「日本人一人当たりの借金は832万円」
「財政破綻が迫っている」
――こうした言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。
しかし、これらの主張は本当に正しいのでしょうか?
経済アナリストである故森永卓郎氏が著した『ザイム真理教』は、財務省が推し進める「財政均衡主義」の問題点に鋭く切り込み、その背後に潜むメカニズムを解き明かします。
本書は、財務省を“宗教”や“カルト”に例え、その政策がどのようにして日本経済や国民生活に影響を与えてきたのかを論じています。
この記事では、『ザイム真理教』の内容をわかりやすく解説しつつ、その主張が私たちの生活にどのような意味を持つのかを考察します。
財務省と「ザイム真理教」の誕生
森永氏によれば、「ザイム真理教」とは、財務省が長年推進してきた「財政均衡主義」という思想そのものです。
この思想は、国の借金(国債)を減らすために税収を増やし、支出を抑えることを至上命題としています。
これが「宗教化」することで、政治家やメディア、さらには国民までもがその影響下に置かれ、日本経済は停滞し続けていると指摘されています。
主な問題点
- 国債返済の誤解
森永氏は、「国債は必ずしも返済する必要がない」と述べています。
個人の借金とは異なり、国債は新たな発行(借り換え)で対応可能です。
しかし、財務省はこれを無視し、「税収増=増税」を繰り返してきました。 - 消費税増税の悪循環
消費税率は1997年の5%から現在の10%まで引き上げられましたが、その結果として実質賃金が低下し、消費が冷え込み、日本経済全体が縮小する悪循環に陥っています。
財務省政策の影響 – 失われた30年
森永氏は、日本経済が「失われた30年」と呼ばれる長期停滞期に陥った原因の一つとして、財務省の政策ミスを挙げています。
特に消費税増税や社会保険料引き上げなどが、国民生活に大きな負担を与えたと指摘しています。
実質賃金と手取り額
- 実質賃金:名目賃金から物価上昇分を差し引いたもの。これが低下すると生活水準も下がります。
- 手取り額:税金や社会保険料などを差し引いた後の収入。これも増税や保険料上昇で減少しています。
例えば、消費税率が5%から10%へと引き上げられたことで、多くの家庭では可処分所得(自由に使えるお金)が減少しました。
その結果、消費意欲も低下し、日本経済全体の成長が鈍化しています。
「借金」と「資産」のバランス
本書では、「日本には1121兆円もの資産がある」という事実にも触れています。
これは、日本政府が抱える負債(約1200兆円)とほぼ同等であり、「日本人一人当たり832万円の借金」という表現がいかに一面的であるかを示しています。
負債だけでなく資産も考慮すれば、日本経済の状況はそれほど悲観的ではないという見方も可能です。
解決策としての視点転換
森永氏は、「財政均衡主義」から脱却し、国民全体の所得向上に注力すべきだと提案しています。
例えば、公務員給与を民間所得全体と連動させる仕組みを導入すれば、公務員自身も国民全体の所得向上に関心を持つようになるでしょう。
また、消費税率引き下げや社会保険料改革なども議論すべき課題として挙げられています。
まとめ – 私たちにできること
『ザイム真理教』は、一見難解な経済政策について、多くの人々に考えるきっかけを提供する一冊です。
本書で提起された問題点や提案には賛否両論がありますが、それでも重要なのは、一面的な情報だけでなく、多角的な視点から政策を考えることです。
私たち一人ひとりがこのような議論に関心を持ち、自分自身で判断する力を養うことこそ、日本経済再生への第一歩と言えるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、『ザイム真理教』を手に取ってみてください。
そして、日本経済について一緒に考えてみませんか?