2024年9月27日、シカゴ・ホワイトソックスがメジャーリーグベースボール(MLB)の歴史に新たな1ページを刻みました。
しかし、それは誰もが望まなかった記録でした。
デトロイト・タイガースとの試合で4-1で敗れ、シーズン121敗目を喫したのです。
The Chicago White Sox now have the most losses in a single season in the modern era of MLB history. pic.twitter.com/Xo6Ow1eBDG
— SportsCenter (@SportsCenter) September 28, 2024
これにより、1962年のニューヨーク・メッツが保持していた120敗の記録を62年ぶりに更新し、近代野球史上最多敗北チームとなりました。
歴史的な敗北への道のり
2021年からの急激な凋落
ホワイトソックスの凋落は、驚くほど急激でした。
わずか3年前の2021年シーズン、チームは93勝を挙げてアメリカン・リーグ中地区を制覇。
しかし、その後の成績は右肩下がりで、2022年に81勝、2023年に61勝と低迷。
そして2024年、9月28日時点で39勝121敗という惨憺たる成績に沈んでしまいました。
2024シーズンの悪夢
2024年シーズンは、開幕からつまずきました。
最初の25試合で3勝22敗という、フランチャイズ史上最悪のスタートを切りました。
5月と6月にはそれぞれ9勝を挙げましたが、7月と8月を合わせてもわずか7勝。
8月5日には21連敗を喫し、1988年以来の21試合以上の連敗を記録するチームとなりました。
記録更新の瞬間
最後の抵抗
興味深いことに、ホワイトソックスは記録更新の直前、ロサンゼルス・エンゼルスとの3連戦を見事に3連勝。
ホームでのシーズン最終戦を勝利で飾り、一時は記録更新を回避できるかに見えました。
運命の一戦
9月27日、デトロイトでの試合。
ホワイトソックスのエース、ガレット・クロシェットが4回を無失点に抑える好投を見せましたが、5回にジャレッド・シャスターが2失点。
6回にザック・デローチのソロホームランで1点を返しましたが、7回に2点を追加され、最終的に4-1で敗れました。
記録の意味と影響
MLBにおける「負け」の意味
MLBでは、1シーズン162試合を戦います。
そのうち121試合を落とすということは、勝率にして.253という驚異的な低さです。
野球というスポーツにおいて、これほどの敗北を重ねることは、単なる不運や一時的な不調では説明がつきません。
チーム構造の問題
ホワイトソックスの問題は、攻撃面に顕著に表れています。
チームは打率、出塁率、長打率など、ほぼすべての打撃指標でリーグ最下位に甘んじています。
特に、高額契約を結んだアンドリュー・ベニンテンディの不振(打率.228、OPS.690)や、かつてMVP候補だったルイス・ロバート・ジュニアの成績低下(打率.227、OPS.666)は、チームの苦境を象徴しています。
組織の責任
8月にはペドロ・グリフォル監督が解任されましたが、これは単なる監督の問題ではありません。
フロント、スカウティング、育成システムなど、組織全体の見直しが必要でしょう。
この記録が野球界に与える影響
「タンキング」への警鐘
近年、MLBでは将来のドラフト権獲得のために意図的に弱いチーム編成をする「タンキング」が問題視されています。
ホワイトソックスの121敗は、タンキングの行き過ぎた結果とも言えるでしょう。
この記録は、リーグ全体にタンキングの危険性を警告する役割を果たすかもしれません。
ファンの忠誠心の試練
驚くべきことに、ホワイトソックスのファンは最後まで熱心にチームを応援し続けました。
エンゼルス戦では大勢のファンがスタジアムに詰めかけ、チームの健闘を見守りました。
しかし、これほどの敗北の連続は、どんなに熱心なファンの忠誠心も試すことでしょう。
再建への道筋
ホワイトソックスは今後、チーム再建に向けて大きな決断を迫られます。
ルイス・ロバート・ジュニアやガレット・クロシェットのトレードの可能性、ヨアン・モンカダの2500万ドルのクラブオプションの行使など、重要な決断が待っています。
MLB史上の「負けチーム」
1962年ニューヨーク・メッツ(40勝120敗)
拡張チームとして参入1年目のメッツは、「愛すべき敗者」として知られています。
監督のケーシー・ステンゲルの「ここには野球のできる奴は誰もいないのか?」という名言を残しました。
2003年デトロイト・タイガース(43勝119敗)
アメリカン・リーグ記録の119敗を喫しましたが、その3年後の2006年にはワールドシリーズに進出。
1899年クリーブランド・スパイダース(20勝134敗)
近代野球(1900年以降)の記録には含まれませんが、史上最低勝率.130を記録しています。
まとめ
シカゴ・ホワイトソックスの121敗は、単なる数字以上の意味を持ちます。
これは、チーム運営の失敗、タレント発掘・育成の問題、そして現代野球における勝利至上主義の行き過ぎを示す象徴とも言えるでしょう。
しかし同時に、この記録は再生の機会でもあります。ホワイトソックスは今、チーム全体を根本から見直し、新たな方向性を見出す絶好のチャンスを得ています。
野球ファンとしては、この歴史的な敗北がホワイトソックス、そしてMLB全体にとって、より良い未来への転換点となることを願わずにはいられません。