フロリダ州西海岸に向かって猛烈な勢力のハリケーン「ミルトン」が接近しています。
カテゴリー5の勢力を維持したまま上陸する可能性があり、過去100年で最悪の被害をもたらす恐れがあります。
わずか2週間前にハリケーン「ヘレン」の被害を受けたばかりのタンパ湾地域にも再び大きな被害が予想されており、住民の不安が高まっています。
ハリケーン「ミルトン」の現状
ハリケーン「ミルトン」は10月8日現在、メキシコ湾を北東に進んでおり、最大風速は155mph(約250km/h)に達しています。
これはカテゴリー4の上限に近い非常に強い勢力です。
気象学者たちは、ミルトンが「爆発的」かつ「驚異的」なスピードで発達したと表現しています。
わずか24時間前には熱帯低気圧だったものが、カテゴリー5まで急激に発達したのです。
これは大西洋海域で観測された中で3番目に急速な発達でした。
予想される被害
暴風
ミルトンは上陸時にカテゴリー3の勢力を維持すると予想されており、最大風速は125mph(約200km/h)に達する見込みです。
これだけの風速があれば、建物の屋根が吹き飛ばされたり、大木が根こそぎ倒れたりする可能性があります。
高潮
最も懸念されているのが高潮です。
タンパ湾地域では10〜15フィート(約3〜4.5メートル)の高潮が予想されています。
これは2週間前のハリケーン「ヘレン」を上回る記録的な高さです。
フォートマイヤーズでも12フィート(約3.6メートル)の高潮が予想されており、沿岸部の広範囲で甚大な被害が出る恐れがあります。
豪雨
ミルトンは大量の雨をもたらすと予想されています。
フロリダ半島の広い範囲で5〜10インチ(約13〜25cm)、局地的には15インチ(約38cm)の雨量が予想されています。
これだけの雨量があれば、内陸部でも深刻な洪水被害が発生する可能性があります。
避難指示と対策
フロリダ州知事のロン・デサンティス氏は51の郡に非常事態宣言を発令し、住民に対して1週間分の食料と水の備蓄、停電への備え、そして必要に応じて避難する準備を呼びかけています。
タンパ湾地域では大規模な避難が始まっており、高速道路は避難する車で渋滞しています。
タンパ市長のジェーン・カストール氏は「直撃の可能性がある」として、住民に警報に従い避難プロトコルを遵守するよう呼びかけています。
経済的影響
ハリケーンの接近に伴い、フロリダ州の経済活動にも大きな影響が出ています。
ディズニーワールドとユニバーサル・スタジオは9日の営業時間を短縮すると発表しました。
また、フロリダ州内の多くの空港でフライトのキャンセルが相次いでおり、8日には700便以上、9日には1,500便以上のフライトがキャンセルされています。
さらに、ガソリンの供給にも影響が出ています。
GasBuddyの報告によると、8日夕方の時点でフロリダ州全体のガソリンスタンドの17%以上、タンパ湾地域では46%以上のガソリンスタンドで燃料が不足しています。
気候変動との関連
ミルトンの急激な発達や強大化には、気候変動の影響が指摘されています。
メキシコ湾の海水温が平年よりも高くなっていることが、ハリケーンの勢力を維持・強化する要因となっています。
気候学者たちは、地球温暖化によって海水温が上昇し、より強力なハリケーンが発生しやすくなっていると警告しています。
実際、近年は「歴史的」 「破壊的」 「前例のない」といった表現が、世界各地の極端な気象現象に対してより頻繁に使われるようになっています。
今後の対応と課題
ハリケーン「ミルトン」の接近に伴い、フロリダ州政府や連邦政府は総力を挙げて対応にあたっています。
バイデン大統領は海外訪問の予定をキャンセルし、ハリケーン対応に集中すると発表しました。
一方で、わずか2週間前にハリケーン「ヘレン」の被害を受けたばかりの地域に再び大型ハリケーンが接近するという事態は、気候変動への適応策の重要性を浮き彫りにしています。
今後は、より頻繁に発生する可能性のある強力なハリケーンに対して、どのように備えるべきかを真剣に検討する必要があります。
例えば、沿岸部の都市計画の見直しや、より強靭なインフラの整備、効果的な避難計画の策定などが求められるでしょう。
補足情報
ハリケーンの強さを表す指標として、サファー・シンプソン・ハリケーン・スケールが使用されています。
これは最大風速に基づいて5段階で分類するもので、カテゴリー3以上を「大型ハリケーン」と呼びます。
- カテゴリー1: 74-95 mph (119-153 km/h)
- カテゴリー2: 96-110 mph (154-177 km/h)
- カテゴリー3: 111-129 mph (178-208 km/h)
- カテゴリー4: 130-156 mph (209-251 km/h)
- カテゴリー5: 157 mph (252 km/h) 以上
まとめ
ハリケーン「ミルトン」は、フロリダ州西海岸に過去100年で最悪の被害をもたらす可能性のある非常に危険な暴風雨です。
住民の安全確保が最優先課題ですが、同時に、この事態を気候変動への適応策を再考する機会としても捉える必要があります。
今後数日間は、ミルトンの動向と被害状況に注目が集まることでしょう。
同時に、長期的には気候変動への対策や災害に強い社会づくりについて、より深い議論が必要となるでしょう。