エビの権利を考える時代へ – 英ウェイトローズが電気ショック法導入、エビの苦痛軽減に向けた業界の動き

オフィスランチやバーベキューの定番として親しまれているエビ。

しかし、その裏には知られざる残酷な現実が隠されていました。

動物権利活動家たちが、エビの養殖や処理方法に警鐘を鳴らす中、英国の高級スーパーマーケットチェーン、ウェイトローズが画期的な決断を下したと、イギリスBBCが報じました。

2026年末までに、全ての養殖エビに電気スタンニング(気絶)を導入すると発表したのです。この決定は、エビの福祉向上に向けた大きな一歩となりそうです。

エビの苦しみに注目が集まる

毎年4,400億匹以上のエビが養殖され、さらに数十億匹が天然で捕獲されています。

これまで「野菜同然」に扱われてきたエビですが、最近の研究により、エビも痛みや苦しみを感じる可能性が高いことが明らかになってきました。

特に問題視されているのが、「眼柄切除(がんぺいせつじょ)」と呼ばれる残酷な慣行です。

これは母エビの片目または両目を刃物で切除し、さらに押しつぶすことで産卵を促す方法です。

また、収穫時には氷水に浸して窒息死させる方法が一般的ですが、この方法では長時間苦しむ可能性があると指摘されています。

ウェイトローズの画期的な決断

こうした状況を受け、ウェイトローズは2026年末までに全ての養殖エビに電気スタンニングを導入すると発表しました。

同社はすでに自社のサプライチェーンから眼柄切除を排除しており、今回の決定はさらに一歩進んだ取り組みと言えます。

ウェイトローズの広報担当者は次のように述べています。

「動物福祉はウェイトローズにとって最優先事項です。2023年以降、私たちは業界をリードする基準をさらに高めるため、サプライヤーと協力してエビの電気スタンニングの試験を行ってきました。」

他社の動向と業界への影響

ウェイトローズの決定は、業界全体に大きな影響を与える可能性があります。

国際動物福祉評議会(ICAW)によると、テスコ、マークス&スペンサー、セインズベリー、オカドなどの大手小売業者もすでに眼柄切除の廃止を約束し、養殖エビへの電気スタンニングの導入を進めています。

ICAWの交渉責任者、ジャスティン・オーデマール氏は次のように述べています。

「電気スタンニングは最も人道的な方法として認識されており、屠殺時のエビの苦しみを大幅に軽減します。小売業者にとっても導入は容易です。」

法的認識の変化と消費者の意識

2022年に英国で可決された法律により、エビを含む甲殻類が痛みや苦しみを感じる能力を持つ「感覚のある動物」として法的に認められました

この認識の変化は、消費者の意識にも影響を与えています。

記事では「英国政府や欧州の他の政府でも、これらの動物の感覚について認識が高まっています。人々がエビの苦しみについて知れば、動物福祉に配慮した製品に少し多くのお金を払う意思があることがわかっています」と指摘しています。

エビ産業の現状と課題

エビ市場は年間300億ポンド(約5兆7,000億円)以上の規模に達し、低脂肪・高タンパクな食品への需要増加により、さらなる成長が見込まれています。

英国市場では、アジアや南米で養殖される大型の温水エビと、天然の冷水エビが主流です。

しかし、この成長産業には課題も山積しています。

エビ福祉プロジェクトのチーフプログラムオフィサーは「他の養殖種には福祉政策があるのに、なぜエビにはないのでしょうか?エビには痛みを感じる解剖学的構造があり、痛みを与えられると反応することがわかっています」と訴えています。

エビの感覚性に関する最新の研究

2021年11月、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスが発表したレビューでは、タコやイカなどの頭足類軟体動物、カニやロブスター、エビなどの十脚甲殻類を「感覚のある動物」とみなすべきだと提言しています。

エビの感覚性に関する証拠は重要ですが限定的であり、専門家はさらなる研究が必要だと指摘しています。

2022年の動物福祉(感覚性)法は、これらの動物が痛み、苦痛、危害を経験する能力があることを法的に認めています。

まとめ

ウェイトローズの決定は、エビの福祉向上に向けた重要な一歩です。

他の小売業者も追随する可能性が高く、業界全体の慣行が変わる可能性があります。

消費者の意識が高まる中、エビの福祉に配慮した製品への需要は今後さらに増加すると予想されます。

私たちも、日々の食卓に上るエビの福祉について考える良い機会かもしれません。

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