元英軍特殊部隊の伝説的登山家、ブロード・ピークで消息絶つ
世界の8000メートル峰14座すべてを史上最速6か月6日で登頂し、Netflixドキュメンタリー『14 PEAKS: NOTHING IS IMPOSSIBLE』の主人公としても知られるネパール人登山家、ニルマル・プルジャ氏(通称ニムスダイ)。その彼が現在、パキスタンのブロード・ピーク(8,047m)で発生した雪崩により行方不明になっていると、CNNやアルジャジーラなど海外メディアが報じています。プルジャ氏とは一体どんな人物なのか、そして現地で何が起きているのかを整理します。
何が起きたのか——ブロード・ピークでの雪崩発生
事故が起きたのは2026年7月30日(木)の夜、標高約6,600メートル付近、キャンプ2からキャンプ3の間でした。プルジャ氏が率いる国際登山隊10名が雪崩に巻き込まれ、消息を絶ちました。
パキスタン・アルパインクラブによると、これまでに遺体4体が収容され、うちネパール人のプル・バハドゥル・グラン氏(通称ユクタ)、オマーン人のナディーラ・アル・ハーシー氏、米国人のサラ・マロリー・ゲイス氏の身元が確認されています。プルジャ氏を含む残りの登山家については、依然として行方が分かっていません。
ニルマル・プルジャ氏とは何者か——史上最速14座登頂の記録保持者
プルジャ氏(43)は、ネパール出身。イギリス陸軍のグルカ兵、その後イギリス海兵隊の特殊部隊で軍務についた経歴を持ちます。2012年、エベレストのベースキャンプへのトレッキングをきっかけに登山家への転身を決意したといいます。
2019年には、標高8,000メートルを超える世界14座すべてを、わずか6か月6日で登頂するという偉業を成し遂げました。それまでの世界記録は約8年だったとされており、桁違いのスピードでの達成は世界中の登山界に衝撃を与えました。この挑戦は「プロジェクト・ポッシブル」と名付けられ、後にNetflixドキュメンタリー『14 PEAKS: NOTHING IS IMPOSSIBLE』として映像化されています。2021年1月には、それまで誰も成功していなかったK2(8,611m)の冬季初登頂もネパール人クライマーのチームとともに達成するなど、高所登山の常識を塗り替え続けてきた人物です。
続く行方不明者の捜索、悪天候が壁に
パキスタン軍のヘリコプターやドローン、地上部隊による捜索が行われていますが、悪天候の影響で金曜日には捜索が一時中断され、土曜日に再開されたと報じられています。プルジャ氏が携帯していた発信機(トラッカー)には事故後も位置の変化が確認されたとの情報もありますが、本人の生存が確認されたわけではなく、この記事の執筆時点でも依然として行方不明者として扱われています。
パキスタン・ギルギット・バルティスタン州の観光局によると、残る登山家の捜索は「遠隔かつアクセスが極めて困難な地域」に集中しているとされ、難航が予想されています。
なぜ彼らはブロード・ピークにいたのか
ブロード・ピークは世界に14座しかない8,000メートル峰の一つで、標高は8,047メートル、世界第12位の高さを誇ります。7〜8月は南アジアの高峰でも比較的天候が安定するとされる登頂シーズンにあたり、プルジャ氏らの隊も国際的な商業公募隊として8,000メートル峰への挑戦を計画していたとみられます。
今回のような雪崩は、標高6,000メートル台のキャンプ間移動中という、比較的「安全」とされる区間でも起こり得ることを改めて示した形です。
高所登山のリスクと今後の見通し
プルジャ氏のような世界的に著名な登山家が事故に巻き込まれたことは、高所登山が依然として大きなリスクを伴う挑戦であることを改めて浮き彫りにしています。現地では引き続き捜索・救助活動が続けられており、残る行方不明者の安否確認が急がれます。
補足情報
ブロード・ピークは、世界2位の高峰K2からもほど近いパキスタン・カラコルム山脈に位置する8,000メートル峰です。プルジャ氏の代名詞である「プロジェクト・ポッシブル」は、8,000メートル峰14座すべての登頂という、それまで人類史上誰も成し遂げたことのなかった挑戦を、従来の常識を覆すスピードで達成したことから世界的に注目を集めました。高所登山の世界では、標高8,000メートルを超える領域は酸素濃度が地上の3分の1程度しかないことから「デス・ゾーン(死の地帯)」と呼ばれ、雪崩や高山病、悪天候など複合的なリスクが常につきまといます。
まとめ
世界最速で14座を登頂した伝説的登山家ニルマル・プルジャ氏が、パキスタンのブロード・ピークでの雪崩により行方不明となっている状況です。すでに4人の死亡が確認される中、プルジャ氏を含む複数の登山家の捜索が悪天候の中でも続けられています。続報が待たれる状況であり、今後の捜索状況を注視していく必要があります。
出典:
Al Jazeera
The Kathmandu Post
CNN
Yahoo News (AP/Reuters)