トルコ、イスタンブールで偽造酒により23人が死亡。アルコール規制がもたらした予期せぬ悲劇

イスタンブールで偽造酒による死亡事件が発生し、わずか48時間で23人が命を落としました。

この悲劇的な出来事は、トルコにおける違法な酒造りの問題と、アルコール規制の厳格化がもたらす予期せぬ結果を浮き彫りにしています。

メタノール中毒の恐怖

イスタンブールの保健当局によると、今回の事件では少なくとも43人が入院し、そのうち32人が集中治療室で治療を受けています。

死亡の原因とされるのは、メタノールを含む偽造酒の摂取です。

メタノールは安価で入手しやすいため、違法な酒造りに使用されることがありますが、摂取すると失明や肝臓障害、最悪の場合は死亡に至る危険な物質です。

https://www.dailysabah.com/turkiye/istanbul/19-dead-in-72-hours-prompt-istanbul-to-clamp-down-on-bootleg-alcohol

トルコにおける偽造酒問題の深刻化

この事件は、トルコにおける偽造酒問題の一端に過ぎません。

2024年には、イスタンブールだけで110人が偽造酒で体調を崩し、そのうち48人が亡くなっています。

この数字は、問題の根深さを物語っています。偽造酒が蔓延する背景には、トルコ政府によるアルコール税の引き上げがあります。

国民的蒸留酒であるラキの価格は、1リットルあたり約1,300リラ(約37.20ドル)にまで高騰しています。

これは2025年1月に引き上げられた最低賃金22,104リラ(600ドル)と比較しても、非常に高額です。

エルドアン政権下のアルコール規制

トルコのアルコール規制は、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の就任以降、急速に厳格化されています。

2013年以降、アルコールの広告が禁止され、アルコールブランドによるイベントスポンサーシップも禁止されました。

さらに、メディアでのアルコール使用シーンの描写も禁じられています

これらの規制は、公衆衛生の向上を目的としていますが、一方で違法な酒造りを助長する結果となっています。

高額な正規品を購入できない消費者が、安価な偽造酒に手を出すケースが増えているのです。

偽造酒対策の課題

トルコ政府は偽造酒の取り締まりを強化していますが、根本的な解決には至っていません。

アルコール税の引き下げや、適切な価格設定などの対策が必要との声も上がっています。

また、アルコール依存症対策や、安全な飲酒文化の醸成など、総合的なアプローチが求められています。

単なる規制強化だけでなく、教育や啓発活動を通じて、健全な飲酒習慣を育てることが重要です。

世界のアルコール消費事情

世界保健機関(WHO)の報告によると、世界の15歳以上人口の43.2%が現在飲酒者とされています。

一人当たりの純アルコール消費量は、2000年の5.7リットルから2016年には6.4リットルに増加しました。

トルコの一人当たりの純アルコール消費量は2016年時点で2.0リットルと、ヨーロッパ諸国と比べてかなり低い水準にあります。

しかし、この数字には非飲酒者も含まれているため、実際の飲酒者の消費量はより多いと考えられます。

まとめ

イスタンブールでの偽造酒による悲劇は、アルコール規制と違法な酒造りの複雑な関係を浮き彫りにしました。

公衆衛生と個人の自由のバランス、そして効果的な規制のあり方について、社会全体で議論を深める必要があります。

安全な飲酒文化の構築と、偽造酒の根絶に向けた取り組みが、今後のトルコにとって重要な課題となるでしょう。

私たち一人一人が、この問題について考え、行動することが求められています。

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