ロサンゼルス・ドジャースの新星、佐々木朗希投手が投じる「スプリッター」が、メジャーリーグ(MLB)で大きな話題を呼んでいます。
その変化の不規則性から、かつてR.A.ディッキーが投げた「アングリー・ナックル」を彷彿とさせる魔球として注目を集めています。
佐々木のスプリッターは、MLBの最新ピッチトラッキングシステムさえも混乱させるほどの奇抜な動きを見せており、野球界に新たな旋風を巻き起こしています。
ナックルボールとは何か
ナックルボールは、ほとんど回転をかけずに投げる変化球で、その不規則な軌道から「蝶々のように舞う」と表現されることもあります。
通常60〜70マイル(約96〜112km/h)程度の速度で投げられますが、R.A.ディッキーは80マイル(約128km/h)を超える「アングリー・ナックル」を編み出し、2012年にサイ・ヤング賞を獲得しました。
佐々木朗希のスプリッター – ナックルを超える新兵器
驚異的な回転数の低さ
佐々木朗希のスプリッターが注目を集める最大の理由は、その驚異的な低回転数にあります。
彼の最新の登板では、スプリッターの平均回転数はわずか575rpmでした。
これは、昨シーズンのMLB平均スプリッター回転数1,326rpmの半分以下であり、ナックルボールの平均回転数(244rpm)により近い数値です。
この低回転が、佐々木のスプリッターに予測不可能な動きを与えています。
通常のスプリッターは投手の腕側に変化するのが一般的ですが、佐々木のスプリッターは左右どちらにも大きく変化する可能性があります。
MLBのトラッキングシステムを混乱させる不規則性
佐々木のスプリッターの動きは、MLBの最新ピッチトラッキングシステム「Statcast」さえも混乱させるほど不規則です。
Statcastは通常、ピッチの速度、回転数、軌道などを正確に測定し、球種を識別します。
しかし、佐々木のスプリッターは、その動きの多様性から、スライダーやチェンジアップ、カーブボールと誤認識されることがあります。
これは、佐々木のスプリッターが従来の変化球の概念を覆すほど特異な動きをすることを示しています。
打者を翻弄する多彩な変化
佐々木のスプリッターの特筆すべき点は、その多彩な変化にあります。
例えば、ある打者に対して投じた連続する2球のスプリッターで、1球目は8インチ(約20cm)グラブ側に変化し、2球目はわずか1インチ(約2.5cm)しか変化しませんでした。
さらに驚くべきことに、その直前の打者には8インチ腕側に変化するスプリッターを投げていたのです。
Rōki Sasaki could just throw a Splitter every pitch.
— Rob Friedman (@PitchingNinja) March 11, 2025
It's virtually unhittable. pic.twitter.com/r9hDPmjPKQ
このような極端な変化の差は、通常のピッチングでは見られません。
ナックルボール以外で、このような不規則な動きを示す球種は稀です。
佐々木は、この予測不可能性を80マイル台半ば(約136km/h前後)のコントロール可能な球種に組み込むことに成功しました。
佐々木朗希の可能性 – ナックラーを超える存在
二刀流ならぬ「二球種流」
佐々木朗希は、メジャーリーグ入り前はファストボールとスプリッターの2球種に頼る投手だと評価されていました。
通常、MLBの先発投手として成功するには、より多くの球種が必要だと考えられています。
しかし、佐々木のスプリッターの特異性を考慮すると、彼を従来の2球種投手として評価するのは適切ではないかもしれません。
むしろ、ナックルボーラーが上位90マイル(約145km/h)台のファストボールを投げられるようなものだと考えるべきでしょう。
佐々木のスプリッターは、1球1球で全く異なる軌道を描く可能性があるため、打者は常に様々な変化に備えなければなりません。
さらに、彼は世界最速クラスのファストボールも併せ持っています。
これは、R.A.ディッキーがクレイグ・キンブレル並みのファストボールを投げられるようなものだと例えられています。
MLBでの期待
このような特異な才能を持つ佐々木に、MLBの多くのチームが興味を示しました。
もし完全なフリーエージェントとして市場に出ていれば、チームメイトの山本由伸と同様に2億ドル(約300億円)以上の契約を結んでいた可能性があるとも言われています。
佐々木は来週、東京シリーズの第2戦でMLBデビューを果たす予定です。
彼のスプリッターがMLBの打者たちをどのように翻弄するか、野球ファンの注目が集まっています。
スプリッターとは
スプリッターは、主に人差し指と中指を縫い目に沿って広げて握り、ほぼストレートのような腕の振りで投げる変化球です。
通常、ファストボールより10〜15km/h程度遅い球速で、ホームプレート付近で急激に落ちる変化が特徴です。
日本では「フォーク」と呼ばれることも多いですが、厳密には異なる球種です。
まとめ
佐々木朗希のスプリッターは、その不規則な動きと低回転数から、従来のスプリッターの概念を覆す新たな変化球として注目を集めています。
ナックルボールの不規則性と、コントロール可能な中速球の特性を併せ持つこの球種は、MLBの打者たちに新たな課題を突きつけることになるでしょう。
佐々木の活躍次第では、MLBにおける変化球の概念が大きく変わる可能性さえあります。
彼のMLBデビューと今後の活躍に、世界中の野球ファンの視線が注がれています。
佐々木朗希が、日本人投手として新たな歴史を刻むことができるか、その行方から目が離せません。