多様性政策の撤回に抗議、40日間の”断食”が3月5日から開始
アメリカ小売業界に激震が走っています。大手小売チェーンTarget(ターゲット)に対する大規模なボイコット運動が3月5日から始まろうとしています。
この動きの背景には、同社が多様性・公平性・包摂性(DEI)に関する方針を撤回したことへの抗議があります。
アトランタを拠点とする牧師ジャマル・ブライアント氏が呼びかけたこの40日間の”ファスト”(断食)は、すでに5万人以上の賛同を集め、全米規模に拡大する可能性を秘めています。
ボイコット運動の発端
🚨🇮🇱 The GLOBAL BOYCOTT against ISRAEL is still going strong. pic.twitter.com/iNQW1S1Oqz
— Legitimate Targets (@LegitTargets) February 11, 2025
Targetは2021年、ジョージ・フロイド氏の死を契機に、黒人従業員のキャリア支援や黒人経営企業への20億ドルの支援を約束しました。
しかし、2025年1月24日、同社はこれらのDEIプログラムを段階的に廃止すると発表しました。
この決定の背景には、トランプ前大統領による連邦DEIプログラムの終了指示があります。
Targetに限らず、Walmart、McDonald’s、Ford、John Deereなど多くの企業がDEI施策を縮小または廃止しています。
ジャマル・ブライアント牧師の呼びかけ
アトランタのNew Birth Missionary Baptist Church牧師であるジャマル・ブライアント氏は、この決定を受けて40日間のTargetボイコットを呼びかけました。
ブライアント氏は「黒人教会は歴史的に公民権運動の最前線にいた」と述べ、「1日2900万ドルの損失を40日間続ければ、システムを打ち砕くことができる」と主張しています。
ボイコット運動の規模と影響
ブライアント牧師の呼びかけは急速に広がり、2025年2月14日時点で5万人以上が賛同の署名をしています。
黒人消費者は1日平均1200万ドルをTargetで消費しているとされ、40日間のボイコットが実現すれば、同社に大きな打撃を与える可能性があります。
実際、この騒動の影響でTargetの株価は160ドルから100〜140ドルの間に下落しています。
Targetの対応と今後の展望
Targetは「Belonging at the Bullseye(Targetという企業の中心(ブルズアイ)に帰属する)」という新戦略を発表し、DEIに代わる包括的な取り組みを行うとしています。
しかし、この対応は批判を回避するには至っていません。
ファイナンスの専門家マイケル・ライアン氏は「Targetのブランドポジショニングは社会的責任への高い期待を生み出してきた。
DEIへのコミットメントからの撤退は、都市部のプロフェッショナル層である中核的な顧客からの裏切りと受け取られている」と分析しています。
DEIをめぐる企業の葛藤
DEIの取り組みを巡っては、企業が難しい立場に置かれています。
社会的責任を果たすことへの期待がある一方で、保守層からの批判も強まっています。
例えば、Targetは昨年、地方店舗でのプライド関連商品の展示を中止せざるを得ませんでした。
こうした状況下で、多くの企業がDEI施策の見直しを迫られています。
まとめ
Targetに対するボイコット運動は、アメリカ社会におけるDEIの重要性と、企業の社会的責任の在り方を問う大きな動きとなっています。
3月5日からの40日間、この運動がどのような影響を与えるのか、そしてTarget以外の企業にも波及するのか、注目が集まっています。
企業は今後、多様性と包摂性を重視しつつ、政治的な対立を避ける難しいバランス取りを迫られることになるでしょう。
消費者の力が企業の方針を左右する時代において、この騒動は重要な転換点となる可能性を秘めています。