サム・ジョーンズが謝罪 – 赤ちゃんウォンバットを母から奪った米インフルエンサー

オーストラリアで赤ちゃんウォンバットを母親から引き離す様子を撮影し、大きな批判を浴びた米国人インフルエンサーのサム・ジョーンズ氏が謝罪しました。

この出来事は、野生動物との適切な接し方や、ソーシャルメディアの影響力について改めて考えさせる機会となりました。

問題の動画と批判の声

ジョーンズ氏は、オーストラリアの道路脇で赤ちゃんウォンバット(ジョイと呼ばれる)を抱き上げ、カメラに向かって走る様子を撮影しました。

動画には母親のウォンバットが追いかける姿も映っており、ジョイが悲鳴を上げる様子も確認できました。

この動画はすぐに削除されましたが、動物愛護団体や一般市民から激しい批判を受けることになりました。

批判の声は瞬く間に広がり、ジョーンズ氏の国外追放を求めるオンライン請願には38,000人以上の署名が集まりました。

ジョーンズ氏の弁明と謝罪

批判を受けて、ジョーンズ氏はInstagramに長文の謝罪文を投稿しました。

その中で彼女は、ウォンバットの安全を確保するために行動したと説明しています。

「道路上で動かないでいる母子ウォンバットを見つけた時、私は非常に心配しました。オーストラリアの道路ではウォンバットがよく轢かれてしまうので、彼らが安全に道路から離れられるよう確認しようと止まりました」とジョーンズ氏は述べています。

さらに、「赤ちゃんが病気や怪我をしているかもしれないと心配し、咄嗟の判断で抱き上げて確認しようとしました。母親から赤ちゃんを引き離すためではなく、母親に攻撃されるかもしれないという恐怖から走ったのです」と説明を加えています。

全文翻訳

ウォンバット事件に関する私の公式声明 1/2

この声明は全文であり、許可なく抜粋または変更されるべきではありません。これは、この事件に関して私が発表した唯一の公式声明です。

道路上で動かない母子を発見したとき、私は非常に心配しました。ウォンバットはオーストラリアの道路で頻繁に轢かれるため、安全に道路から離れ、轢かれないようにするために停車しました。しかし、ビデオでご覧いただけるように、私が近づいたとき、赤ちゃんは動いたり逃げたりしませんでした。私は病気か怪我をしているのではないかと心配し、赤ちゃんを持ち上げて確認するという即断を下しました。私が走ったのは、赤ちゃんを母親から引き離すためではなく、母親が私を攻撃するかもしれないという恐怖からでした。これらの瞬間に私が下した即断は、決して危害を加えたり、赤ちゃんを盗んだりする意図からではありませんでした。

このような素晴らしい動物を見ることができて信じられないほど興奮しましたが、私はすぐに赤ちゃんをざっと確認し、すぐに母親に戻しました。私は母親と赤ちゃんが再会し、一緒に立ち去り、道路から離れたことを確認しました。

この状況について深く反省し、この状況に最善の方法で対処できなかったことを痛感しました。

いずれにせよ、私の唯一の意図は、これらの素晴らしい動物が轢かれるのを防ぎ、赤ちゃんが緊急のケアを必要としていないか確認することでした。

この状況から学び、私が引き起こした苦痛について心からお詫び申し上げます。

これがソーシャルメディアや「いいね!」のためでは決してなかったことを明確にしたいと思います。これは演出されたものでも、娯楽のために行われたものでもありません。興奮と心配の中で、私は行動が早すぎ、オンラインの視聴者に必要な背景情報を提供することができませんでした

ジョーンズ氏の声明2/2

読者の皆様、物事は見た目通りではありません。 ウォンバットを抱きかかえたことで、何千人もの人々が私の命を脅かしています。 誤解のないように言っておきます。私を助けようとした誤った行為や、私がハンターであることに怒っている人々は、今日のオーストラリアの現実を理解すべきです。

まず、ウォンバットについて説明しましょう。 オーストラリア政府はウォンバットの殺戮を許可し、容認しています。 毎年、何千ものウォンバットが射殺され、苦しむ毒を盛られ、合法的に罠にかけられています。土地所有者は重機でウォンバットの巣穴を破壊し、燻蒸で毒殺し、できる限り射殺しています。もちろん、私に降りかかったような怒りを買わないように、ひっそりと行っています。

なぜ彼らはウォンバットを殺すのか、と疑問に思うかもしれません。それは、あなたを養うためです。土地所有者は、あなたの食卓に並ぶラム肉、ワイン用のブドウ、サラダ用の農産物を育て、生き残ろうとしているのです。ウォンバットは、土地に穴やトンネルを掘り、家畜にとって危険な場所を作り、根を食べて地面を掘り返すことで、これを妨害します。ウォンバットもまた、生き残ろうとしているだけで、何も悪いことをしているわけではありません。

さらに、政府は毎年、何千万ドルもの税金を費やして、ヘリコプターで飛び回り、美しい馬、鹿、豚を窓から射殺しています。これらの動物は、しばしば安らかな死を与えられません。オーストラリア政府農務省の調査では、動物の一定割合が苦痛を伴う傷を負い、「ヘリコプターが射殺された動物の上空に戻り、頭部または胸部を繰り返し射撃することを義務付ける国家レベルの標準作業手順によって、動物福祉の成果は改善される可能性がある」と述べられています。これは親切な行為に聞こえますか?

