2025年の幕開けを祝う人々で賑わっていたニューオーリンズのブルボンストリート。
その歓喜の瞬間は、一台のピックアップトラックによって悪夢へと一変しました。
14名の尊い命が奪われ、35名以上が負傷したこの悲劇的な事件。
当初は複数の実行犯の存在が示唆されましたが、FBIの調査により新たな事実が明らかになりました。
Timeline of the terror attack in New Orleans. pic.twitter.com/0POnbO7ET2
— Gang Hits (@GangHits) January 2, 2025
単独犯による計画的テロ行為
FBIの対テロ部門副部長クリストファー・ライア氏は、この襲撃がシャムスディン・ジャバー容疑者(42)による単独犯行であったと発表しました。
「これは計画的で邪悪なテロ行為でした。彼はISIS(イスラム国)に100%触発されていました」とライア氏は語ります。
当初、ルイジアナ州司法長官リズ・マリル氏は「複数の関係者」の存在を示唆していました。
しかし綿密な捜査の結果、ジャバー容疑者が単独で犯行を計画・実行したことが判明しました。
容疑者はテキサス州ヒューストン出身の米国市民で、13年間の軍歴を持っています。
事件直前、容疑者はFacebookに5本の動画を投稿。そこでISISへの支持を表明し、これから起こす暴力行為について予告していました。
FBIによると、容疑者は当初、家族や友人を標的にすることを考えていたといいます。
しかし「信者と不信者の戦い」に焦点を当てたいという思いから、最終的にブルボンストリートを襲撃対象に選んだとみられます。
襲撃の詳細と被害状況
1月1日午前3時過ぎ、ジャバー容疑者は白いレンタルトラックでブルボンストリートの100ブロックから400ブロックにかけて暴走しました。
新年を祝う群衆に次々と突っ込み、車内から発砲も行いました。
ニューオーリンズ警察のアン・カークパトリック本部長は「この個人は可能な限り多くの人々を轢き殺そうとしました」と語っています。
容疑者は防弾チョッキとヘルメットを着用していました。
車両にはISISの旗が掲げられ、車内からは銃器や即席爆発装置(IED)が発見されました。
警察との銃撃戦の末、容疑者は射殺されました。
警官2名も負傷しましたが、命に別状はないとのことです。
関連事件との関係性
当初、ラスベガスで同日発生したテスラ・サイバートラック爆発事件との関連性が疑われました。
両事件とも車両共有アプリ「Turo」を利用してレンタルされた車両が使用され、容疑者に軍歴があったことから、ジョー・バイデン大統領も含め多くの人々が両事件の関連性を疑問視しました。
しかしFBIは、現時点で両事件の関連性は認められないと発表しました。
ニューオーリンズ事件はISISに触発された単独のテロ行為であると結論づけています。
容疑者の素顔と家族の反応
ジャバー容疑者の弟アブドゥル・ラヒム・ジャバーは、兄の犯行を信じられないと語っています。
「彼がこんなことをするなんて現実感がありません。全く彼らしくない行動です」と、弟は報道陣に語りました。
弟によると、ここ数年ジャバー容疑者は孤立しがちだったそうです。
しかし、連絡を取り合う中で過激化の兆候は見られなかったとのことです。
「家族や友人が知る彼の人柄とは全く矛盾する行動です」と弟は語っています。
事件後の対応と今後の課題
事件を受け、ニューオーリンズ市は安全対策の見直しを迫られています。
フレンチ・クォーター地区では7年前から、歩行者の多い通りへの車両進入を防ぐための可動式バリケードの設置を進めていました。
しかし、大晦日の時点でこのバリケードは更新作業中で稼働していませんでした。
カークパトリック本部長は、1月4日に予定されているシュガーボウル(大学フットボールのプレーオフ)では、スーパーボウル並みの厳重な警備体制を敷くと発表しています。
「何百人もの警官とスタッフが街路やブルボンストリート、フレンチ・クォーターを警備します」と語っています。
米国内のテロ脅威の再燃
今回の事件は、近年米国内で発生したISIS関連のテロ攻撃としては最も深刻なものとなりました。
連邦当局者らは、国際テロの脅威が再び高まっていると警告を発しています。
特に懸念されるのは、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任した場合のFBIなど治安機関のリーダーシップの大幅な変更です。
テロ対策の専門家からは、組織の継続性や専門知識の維持に支障が出る可能性を指摘する声も上がっています。
まとめ
ニューオーリンズ襲撃事件は、米国におけるテロの脅威が依然として現実的であることを浮き彫りにしました。
単独犯による計画的なテロ行為は、その予測と防止の難しさを改めて示しています。
今後、政府や治安当局には、テロ対策の強化と同時に、過激化を防ぐための取り組みが求められるでしょう。
市民一人一人も、不審な兆候に対する警戒を怠らず、地域の安全に貢献することが重要です。