2025年10月、ニューヨーク・ブルックリンの地下鉄マルシー・アベニュー駅で、13歳と12歳の少女2人が「サブウェイサーフィン」の最中に命を落とす悲しい事件が発生しました。
サブウェイサーフィンとは、地下鉄の屋根や車両同士の連結部分に乗って走行する危険な行為を指します。
この遊びはSNSなどを通じて瞬く間に広まり、NYだけでも今年すでに複数の死亡事故が報告されています。
多くの若者がスリルや承認欲求を求めて始める一方で、命を落とすリスクが非常に高い“命がけ”の行動であることが改めて社会問題となっています。
本記事では、サブウェイサーフィンの実態と事件の詳細、社会の反応、根本原因や対策、今後の課題について、多角的に解説します。
サブウェイサーフィンとは何か?
サブウェイサーフィン(subway surfing)は、地下鉄や電車の屋根や外側に乗り、車両の上から景色を楽しんだり、その様子をSNSで発信したりする危険行為です。
もともと20世紀前半のニューヨークでも見られた行動ですが、現在はSNS時代の影響で流行が再燃しており、10代を中心に“チャレンジ動画”や“自撮り”の一環として繰り返されています。
- 高速走行する電車からの転落による即死・重傷
- トンネルや架線への衝突事故
- 車両とトンネルの隙間に挟まり致命傷
- 高圧電線による感電死
実際にニューヨーク市警や地下鉄運営会社(MTA)も度々注意喚起を行っていますが、「自分は大丈夫」「SNSで注目されたい」という心理から直近1~2年で再び犠牲者が急増しています。
増加する被害と驚きの統計
近年、サブウェイサーフィンによる死傷者数は記録的な高水準となっています。
2024年にはニューヨーク市で5人が死亡、2025年にはさらに6人が地下鉄屋根での事故で命を落としました。犠牲者の多くは10代、さらには最年少で9歳の少年が含まれます。
また、逮捕された若者の平均年齢は約14歳であり、小学生年代の例も複数報告されています。NY警察やMTAは「サブウェイサーフィンはサーフィンではなく、命を賭けた自殺行為だ」と強く非難しています。
現地やSNS上での反応
現地NYでは今回の死亡事故を受け、教育プログラムや啓発活動が行われています。
グラミー賞受賞ラッパーのカーディ・Bが協力したキャンペーン動画や、地元の高校生による啓発アナウンスの放送、コミックブック形式での警告冊子配布など、様々な取り組みが一斉に動いています。
一方SNSでは、
- 「悲しすぎる…なぜ止められなかったのか」
- 「動画投稿のために命を落とす意味が分からない」
- 「運行管理側や運輸当局の責任もある」
など、多様な意見が噴出。特に「サブウェイサーフィンを美化した動画を削除すべき」「クラウドコントロール(AIや監視カメラの導入)を進めよ」といった現実的な対策を望む声、また亡くなった家族への哀悼メッセージも相次いでいます。
MTAは2025年だけで1800本以上の動画を削除申請し、NYPDもドローンによる警戒や家庭訪問(本人・家族への注意喚起)を強化しています。
根本原因と公共交通の課題
なぜサブウェイサーフィンが止まらないのか――NY現地の専門家や市民の間でも議論が続いています。
最大の要因は「スリルやSNSでの目立ちたい心理」「模倣への連鎖」「アクセスの容易さ(列車連結部のドアや屋根の構造など)」です。また、車両間連結部のドアを施錠して侵入を防ぐべきとの声もありますが、乗客の安全避難やメンテナンス上の問題もあり、統一した解決策の導入は難しい現実があります。
今後は、
- AIやドローンを活用した検知・防止技術の導入
- 車両設計の見直し(屋根へのアクセスブロック)
- SNS運営企業と連携した啓発・動画削除強化
世界の鉄道サーフィン事情
実はこの「鉄道サーフィン」はNYだけでなく、世界の各都市で広がっている社会問題でもあります。
例えばインドネシアでは列車屋根に乗る乗客を物理的に排除するため、揺れる金属鎖を設置したり、高圧放水、赤いペイントを浴びせるなどの強硬策が取られてきました。
香港やドバイなどでは車両外に持ち手を設けない、直通型デザインを採用している例もあり、被害がほとんどありません。
ニューヨークでも段階的に隙間のない最新型車両を導入していますが、既存車両数が膨大で、短期間での抜本的な入れ替えは難しい状況です。
まとめ
サブウェイサーフィンは、SNS時代の若者心理が生み出した新たな社会問題として、深刻化し続けています。
危険性への認知が高まりつつあるものの、抜本的な解決にはAIやテクノロジー、現場教育、社会全体の協力が不可欠です。
自分や友人・家族の身を守るためにも「屋根に乗るだけなら大丈夫」といった油断は捨て、命を守る行動選択を意識しましょう。