ドイツの製薬・農薬大手バイエル社が、除草剤ラウンドアップをめぐる訴訟で苦戦を強いられています。
日本ではあまり注目されていませんが、米国では多くの訴訟が提起され、巨額の賠償金支払いを命じる判決が相次いでいます。
相次ぐ敗訴と巨額賠償命令
2018年8月、カリフォルニア州の裁判所は、学校の校庭整備でラウンドアップを使用し、悪性リンパ腫を発症したドウェイン・ジョンソン氏の訴えを認め、モンサント社(現バイエル社)に約320億円の賠償金支払いを命じました。
その後の控訴審で賠償額は約22億円に減額されましたが、バイエル社の敗訴が確定しています。
2019年3月には、25年間ラウンドアップを使用し、非ホジキンリンパ腫を発症したエドウィン・ハードマン氏の訴訟でも、バイエル社に約91億円の賠償金支払いが命じられました。
控訴審では賠償額が約27億円に減額されましたが、やはりバイエル社の敗訴が確定しています。
訴訟の核心 – 発がん性の有無
これらの訴訟の焦点は、ラウンドアップの主成分であるグリホサートの発がん性です。
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は2015年、グリホサートを「おそらく発がん性がある」と分類しました。
一方、バイエル社は「グリホサートはがんを引き起こさないという800を超える科学的研究とレビューがある」と主張し、発がん性を否定しています。
実際、米国環境保護庁(EPA)や欧州食品安全機関(EFSA)などの規制当局は、適切に使用すれば安全であるとの見解を示しています。
バイエル社の苦境
2019年10月時点で、米国でのラウンドアップ関連訴訟の原告は約4万3千人に達していました。
バイエル社は2018年にモンサント社を買収しましたが、この買収に伴う法的リスクは当初の予想を大きく上回るものとなっています。
訴訟の増加と巨額賠償判決は、バイエル社の財務状況と将来の事業戦略に大きな影響を与えています。
同社は和解金の支払いや将来の法的責任に備えた資金の確保に追われており、事業再編や債務削減にも取り組んでいます。
日本への影響
日本では、ラウンドアップは「安全な農薬」として販売されており、店頭で購入することができます。
また、日本は遺伝子組み換え作物の輸入大国であり、ラウンドアップ耐性を持つ遺伝子組み換えトウモロコシなどが輸入されています。
これらの訴訟の結果が、日本での農薬規制や遺伝子組み換え作物の輸入政策にどのような影響を与えるか、今後注目される点といえるでしょう。
まとめ
ラウンドアップ訴訟は、製品の安全性と企業の社会的責任に関する重要な問題を提起しています。
科学的な見解が分かれる中、今後の訴訟の行方や規制当局の判断が注目されます。
日本の消費者や農業関係者も、この問題の推移を注視する必要があるでしょう。