韓国大統領逮捕劇、6時間の攻防 – ユン・ソンニョル大統領の身柄確保失敗、政治危機さらに深刻化

韓国の政治危機が新たな局面を迎えた。

1月3日朝、捜査当局がユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の逮捕に乗り出したものの、6時間に及ぶ攻防の末に断念。

支持者らの人垣と警護隊の抵抗に阻まれ、前代未聞の現職大統領逮捕は実現しなかった。

昨年12月の戒厳令布告をめぐり、権力乱用と反乱扇動の疑いで捜査を受けるユン大統領。

この逮捕劇の顛末と、混迷を深める韓国政治の行方を探る。

逮捕劇の舞台裏 – 150人の捜査チームvs支持者と警護隊

1月3日未明、ソウル中心部の大統領公邸前には数十台の警察車両が集結した。

午前8時、約20人の捜査チームが公邸に向かって動き出す。

これを皮切りに、最終的には150人規模にまで膨れ上がった捜査隊。

しかし、彼らを待ち受けていたのは、予想を遥かに上回る障壁だった。

まず、夜明け前から集まっていた大勢のユン大統領支持者たち。

「不当な逮捕を許すな」 「民主主義を守れ」といったスローガンを掲げ、人間の壁を作って捜査隊の前進を阻んだ。

さらに公邸内では、依然としてユン大統領の警護を担当する大統領警護室の職員たちが、捜査隊と対峙。

軍の一部も加わり、捜査隊は完全に包囲された形となった。

「実質的に逮捕は不可能と判断した」。

6時間に及ぶ膠着状態の末、汚職捜査処(CIO)はこう発表し、逮捕の試みを中止。

ユン大統領支持者たちからは歓喜の声が上がった。

https://www.bbc.com/news/articles/cy4pz3129pzo

前代未聞の大統領逮捕劇 – その背景

今回の逮捕劇の発端は、昨年12月3日に尹大統領が突如宣言した戒厳令にある。

野党が多数を占める国会との対立に業を煮やしたユン大統領は、軍を動員して国会を包囲。

しかし、この強硬手段は数時間で撤回を余儀なくされた。

この前代未聞の行動に対し、国会は12月14日にユン大統領の弾劾を可決。

権力乱用と反乱扇動の疑いで捜査が開始された。

尹大統領は3度の出頭要請を無視し続け、ついに1月2日、ソウル中央地裁が逮捕状を発付するに至った。

法と政治の綱引き – ユン大統領の法的戦略

元検事総長でもあるユン大統領は、法的抗戦の構えを崩していない。

弁護団は「大統領には戒厳令を布告する憲法上の権限がある」と主張。

さらに、逮捕状の執行そのものが違法だとして、法的措置も辞さない構えだ。

一方で、野党民主党の朴燦大院内代表は「法的・政治的責任を取るという約束は完全な嘘だった」と批判。

CIOに再度の逮捕を促している。

https://www.euronews.com/2025/01/03/standoff-in-seoul-as-officers-attempt-to-enter-presidential-residence-to-arrest-yoon

政治の混乱 – 二重の弾劾と権力の空白

韓国政治は未曽有の混乱状態にある。

ユン大統領の弾劾に続き、12月末には代行を務めていたハン・ドクス(韓悳洙)首相までもが弾劾された。

民主化以降初めての代行大統領の弾劾という事態に、政治の機能不全が露呈している。

さらに、戒厳令時の司令官を務めた朴安洙陸軍参謀総長と郭鍾根特殊戦司令官が反乱罪で起訴され、拘束されたことも明らかになった。

今後の展開 – 逮捕劇は終わらない

CIOは「法的プロセスを拒否したことは深く遺憾」としつつも、今後の方針を検討するとしている。

現在の逮捕状の期限は1月6日まで。週末にかけて再度の逮捕を試みる可能性もあるが、支持者の数が増えることが予想され、困難が予想される。

韓国民主主義の岐路 – 政治の安定と法の支配

今回の逮捕劇は、韓国の民主主義が直面する深刻な課題を浮き彫りにした。

法の支配と政治の安定のバランスをいかに取るか。国民の信頼を回復し、政治の機能を取り戻すことができるのか。

韓国は重大な岐路に立たされている。この未曽有の政治危機を乗り越え、より強固な民主主義を築くことができるのか。

世界が注目する中、韓国政治の真価が問われている。

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