯の多くの村にとって他人事ではありません。
専門家は「今後も氷河崩壊や山体崩壊のリスクは高まる」と警鐘を鳴らしています。
特に、観光や農業に依存する山村では、住民の生活再建やインフラ整備、長期的な避難計画が急務です。
また、氷河の融解による洪水や土石流、河川のダム化による二次災害も懸念されています。
政府や自治体は、最新の地質モニタリング技術や早期警報システムの導入、災害時の迅速な避難体制の強化を進めています。
国際的にも、パリ協定の目標達成や温暖化対策の強化が不可欠であり、今回の災害はその重要性を改めて浮き彫りにしました。
用語解説
- 氷河(Glacier):高山や極地に形成される、長期間にわたり雪が圧縮されてできた巨大な氷の塊。気温上昇により融解が進む。
- 永久凍土(Permafrost):1年以上凍結したままの地層。山体や氷河の安定を保つ役割を持つが、温暖化で融解すると崩壊リスクが高まる。
- 氷河崩壊(Glacier Collapse):氷河の一部が急激に崩れ落ちる現象。大量の氷、岩、泥が一気に流れ出し、下流域に甚大な被害をもたらす。
- パリ協定(Paris Agreement):2015年に採択された国際的な気候変動対策協定。世界の平均気温上昇を産業革命前比1.5℃以内に抑えることを目標とする。
まとめ
スイス・ブラッテン村を襲った氷河崩壊は、気候変動がもたらす新たな山岳災害の現実を世界に突き付けました。
事前の避難により多くの命は守られましたが、村のほとんどが失われ、住民の生活再建には長い時間が必要です。
今後も氷河融解や山体崩壊のリスクは高まると予想され、早期警報や防災体制の強化、そして地球規模での温暖化対策が急務です。
私たち一人ひとりが気候変動の現実を直視し、持続可能な未来に向けて行動することが求められています。