製造コストが額面を超える1セント硬貨、廃止の動きが加速
アメリカの象徴とも言える1セント硬貨(ペニー)が、ついにその歴史に幕を閉じるかもしれません。
2025年2月9日、ドナルド・トランプ大統領は財務省に対し、新たなペニーの製造を中止するよう指示しました。
この決定は、ペニーの製造コストが額面を大幅に上回り、税金の無駄遣いとされてきた背景を受けたものです。
トランプ政権はエグゼクティブオーダー(大統領令)を駆使し、政府支出削減に向けた大胆な改革を進めています。
本記事では、この決定の背景や影響について詳しく解説します。
ペニー製造中止の背景 – コスト問題
アメリカ合衆国造幣局(US Mint)の報告によると、2024年度には約32億枚のペニーが製造され、そのコストは約8,530万ドル(約114億円)の損失をもたらしました。
1枚あたりの製造コストは3.7セントで、額面の1セントを大幅に超えています。
この問題の主因は原材料費の高騰です。
現在のペニーは97.5%が亜鉛、2.5%が銅で構成されていますが、これら金属価格の上昇がコスト増加に直結しています。
さらに流通コストや管理費も加わり、ペニー1枚あたりの総コストが膨らんでいる状況です。
トランプ政権の狙い – 政府支出削減
トランプ大統領は「無駄遣いを排除する」というスローガンのもと、政府支出削減に注力しています。
その象徴的な一手としてペニー製造中止が選ばれました。
「1セントずつでも国家予算から無駄を取り除こう」と彼は述べています。
この動きはイーロン・マスク氏率いる「政府効率化省」(Department of Government Efficiency)による提案がきっかけとされています。
同省は昨年末、ペニー製造の非効率性を指摘し、大きな議論を巻き起こしました。
ペニー廃止への法的課題
しかし、この決定には法的な課題があります。
アメリカでは硬貨の仕様や構成は議会によって規定されており、大統領権限だけで廃止することは難しいとされています。
ただし、一部専門家は「財務長官が新規製造を停止する権限はある」と指摘しており、議会との調整が今後の焦点となるでしょう。
ペニー廃止による影響
ペニー廃止には賛否両論があります。
一方では、以下のような利点が挙げられます:
一方で、小売業界や消費者からは「価格調整(四捨五入)による不公平感」や「文化的価値喪失」を懸念する声もあります。
歴史的視点から見るペニー
ペニーは1857年に廃止されたハーフセント以来、最も低額面の硬貨として親しまれてきました。
しかし、その実用性は年々低下しており、多くの場合「貯金箱行き」となる運命でした。
この現象はパンデミック以降、非接触型決済が普及したことでさらに顕著になっています。
他国での事例
カナダでは2012年に1セント硬貨が廃止されました。
その結果、小売業界では価格調整システムが導入され、大きな混乱もなく移行が進みました。
同様にオーストラリアやニュージーランドでも低額面硬貨が廃止されており、これらの成功例がアメリカにも影響を与えています。
まとめ
トランプ大統領によるペニー製造中止指示は、政府支出削減という目標を象徴する一手です。
しかし、その実現には法的課題や社会的影響への対応が求められます。
本件は単なる硬貨廃止以上に、「効率化」と「伝統」のバランスを問う重要なテーマとなるでしょう。
今後もこの動向から目が離せません!