中古車販売大手ビッグモーターを伊藤忠が買収、新会社「WECARS」を設立

今回は、日本の大手総合商社である伊藤忠商事、伊藤忠エネクス、JWPの3社が、中古車販売大手のビッグモーターを買収し、新会社「WECARS」を設立したというニュースについて、詳しくお伝えしたいと思います。

新会社「WECARS」 (ウィーカーズ) 発足に関するお知らせ|伊藤忠商事

伊藤忠商事、伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社は、2024年5月1日付で、ビッグモーターの主要事業を引き継ぐ新会社「WECARS」を設立することを発表しました。

この買収は、約600億円の規模で行われ、ビッグモーターの約250店舗と数千人の従業員が新会社に承継されることになります。

伊藤忠商事の概要

伊藤忠商事は、大阪と東京に本社を置く日本の大手総合商社です。

繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住宅、情報、金融など、幅広い事業分野を展開しています。

2023年3月期の連結売上高は約7兆円、連結従業員数は約110,000人と、日本を代表する総合商社の一つです。

買収の背景

ビッグモーターの経営上の問題

ビッグモーターは、長年にわたり深刻な経営上の問題を抱えていたことが明らかになっています。

不正な保険金請求

ビッグモーターの社員が、故意に顧客の車に傷をつけ、不要な修理を行って保険会社に過剰な修理費用を請求していたことが発覚しました。このような不正行為は、企業の信頼を大きく損なうものでした。

過酷な目標設定と達成への過大なプレッシャー

経営陣が厳しい業績目標を課し、それを達成するために社員に不正行為を強いていたことが問題視されています。このような過度な業績至上主義は、企業の健全な発展を阻害する要因となっていました。

法令や社会的常識の軽視

ビッグモーターには、法令遵守やコンプライアンスが軽視されている企業風土があったと指摘されています。このような企業姿勢は、長期的な信頼関係の構築を困難にしていました。

経営陣の暴走と取締役会の機能不全

経営陣が人事権を濫用し、取締役会がそれを適切に抑制できていなかったことも問題点として挙げられます。企業統治の観点から見ると、ビッグモーターには大きな課題があったと言えるでしょう。

風評被害と信用失墜

不正問題により、ビッグモーターは同業他社への風評被害や自動車保険会社への不信感を招いてしまいました。

企業イメージの悪化は、事業の継続に大きな影響を及ぼすことが危惧されます。

以上のように、ビッグモーターは短期的な業績追求のために不正行為に走り、企業統治の問題も抱えていたことが主な経営上の問題だったと言えます。

伊藤忠商事の事業多角化戦略

一方で、伊藤忠商事は、従来の総合商社としての事業に加えて、自動車やモビリティ分野への進出を目指していました。

ビッグモーターの強みである中古車販売事業を取り込むことで、新しい事業モデルの構築を目指したのが、この買収の背景にあります。

再建支援と新会社設立

ビッグモーターの経営問題を解決するため、伊藤忠商事を含む3社は約600億円を出資して、ビッグモーターの事業を引き継ぐ新会社「WECARS」を設立することにしました。

新会社では、ビッグモーターの不正行為が横行していた社風を一新し、顧客の信頼を取り戻すことが重要な課題となっています。

伊藤忠の経営ノウハウの活用

伊藤忠商事は、ビッグモーターの強みである店舗網と従業員を引き継ぐことで、中古車販売事業の基盤を確保しました。また、伊藤忠の経営ノウハウを活かし、ビッグモーターの再建と事業の発展を目指しています。

以上のように、ビッグモーターの経営問題と伊藤忠商事の事業多角化戦略が、この買収の大きな背景となっています。伊藤忠は、ビッグモーターの強みを活かしつつ、自社の経営ノウハウを活用して、中古車販売事業の再建と発展を目指しているのです。

新会社「WECARS」の設立

新会社「WECARS」は、伊藤忠商事のグループ会社である伊藤忠エネクス、企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)が共同で設立します。

ビッグモーターの店舗網と従業員を引き継ぐことで、中古車販売事業の基盤を確保します。また、車検サービスなども継承し、顧客の信頼を維持していく計画です。

創業家関与の排除

WECARSは、ビッグモーターの創業家や前経営陣の関与を排除することを目的の1つとしています。

これは、ビッグモーターで発生した保険金不正請求問題などの不祥事を解決し、コンプライアンスを強化するためです。

伊藤忠グループが中心となって新会社WECARSを設立し、ビッグモーターの事業を承継することで、創業家や前経営陣から独立した新しい経営体制を構築することが目指されています。

信頼回復への期待

創業家の関与を排除し、伊藤忠グループの経営力を活かすことで、ビッグモーターの信頼回復と健全な事業運営が期待されています。

従業員の雇用維持

WECARSでは、ビッグモーターの約4,200名の従業員の雇用も維持されることが報じられています。

WECARSの設立は、ビッグモーターの問題を解決し、健全な事業運営を実現するための重要な一歩となっているのです。

ビッグモーターの株式

ビッグモーターは非上場の非公開企業でした。

同社の株式の大部分は兼重宏行が保有しており、実質的に家族経営の企業となっていました。過去には上場を目指していた計画もありましたが、自動車保険金の不正請求問題などで頓挫していました。

伊藤忠商事のこの再建計画により、ビッグモーターの株式の扱いも変更される可能性があります。

買収によってビッグモーターがどのように変わる?

ビッグモーターの買収によってどのように変わるでしょうか?

ビッグモーターの再建と事業改革

WECARS では、ビッグモーターの不正な社風を一新し、顧客の信頼を取り戻すことが重要な課題となっています。

伊藤忠の経営ノウハウを活用し、ビッグモーターの強みである店舗網と従業員を引き継ぐことで、中古車販売事業の基盤を確保しています。

収益性の改善と事業の発展

伊藤忠は、ビッグモーターの買収額を約400億円と見積もっており、2-3年以内の黒字化を目指しています。

中長期的には、ビッグモーターを伊藤忠の完全子会社化することで、事業の発展と収益性の向上を目指しています。

新たな事業展開への布石

ビッグモーターの買収は、伊藤忠の自動車やモビリティ分野への事業多角化戦略の一環です。

中古車販売事業を取り込むことで、新しいビジネスモデルの構築を目指しています。

まとめ

伊藤忠商事によるビッグモーター買収は、日本の中古車販売市場において大きな影響を及ぼすことが予想されます。

新会社「WECARS」の設立により、ビッグモーターの強みを活かしつつ、伊藤忠の事業多角化戦略にも寄与することが期待されます。今後の動向に注目していきたいと思います。

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