これらの動物にとって生き残ることはほぼ不可能になり、彼らの生活は常に恐怖に満ちた状態になります。そして、彼らの死骸はあなたの公有地に放置され、腐敗していきます。あなたのスノーウィー川やコジオスコ国立公園の野生馬は、あなたの税金で何千頭も虐殺されています。アンソニー・アルバニーズ首相にそのことを尋ねてください。オーストラリア国立公園野生生物サービスを愛しながら、食料のために野生の鹿を殺した私に怒るのは、まさに偽善です。

あなたの国章に描かれている国民的動物、愛すべきカンガルーはどうでしょうか?過去20年間で、約9,000万頭のカンガルーとワラビーが商業目的で合法的に虐殺されており、その数は減速していません。毎年、何百万頭ものカンガルーが合法的に殺されています。彼らは、在来種として政府の保護を受けるに値しないのでしょうか?信じられない場合は、次にウールワースに行くときに周りを見てください。カンガルーの肉がペットフードと人間の食用として販売されているのを目にするでしょう。

悲しいことに、ほとんどの人間は自然界よりも自分自身をはるかに利己的に気にかけています。多くの記事で、私が代わりに動物園でウォンバットを見るように提案されました。誤解のないように言っておきます。野生動物を繁殖させ、私たちの見世物として動物園に閉じ込めることは、助けようと一瞬抱きしめるよりもはるかにひどい罪です。

首相がウォンバットを抱き上げた私に危害を加えたいと望む一方で、私はあなたに、オーストラリアが現在直面している本当の問題、何万人ものオーストラリア人が電力不足に苦しんでいること、そしてその在来野生生物の扱いについて、よくよく考えていただきたいと切に願います。

そして、間違いを犯すこともある私という人間が、本当にあなたの悪役なのかどうか、自分で判断してください。

オーストラリア政府の対応

この事件に対し、オーストラリアの政府高官も反応を示しました。

アンソニー・アルバニージ首相は、ジョーンズ氏の行為を「暴挙」と呼び、厳しく批判しました。

「優しく愛らしい生き物を…この自称インフルエンサーには、他のオーストラリアの動物を試してみることをお勧めします。例えば赤ちゃんクロコダイルを母親から奪ってみてはどうでしょうか」と皮肉を込めて述べています。

また、トニー・バーク内務大臣は、ジョーンズ氏のビザ条件を見直し、移民法違反の有無を調査すると発表しました。

しかし、調査結果が出る前に、ジョーンズ氏は自主的にオーストラリアを出国しました。

野生動物保護の重要性と法的問題

この事件は、野生動物との適切な接し方について改めて注目を集めることになりました。

オーストラリアの「環境・生物多様性保護法1999年」では、原則として野生動物に危害を加えたり捕獲したりすることは違法とされています。

野生動物救護教育サービス(WIRES)の獣医師タニア・ビショップ氏は、「母親が死亡していて、赤ちゃんが助けを必要としていると合理的に判断できる場合を除いて、このような行為に法的正当性はありません」と指摘しています。

専門家たちも、必要な許可なしに野生動物を扱うことは通常違法であると強調しています。

しかし、現時点でジョーンズ氏に対する具体的な告発は報告されていません。

ソーシャルメディアの影響力と責任

この事件は、ソーシャルメディアインフルエンサーが持つ影響力と責任についても議論を呼び起こしました。

9万人以上のフォロワーを持つジョーンズ氏の行動は、多くの人々に影響を与える可能性があります。

インフルエンサーには、自身の行動が与える影響を十分に認識し、責任ある発信を心がける必要があります。

特に野生動物や自然環境に関わる内容を発信する際は、専門家の助言を受けるなど、より慎重な対応が求められるでしょう。

ウォンバットについて

ウォンバットは、オーストラリア固有の有袋類で、体長約1メートル、体重20-35キログラムほどの中型哺乳類です。

夜行性で、主に草食性です。彼らは強力な爪と歯を持ち、地中に複雑な巣穴を掘ることで知られています。

オーストラリアでは保護動物に指定されていますが、一部の地域では農作物への被害などの理由で駆除が行われることもあります。

この点に関して、ジョーンズ氏は謝罪文の中で、オーストラリア政府の野生動物管理政策にも批判的な意見を述べています。

まとめ

サム・ジョーンズ氏による赤ちゃんウォンバット騒動は、野生動物との適切な接し方、ソーシャルメディアの影響力、そして観光客のマナーなど、多くの問題を浮き彫りにしました。

この事件を機に、私たち一人一人が野生動物や自然環境との関わり方について考え直す必要があるでしょう。

同時に、ソーシャルメディアを通じて情報を発信する際の責任についても、改めて認識することが重要です。

野生動物との共存を目指し、彼らの生態や習性を理解し尊重する姿勢が、今後ますます求められていくことでしょう。

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