マリー・アントワネットゆかりのダイヤモンドネックレスが48億円で落札

フランス革命の引き金となった有名なスキャンダル「ダイヤモンドの首飾り事件」に関連するとされるネックレスが、スイス・ジュネーブのオークションで481万ドル(約7.2億円)で落札されました。

この驚くべき価格は、当初の予想を大きく上回るものでした。

18世紀の宮廷スキャンダルと現代の高額オークションが交錯する、まさに歴史と贅沢が融合した出来事と言えるでしょう。

https://www.bbc.com/news/articles/clygw4l0v7xo

「ダイヤモンドの首飾り事件」とは

スキャンダルの背景

1780年代、フランス王室を揺るがした「ダイヤモンドの首飾り事件」は、マリー・アントワネット王妃の評判を決定的に傷つけ、フランス革命への道を開いたとされる重大な出来事でした。

この事件の中心となったのは、宝石商ベーマーとバサンジュが製作した2,840カラット、647個のダイヤモンドを使用した豪華絢爛なネックレスでした。

当初、このネックレスはルイ15世が愛妾マダム・デュ・バリーのために注文したものでしたが、王の死によって完成前に頓挫してしまいます。

詐欺事件の経緯

宝石商たちは巨額の負債を抱え、新王妃マリー・アントワネットにネックレスの購入を持ちかけますが、王妃はその高額さを理由に断ります。

ここで登場するのが、ジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人という野心家です。

ラ・モット伯爵夫人は、王妃の名を騙って、ルイ・ド・ロアン枢機卿を巻き込み、ネックレスを詐取する計画を立てます。

枢機卿は王妃の偽の手紙を信じ、ネックレスを購入。

しかし、それはラ・モット伯爵夫人によって持ち去られ、ダイヤモンドは分解されてロンドンの闇市場で売却されてしまいました。

スキャンダルの影響

事件が発覚すると、マリー・アントワネット王妃は無実であったにもかかわらず、その評判は回復不能なまでに傷つきました。

フランス国民の間では、王妃の浪費と王室の腐敗に対する怒りが高まり、これがフランス革命の導火線の一つとなったのです。

今回のオークションの詳細

ネックレスの特徴

今回オークションに出品されたネックレスは、約300カラットのダイヤモンドを使用した3連デザインで、両端にダイヤモンドのタッセル(房飾り)が付いています。

専門家によると、このネックレスに使用されているダイヤモンドの一部が、かの有名な「ダイヤモンドの首飾り事件」のネックレスから来ている可能性があるとのことです。

オークションの結果

予想を大きく上回る481万ドル(約7.2億円)で落札されたこのネックレスは、匿名の女性バイヤーが電話入札で獲得しました。

サザビーズのアンドレス・ホワイト・コレアル氏は、「歴史的な宝飾品市場には明らかにニッチな需要がある」と述べ、買主は「単に物を買うのではなく、それに付随するすべての歴史を買っている」と分析しています。

ネックレスの来歴と歴史的意義

王室とのつながり

このネックレスの来歴は非常に興味深いものです。

20世紀初頭にはアングルシー侯爵家のコレクションの一部であったとされ、1953年のエリザベス2世の戴冠式では、アングルシー侯爵夫人がこのネックレスを着用したことが知られています。

歴史的価値

サザビーズは、このネックレスを「奇跡的に無傷で残された」「非常に稀少で重要な」ジョージア朝時代の宝飾品と評しています。

フランス革命直前の10年間に作られたと推定されるこのネックレスは、18世紀の宮廷生活の贅沢さを今に伝える貴重な遺物と言えるでしょう。

歴史的宝飾品の市場価値

高額落札の理由

今回のオークションでの高額落札は、歴史的な宝飾品に対する需要の高さを示しています。

単なる宝石の価値だけでなく、そこに付随する歴史や物語が、コレクターたちを魅了しているのです。

投資としての側面

歴史的な宝飾品は、その希少性と文化的価値から、長期的な投資対象としても注目されています。

特に、王室や有名な歴史的事件に関連する品は、その価値が時間とともに上昇する可能性が高いと考えられています。

現代社会における歴史的遺物の意義

文化遺産としての価値

このようなネックレスは、単なる装飾品以上の意味を持ちます。

それは、過去の時代の技術、美意識、そして社会構造を今に伝える文化遺産としての役割を果たしているのです。

教育的価値

歴史的な宝飾品は、過去の出来事や社会情勢を学ぶための貴重な教材となります。

「ダイヤモンドの首飾り事件」を通じて、18世紀のフランス社会や王室の状況、そしてフランス革命に至る過程を理解することができるのです。

マリー・アントワネットとフランス革命

マリー・アントワネットは、オーストリア皇女として生まれ、14歳でフランス王太子(後のルイ16世)と政略結婚しました。

彼女の贅沢な生活スタイルと、フランスの政治や経済状況への無関心さは、民衆の反感を買いました。

「ダイヤモンドの首飾り事件」は、既に悪化していた王妃の評判に決定的な打撃を与えました。

その後のフランス革命で、マリー・アントワネットは夫のルイ16世とともに断頭台の露と消えることになります。

まとめ

「ダイヤモンドの首飾り事件」に関連する可能性のあるネックレスの高額落札は、歴史と贅沢が交錯する興味深い出来事でした。

このネックレスは、18世紀のフランス宮廷の栄華と、それに続く革命の悲劇を象徴する存在と言えるでしょう。

同時に、この出来事は歴史的遺物に対する現代社会の関心の高さを示しています。

過去の物語や出来事が、時を超えて人々を魅了し続ける力を持っていることの証左と言えるでしょう。

歴史的な宝飾品は、その美しさだけでなく、それが語る物語によって価値を持ちます。

今回のオークションは、そうした「物語の価値」が、現代社会においても高く評価されていることを示す興味深い事例となりました。

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