ラブ・バグとは?韓国・ソウルで急増する「恋の虫」騒動の背景と市民の反応

2025年夏、韓国・ソウルと隣接する仁川(インチョン)で「恋の虫(ラブバグ)」と呼ばれる虫の大発生が大きな話題となっています。

SNSでは登山道を埋め尽くす虫の群れや、虫を避ける市民の姿が拡散され、現地では混乱が広がっています。

なぜ今、ソウルでこのような現象が起きているのでしょうか?

本記事では、ラブバグの正体や発生の背景、被害の実態、SNS上の反応、そして今後の見通しまで、最新の情報と専門的な分析を交えて詳しく解説します。

恋の虫(ラブバグ)とは何か?その生態と特徴

恋の虫(ラブバグ)は、学名をPlecia longiforceps(プレシア・ロンギフォルケプス)といい、主に亜熱帯地域に生息する昆虫です。

名前の由来は、飛行中にペアで絡み合う独特の交尾行動(メイティングビヘイビア)から来ています。

元々は中国南部、台湾、日本の琉球諸島、さらにはアメリカ南部(テキサスやフロリダ)などに分布していましたが、2015年に韓国で初めて確認されました。

この虫は体長1cmほどの黒い羽を持ち、6月から7月にかけて大量発生する傾向があります。

韓国環境省によると、2022年以降は特にソウルや仁川の港湾地域で目撃例が急増しています。

恋の虫は人を刺したり病気を媒介したりすることはありませんが、車の窓や建物の壁、飲食店、地下鉄などに大量に付着し、市民生活に大きな影響を与えています。

なぜソウルで大量発生?気候変動と都市のヒートアイランド現象

恋の虫がソウルで急増した主な要因は、地球温暖化と都市のヒートアイランド現象(都市部の気温上昇)です。

専門家によれば、ソウルは世界の他都市と比べても気温上昇のペースが速く、これが恋の虫の北上と定着を後押ししています。

ヒートアイランド現象とは、コンクリートやアスファルトなどの人工物が熱を吸収・保持し、都市部の気温が周辺の農村部よりも高くなる現象です。

これにより、恋の虫が好む高温多湿な環境がソウル市内でも形成され、繁殖に適した条件が整っています。

2025年7月には、特に仁川の桂陽山(ケヤンサン)で「極めて深刻な発生」と環境省が発表し、数十人規模の作業員が駆除に動員されました。

市民生活への影響と行政の対応

恋の虫は人間に直接的な健康被害を与えませんが、生活環境への影響は深刻です。

2024年のソウル市への苦情件数は9,296件と、前年の4,418件から2倍以上に増加しました。

主な被害は以下の通りです。

  • 車の窓や建物の壁に大量に付着し、清掃が困難
  • 飲食店や公共交通機関(地下鉄など)への侵入
  • 屋外活動(登山や散歩)時の不快感や混乱

行政は化学薬品による駆除を避け、水や粘着シートを使った物理的な対策を推奨しています。

また、2025年7月には環境省が「対応手順の強化と投資」を発表し、今後の発生に備える方針を示しました。

SNS・インターネット上の反応と市民の声

恋の虫の大量発生は、X(旧Twitter)やYouTubeなどのSNSでも大きな話題となっています。

登山道を埋め尽くす虫の動画や、虫を避けて歩く市民の様子が拡散され、「まるでホラー映画のようだ」「虫の洪水だ」といったコメントが相次いでいます。

特に注目を集めたのは、あるYouTuberが数千匹の恋の虫を集めてハンバーガーに調理し、実際に食べる動画です。

この動画は「昆虫食(エディブルインセクト)」への関心も呼び起こし、賛否両論の議論が巻き起こりました。

SNS上では以下のような反応が見られます。

  • 「今年の恋の虫は例年より多い気がする」
  • 「家の壁が真っ黒になるほど虫がついている」
  • 「駆除方法を教えてほしい」
  • 「環境問題の影響を実感した」

このように、恋の虫の大発生は市民の生活に密接に関わる社会現象となっています。

恋の虫の今後と生態系への影響

恋の虫は生態系にとって「有益な存在」とも評価されています。ソウル市は「恋の虫は人間に健康被害を与えず、花の受粉や有機物の分解に貢献する」と発表しています。一方で、今後の気候変動や都市化の進行によって、発生地域がさらに拡大する可能性も指摘されています。

現時点では、韓国北西部で個体数が急増しているものの、今後どこまで広がるかは不明です。温暖で湿度の高い地域が恋の虫の生息に適しているため、今後も都市部での発生が続く可能性があります。

補足情報:恋の虫と世界の昆虫食トレンド

近年、世界的に「昆虫食(エディブルインセクト)」が注目されています。恋の虫もタンパク質源として利用できる可能性があり、実際に韓国のYouTuberがハンバーガーに調理した事例も話題となりました。国連も将来的な食糧危機対策として昆虫食を推奨しており、恋の虫のような大量発生種が新たな資源となる可能性もあります。

また、恋の虫の発生は気候変動の「生きた指標」としても注目されており、今後の環境政策や都市計画において重要なテーマとなるでしょう。

まとめ

2025年夏、ソウルを中心に発生した恋の虫(ラブバグ)の大量発生は、気候変動や都市化の影響を象徴する現象です。市民生活への影響は大きいものの、恋の虫は生態系にとって有益な側面も持ち合わせています。今後も気候変動や都市のヒートアイランド現象が続く限り、同様の現象が繰り返される可能性があります。市民一人ひとりが環境問題に関心を持ち、持続可能な都市づくりに取り組むことが求められています。

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