はじめに
2024年9月9日、アメリカの名優ジェームズ・アール・ジョーンズ氏が93歳で亡くなりました。
彼の代理人バリー・マクファーソン氏によると、ジョーンズ氏は家族に囲まれて月曜日の朝に息を引き取ったとのことです。
半世紀以上にわたる輝かしい俳優キャリアを持つジョーンズ氏ですが、特に彼の特徴的な低音ボイスは、映画史に残る重要なレガシーとなるでしょう。
ジェームズ・アール・ジョーンズ氏の生涯
困難な幼少期から俳優への道
1931年1月17日、ミシシッピ州で生まれたジョーンズ氏は、幼少期から吃音に悩まされていました。
6歳から14歳までほとんど言葉を発することができなかったという彼が、どのようにして世界的に有名な声の持ち主になったのか、その道のりは驚くべきものです。
高校時代、英語教師のクラウチ先生との出会いが転機となりました。
ジョーンズ氏が密かに詩を書いていることを知った先生は、「言葉をそれほど好きなら、声に出して言えるはずだ」と彼に挑戦しました。
クラスの前で自作の詩を暗唱するよう促されたジョーンズ氏は、この経験を通じて言葉を取り戻し、芸術の道を志すきっかけを得たのです。
ブロードウェイでの成功
1957年、ジョーンズ氏はブロードウェイデビューを果たします。
その後、シェイクスピア作品を中心に数々の舞台に出演し、演技力を磨いていきました。
1967年には、ワシントンD.C.のアリーナ・ステージで上演された「グレート・ホワイト・ホープ」の主演に抜擢されます。
この作品は後にブロードウェイに進出し、ジョーンズ氏は1969年にトニー賞主演男優賞を受賞。
さらに1970年には、同作品の映画化でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、シドニー・ポワチエに次いで2人目の黒人ノミネート俳優となりました。
ダース・ベイダーの声として
スター・ウォーズでの活躍
ジョーンズ氏の名を世界中に知らしめたのは、何と言っても「スター・ウォーズ」シリーズでのダース・ベイダー役でしょう。
1977年の「新たなる希望」で初めてベイダーの声を演じて以来、「帝国の逆襲」「ジェダイの帰還」と続編でも同役を務めました。
Thank you for everything, James.
— Star Wars (@starwars) September 10, 2024
A statement from George Lucas and Lucasfilm: https://t.co/ieEdG0k5zY pic.twitter.com/8L99EeNwuU
興味深いのは、ジョーンズ氏が最初の映画で9,000ドル(当時のレートで約2,884ポンド)しか報酬を受け取っていなかったことです。
彼は当初、この仕事を単なる特殊効果の一部と考え、クレジットさえ望んでいませんでした。
しかし、映画が大ヒットを記録すると、周囲の勧めもあってクレジットを受け入れることになりました。
ダース・ベイダーの魅力
ジョーンズ氏の深く響く声は、ダース・ベイダーというキャラクターに圧倒的な存在感を与えました。「I am your father(私が、お前の父親だ)」という有名なセリフは、映画史に残る名場面となりました。
ジョーンズ氏自身も、「あの神話の一部になれて嬉しい」と語っています。
彼の声がダース・ベイダーに与えた影響は計り知れません。
物理的な姿はデイビッド・プラウズ氏が演じていましたが、ジョーンズ氏の声があってこそ、ダース・ベイダーは真の恐怖の対象となり得たのです。
多彩な声の仕事
ムファサ役での活躍
ジョーンズ氏の声の魅力は、ダース・ベイダーだけにとどまりません。
1994年のディズニー映画「ライオン・キング」では、主人公シンバの父親ムファサ役を演じ、深い愛情と威厳を兼ね備えたキャラクターを見事に表現しました。
2019年の実写版リメイクでも同役を務め、世代を超えて愛されるキャラクターとなりました。
その他の声の仕事
CNNの「This is CNN」というタグラインも、ジョーンズ氏の声で知られています。
また、「ザ・シンプソンズ」にゲスト出演したり、「セサミストリート」の初期エピソードに登場したりと、テレビでも幅広く活躍しました。
ジェームズ・アール・ジョーンズ氏の遺産
受賞歴
ジョーンズ氏の功績は、数々の賞によって称えられてきました。
3度のトニー賞、2度のエミー賞、グラミー賞を受賞し、2011年には名誉アカデミー賞を授与されています。
これらの賞は、彼の俳優としての才能と、声優としての卓越した能力の両方を評価したものと言えるでしょう。
後世への影響
ジョーンズ氏の声は、単なる仕事以上の意味を持っていました。
彼は自身の声について、「私の声は貸し出すことはできても、私の支持は売り物ではない」と語っています。
この言葉は、彼が自身の声の力を十分に認識し、それを責任を持って使用していたことを示しています。
映画界の反応
ジョーンズ氏の訃報を受け、映画界からは多くの追悼の声が寄せられています。
「スター・ウォーズ」でルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルは、「RIP Dad(安らかに眠れ、父上)」と投稿し、ブロークンハートの絵文字を添えました。
俳優のコールマン・ドミンゴは
「ありがとう、ジェームズ・アール。すべてのマスター・オブ・クラフトに。私たちはあなたの上に立っています。安らかに」
とSNSに投稿しました。
「ライオン・キング」の共同監督ロブ・ミンコフの妻クリスタル・ミンコフは、ジョーンズ氏とムファサの像が写った写真をInstagramに投稿し、
「安らかに眠れ、ジョーンズさん。あなたは若い監督の夢を叶えてくれました。ロブのためにしてくれたすべてのことに感謝します。あなたの記憶は永遠に生き続けるでしょう」
とコメントしました。
ジェームズ・アール・ジョーンズ氏の代表作
- 「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2019):ダース・ベイダー役(声)
- 「ライオン・キング」(1994, 2019):ムファサ役(声)
- 「フィールド・オブ・ドリームス」(1989):テレンス・マン役
- 「カミング・トゥ・アメリカ」(1988):ジャッフィ・ジョッファー国王役
- 「コナン・ザ・グレート」(1982):サルサ・ヴァルサ役
まとめ
ジェームズ・アール・ジョーンズ氏の死は、映画界にとって大きな損失です。
彼の深く響く声は、数々の名キャラクターに命を吹き込み、観客の心に深く刻まれました。
吃音に悩まされた少年が、世界的に有名な声の持ち主になるまでの道のりは、多くの人々に勇気と希望を与えるものでしょう。
ジョーンズ氏の遺産は、彼が演じたキャラクターたちとともに、永遠に生き続けるでしょう。
ダース・ベイダーの「フォースの力」を感じさせる声や、ムファサの愛情深く威厳のある声は、これからも私たちの記憶に残り続けることでしょう。
彼の死は一つの時代の終わりを告げるものかもしれません。
しかし、ジェームズ・アール・ジョーンズ氏が映画界に与えた影響は、これからも長く続いていくことでしょう。
彼の声は、まさに不滅のレガシーとなったのです。