60年の歴史を持つ機関が直面する存続の危機と今後の展望
アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)は、1961年に設立された米国の非軍事海外援助を担う政府機関です。
しかし、この長年にわたり国際支援の最前線で活動してきた機関が、今、存続の危機に直面しています。
本記事では、USAIDの役割と最近の動向について詳しく解説します。
USAIDとは – 60年の歴史と使命
USAIDは、ケネディ大統領の時代に設立された機関で、発展途上国や移行国の経済的・社会的発展を支援することを使命としています。
当初は大統領直属の機関でしたが、1998年以降は国務省の監督下に置かれ、米国の外交政策をより強く反映するようになりました。
USAIDの主な活動分野は以下の4つです:
- グローバル開発アライアンス
- 経済成長・貿易振興・農業開発
- 保健
- 紛争予防及び人道援助1
これらの分野で、USAIDは年間数十億ドルの予算を管理し、世界中で様々な支援プログラムを展開してきました。
トランプ政権下での激変 – USAIDの存続危機
2025年2月3日、ワシントンD.C.にあるUSAIDの本部が突如閉鎖され、職員は出勤を禁じられるという衝撃的な出来事が起こりました。
この事態は、トランプ政権によるUSAIDの大規模な再編の一環であると見られています。
トランプ大統領とその支持者たちは、USAIDが過度に民主党寄りで偏向していると批判しており、機関の解体を望んでいるとされます。
さらに、イーロン・マスク氏が率いる新設の政府効率化省(DOGE)の代表者たちが、週末にUSAIDのオフィスに立ち入ったという報告もあります。
トランプ大統領が指摘しているUSAIDの問題点
- 国益を無視した活動: USAIDが米国の国益に沿わない方針で活動してきたと批判しています。
- 不正行為の疑い: トランプ大統領は、USAIDに不正行為があると主張し、「不正があるとしたら、かれらは正気でない」と述べています。
- 資金の不適切な使用: バイデン前政権時代に「渡すべきでない相手に金を渡していた」と批判しています。
- 極左的な傾向: USAIDを「正体は極左の狂人たち」と表現し、政治的偏向を指摘しています。
- 議会や大統領府への反応の鈍さ: USAIDが歴史的に政府の指示に対して「反応が鈍い」と批判されています。
これらの問題点を根拠に、トランプ政権はUSAIDの閉鎖や国務省への統合を検討しているようです。
マルコ・ルビオ国務長官の発言 – USAIDの新たな方向性
この混乱の中、マルコ・ルビオ国務長官が、USAIDの暫定長官に就任したことを発表しました。
ルビオ長官は、USAIDの活動を政権の政策に沿ったものにするための措置を講じると述べています。
ルビオ長官は、USAIDが歴史的に議会や大統領府に対して「反応が鈍い」と批判し、以下のように述べました。
「USAIDには、国益とは別の世界的な慈善団体のようなものだと勝手に決めてしまう歴史があります。これは納税者のお金であり、私たちは海外で使われる1ドル1ドルが国益を促進するものであることを、アメリカ国民に保証する義務があります。」
国際支援の未来 – USAIDの再編が世界に与える影響
USAIDの突然の閉鎖と再編の動きは、世界中の支援プログラムに大きな影響を与える可能性があります。
USAIDは長年にわたり、災害復興、民主化支援、経済発展など、様々な分野で重要な役割を果たしてきました。
例えば、かつて敵対関係にあったベトナムにも支援センターを設置し、医療サービスや障害者支援で両国の協力関係を象徴する存在となっていました。
このような活動が今後どうなるのか、国際社会は懸念を示しています。
USAIDの設立背景
USAIDの設立には、第二次世界大戦後の欧州復興を目的としたマーシャル・プランや、トルーマン大統領のポイント・フォー・プログラムなどの影響がありました。
冷戦時代には、友好国を優先して支援を行うなど、政治的な意味合いも強かったのです。
まとめ – 岐路に立つアメリカの国際支援
USAIDの突然の閉鎖と再編の動きは、アメリカの国際支援の在り方が大きく変わる可能性を示唆しています。
国益を重視する新しい方針が、世界の発展途上国や人道支援にどのような影響を与えるのか、今後の展開に注目が集まります。
国際社会の一員としてのアメリカの役割が、大きく変わろうとしているのかもしれません。