アメリカの大手メディアNBCニュースが最近報じたところによると、インドでバターチキンの発明者をめぐる裁判が注目を集めているという。
https://www.nbcnews.com/news/world/invented-butter-chicken-court-india-will-decide-rcna153870
バターチキンとは、トマトベースのクリーミーなインドカレーで、インドでは「コンフォートフード」として人気が高い。
この裁判では、デリーにある高級レストランチェーン「ダリヤガンジ」が、もう一つのレストラン「モティ・マハル」を訴えている。
争点は、バターチキンの発明者がダリヤガンジ側の主張するクンダン・ラル・ジャギなのか、モティ・マハル側の主張するクンダン・ラル・グジラルなのか、ということだ。
2人の「クンダン」
クンダン・ラル・ジャギ
1947年のインド・パキスタン分離独立時にペシャワルからデリーに逃れ、後にモティ・マハルを創業した。
ダリヤガンジはジャギの孫が経営している。
クンダン・ラル・グジラル
ジャギと同じく分離独立時にペシャワルからデリーに逃れ、モティ・マハルを創業した。現在のモティ・マハル・デラックスの経営者はグジラルの子孫である。
裁判の経緯と各主張の詳細
この裁判は、ダリヤガンジが2018年にバターチキンの商標登録を出したことが発端となっている。
これに対し、モティ・マハル側が今年1月に訴えを起こした。
ダリヤガンジ側の主張は、創業者のジャギがバターチキンを発明し、そのレシピが孫のラグハブ・ジャギに受け継がれている、ということだ。
具体的には、訪れる客が多くて鶏肉が足りなくなった日に、ジャギが残った丸焼き鶏肉にマカニソースをかけてバターチキンを作った、というエピソードが語られている。
一方、モティ・マハル側は、グジラルが発明者であり、ジャギよりも早くペシャワル時代に考案した、と主張している。
グジラルは、乾燥しないように余った鶏肉にクリーミーなソースを添えたのが始まりだとされる。
裁判への国民の反応
この裁判はインド国内で大きな話題となっており、ニュースやSNS上で活発な議論が交わされている。
インドでは食事を通じた人間関係が重要視される文化があるため、バターチキンの発明をめぐる裁判への関心が高いのだろう。
ダリヤガンジへの注目も高まっており、「発明者の店を体験したい」と訪れる客が増えているという。
SNS上のコメントを見ると、発明者が誰であるかよりも「美味しいバターチキンを食べたい」という声のほうが多数を占めている。
補足情報
バターチキンが誕生した背景には、インド・パキスタン分離独立時の混乱が関係している。
この時代、多くのヒンドゥー教徒のタンドリーチキン職人がパキスタンからデリーに逃れ、その料理技術を生かして店を始めた。
ジャギとグジラルもその1人であり、クレイオーブンを使った丸焼き鶏が特徴だった。
まとめ
70年以上前に誕生したバターチキンであるが、今なおインド人にとって大切な「コンフォートフード」として支持されている。その発明にまつわる逸話も含め、歴史と伝統の重みを感じる料理だ。
裁判の行方が注目される中、ダリヤガンジやモティ・マハルを訪れ、自分の舌で「本物のバターチキン」を判断するのも面白い体験になりそうだ。
いずれにせよ、争いよりも料理を楽しむことが大切だ。