突然の「中国大使館」からの電話、その正体は?
ある日、見知らぬ番号から電話がかかってきて、「中国大使館から大切なお知らせです」という自動音声が流れた――。
その後、聞き慣れない中国語のアナウンスが続き、不安を感じたことはありませんか?
2024年現在、こうした「中国大使館」を名乗る自動音声詐欺が日本国内で急増しています。
警察庁の発表によると、2023年だけで特殊詐欺の認知件数は約1万8,000件、被害総額は約370億円にも上りました。
その中でも、外国語を使った新手の詐欺が目立ち始めています。
「自分の個人情報が抜かれたのでは?」「この電話、かけ直しても大丈夫?」と不安になる方も多いはず。本記事では、専門的な見解を交えつつ、最新の詐欺手口とその対策、さらに今後のリスクや社会的背景まで掘り下げて解説します。
「中国大使館」詐欺電話の実態 – なぜ今、増えているのか?
急増する国際的な詐欺電話
2022年以降、国内で確認された「中国大使館」を名乗る自動音声詐欺は、月間2,000件以上にのぼると推計されています(警視庁・消費者庁調べ)。
その多くは、03や050ではじまる日本の市外局番、あるいは+86(中国)、+1(アメリカ)などの国際番号から着信します。
具体的な手口
- 「中国大使館から大切なお知らせです」という日本語の自動音声
- その後、中国語でさらにアナウンス
- ボタン操作や折り返し電話を促す
- 個人情報(氏名・パスポート番号・銀行口座など)を聞き出す
- 折り返し電話で高額な通話料を請求されるケースも
なぜ「中国大使館」なのか?
中国大使館という権威ある機関を名乗ることで、受け手に「重要な連絡かもしれない」「自分が何かトラブルに巻き込まれているのでは」と思わせ、冷静な判断力を奪うのが狙いです。
また、日本国内には約80万人の中国人居住者(2023年時点)がいるため、在日中国人をターゲットにした詐欺も多発していますが、日本人にも無差別にかかってくるのが実情です。
あなたの個人情報は抜かれたのか?専門家の見解
自動音声を聞いただけで「個人情報流出」はほぼない
結論から言えば、自動音声を聞いただけで個人情報が自動的に抜かれることはありません。
電話は基本的に「受信側」には情報を送ることができません。
個人情報が詐欺グループに渡るのは、以下のような場合です。
- 指示に従って電話のボタンを押す(例:1を押す)
- 名前や住所、口座番号などを口頭で伝える
- 折り返し電話をかけて、さらに会話を続ける
このような操作をしない限り、電話に出て自動音声を聞いただけで「個人情報が抜かれる」ことは、技術的にも考えにくいとされています。
ただし、油断は禁物
一方で、折り返し電話をかけたり、指示に従って操作をした場合は、個人情報や通話履歴が悪用されるリスクが高まります。
特に国際電話の場合、1分あたり数百円~数千円の通話料が発生することもあり、思わぬ高額請求につながるケースも報告されています。
かけ直しは絶対NG!被害を防ぐための具体的対策
1. 折り返し電話は絶対にしない
詐欺グループは、折り返し電話をさせることで「生きている番号」だと認識し、さらに執拗に電話をかけてくることがあります。また、国際電話の場合は高額請求のリスクも。
2. 個人情報は絶対に伝えない
たとえ「大使館」や「警察」など公的機関を名乗っていても、電話で個人情報を聞き出すことはありません。
「パスポート番号」「銀行口座」「マイナンバー」などは絶対に伝えないでください。
3. 迷惑電話フィルターを活用
スマートフォンには、迷惑電話を自動でブロックするアプリや設定が存在します。
NTTドコモ、au、ソフトバンクなど、各キャリアが無料・有料で提供しています。
4. 不安な場合は公式窓口に相談
- 警察相談専用電話(#9110)
- 消費者ホットライン(188)
- 各携帯電話会社のサポート窓口
これらの窓口は、匿名でも相談できます。
被害に遭った場合や、不安がある場合は早めに相談しましょう。
社会背景と今後のリスク – なぜ詐欺はなくならないのか?
デジタル社会の副作用
スマートフォンの普及率は2023年時点で92%を超え、誰もが気軽に連絡を取り合える時代になりました。
一方で、自動発信システムや音声合成AIなどの技術進化により、詐欺グループもより巧妙な手口を使うようになっています。
国際的な犯罪組織の関与
警察庁の調査によると、こうした詐欺電話の多くは海外から発信されており、日本国内の犯罪グループと連携しているケースも増えています。
また、SNSやダークウェブ(※匿名性の高いインターネット空間)で電話番号リストが売買されている実態も明らかになっています。
被害者の心理を突く「権威の悪用」
「大使館」「警察」「税務署」など、権威ある組織を名乗ることで、受け手は「自分が何か悪いことをしたのでは」「早く対応しなければ」と焦ってしまい、冷静な判断ができなくなります。
こうした「心理的トリック」に騙されないためにも、一呼吸おいて冷静に対応することが重要です。
もし個人情報を伝えてしまったら?
すぐにやるべきこと
- パスワードや暗証番号の変更
万が一、銀行口座やクレジットカード情報を伝えてしまった場合は、すぐにパスワードを変更し、カード会社や銀行に連絡しましょう。 - 携帯会社への連絡
不審な通話履歴や高額請求がないか確認し、必要に応じて番号変更や迷惑電話対策を依頼しましょう。 - 警察や消費者センターに相談
被害届を出すことで、今後の被害拡大を防ぐことができます。
今後の予防策
- 電話番号をSNSやネット上でむやみに公開しない
- 不審なSMSやメールのリンクは開かない
- 家族や友人とも情報共有し、注意喚起を広める
まとめ – 冷静な対応が最大の防御策
「中国大使館から大切なお知らせ」という電話は、詐欺の可能性が極めて高いです。
電話に出て自動音声を聞いただけで個人情報が抜かれることはありませんが、折り返し電話や指示に従った操作は絶対にしないでください。
今や、誰もが詐欺のターゲットになりうる時代です。
「自分は大丈夫」「まさか自分に限って」と思わず、常に警戒心を持って冷静に対応することが、最大の防御策です。
もし不安や被害があった場合は、迷わず警察や消費者ホットラインに相談しましょう。
そして、こうした情報を家族や友人とも共有し、被害を未然に防ぐための「知識のバリア」を広げていきましょう。
あなたの一歩が、詐欺被害を防ぐ大きな力になります。