アメリカで乳牛から鳥インフルエンザが見つかる – 政府が乳牛の検査を義務化|日本の牛乳は?

アメリカ政府が乳牛の鳥インフルエンザ検査を義務化したことで、乳業界に大きな影響が出そうです。これまで任意だった検査が必須になり、乳牛の移動にも制限がかかることから、生産や流通に支障が出る可能性があります。

一方で、人の健康への影響は小さいとされていますが、消費者の不安も高まっています。乳業界はどのように対応していくのでしょうか。

はじめに

最近、アメリカの乳牛でインフルエンザウイルスの感染が確認され、乳生産の減少や食欲低下などの問題が発生しています。

さらに、一部の殺菌乳からもウイルスの断片が検出されたことで、消費者の不安が高まっています。この問題に対して、政府機関が迅速に対応に乗り出しています。

乳牛のインフルエンザ感染

アメリカでは、2024年4月1日に、テキサス州の酪農場で働く従業員がインフルエンザウイルスに感染したことが確認されました。この従業員は、同じ酪農場で飼育されていた乳牛と直接接触していたことから、乳牛からの感染が疑われています。

また、2024年4月25日には、連邦政府が州境を越えて移動する乳牛に対して、強制的な高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)検査を実施すると発表しました。これは、一部の乳牛からウイルスの断片が検出されたためです。

殺菌乳からのウイルス検出

2024年4月23日には、FDA(アメリカ食品医薬品局)が、一部の低温殺菌処理された牛乳からも鳥インフルエンザウイルスの粒子を検出したと発表しました。しかし、FDA は「そのような牛乳は有害ではない」と述べています。

一方、2024年4月25日には、テキサス州とカンサス州の酪農場から採取された未殺菌の生乳からも鳥インフルエンザウイルスが検出されたことが、当局によって報告されています。

鳥インフルエンザ検査の義務化

アメリカ農務省(USDA)は、4月24日、乳牛の鳥インフルエンザ(H5N1)検査を義務化すると発表しました。これまでは任意だった検査が、州間移動の際に必須となります。

検査の対象は搾乳中の乳牛全頭で、陽性反応が出た牛は移動が制限されます。

USDA担当者によると、この措置は鳥インフルエンザの感染実態を把握し、まん延を防ぐためです。これまでは酪農家の自主的な報告に頼っていたため、感染状況の全容が掴めていなかったと説明しています。

実際、3月末から8州の33の酪農場で鳥インフルエンザが確認されています。感染牛の乳は廃棄処分となりますが、健康な牛の乳は引き続き出荷されています。

牛乳への影響と安全性

FDAは、一部の市販牛乳からウイルスの断片を検出したと発表しました。ただし、これらのウイルスは不活化されており、人の健康に影響はないと説明しています。

一方で、生乳からウイルスが検出されたことから、生乳を飲用したり、未殺菌チーズを食べることには注意が必要だと指摘しています。

生乳を子牛の餌に使う場合も、必ず加熱処理をするよう呼びかけています。FDAは、牛乳の殺菌処理(パスタライゼーション)がウイルスを確実に不活化することを確認するため、検査を続けていると述べています。

これまでの知見では、殺菌処理された牛乳に感染リスクはないとしていますが、念のため慎重に調査を進めるとしています。

酪農家への影響と対応

鳥インフルエンザの感染が確認された酪農場では、症状のある牛の乳が廃棄処分となっています。

症状のない牛の乳は出荷できますが、州間移動には陰性証明が必要になります。

また、感染牛の予後も懸念されています。症状のある牛の多くは回復しているものの、長期的な影響が心配されているためです。

酪農業界団体は、この事態を「深刻な危機」と受け止めています。生産コストの増加や、消費者の不安による需要減少など、酪農家経営に大きな影響が出る可能性があると警鐘を鳴らしています。

人への感染リスクは低い

これまでのところ、鳥インフルエンザに感染したのは酪農場の作業員1人のみで、その他22人が検査を受けたものの陰性でした。CDC(疾病予防管理センター)は、一般の人への感染リスクは低いと判断しています。

ただし、ウイルスが牛に適応し、人への感染力が高まる可能性は否定できません。

実際、カンザス州の1頭の牛からは、ウイルスの遺伝子変異が確認されたと報告されています。

このため、FDAとCDCは、発症牛との接触者や、下水モニタリングなど、感染経路の徹底調査を進めています。また、ワクチン開発の検討も始まっているとのことです。

日本の牛乳は大丈夫?

日本の牛乳・乳製品の需給状況

日本の総乳製品需要は1,220万トン(生乳換算)で、そのうち840万トンが国内生産、380万トンが輸入されています。

飲用乳製品の需要は全体の40%を占めており、これらは全て国内生産の生乳で賄われています。

一方、チーズやスキムミルクパウダーなどの乳製品は多くが輸入されており、乳製品全体の自給率は59%となっています。

乳製品の輸入

日本は元々乳製品の輸入が多かったため、乳製品の輸入枠が設定されています。現在の輸入枠は137,000トン(生乳換算)となっています。

日本の牛乳の品質管理

日本の乳業メーカーは、徹底した衛生管理と殺菌処理を行っており、ウイルスなどの除去率は99.999%以上です。

国内の乳牛に対しては定期的な健康診断が義務付けられており、異常が見つかれば出荷停止などの措置がとられています。酪農家では、飼育環境の消毒や従業員の健康管理など、ウイルス感染予防対策が徹底されています。

以上のように、日本の牛乳・乳製品は、国内生産と適切な輸入管理により、安定供給と高い品質が確保されています。消費者の皆さんも、

これらの取り組みにより、日本の牛乳は安全性が高いと言えるでしょう。

ただし、アメリカでの感染症の流行を考えると、油断は禁物です。日本の乳業界も、常に最新の情報を収集し、迅速な対応ができる体制を整えておく必要があります。消費者の皆さんも、正しい情報を得ながら、安心して日本の牛乳を楽しんでいただきたいと思います。

まとめ

アメリカ政府は、乳牛の鳥インフルエンザ検査を義務化しました。酪農業界に大きな影響が出そうです。

一方で、牛乳の安全性については、殺菌処理によりウイルスは不活化されると確認されています。ただし、生乳の取り扱いには引き続き注意が必要です。

人への感染リスクは低いとされていますが、ウイルスの変異による感染力の高まりも懸念されています。

当局は感染経路の解明と、ワクチン開発に取り組んでいます。この事態が長期化すれば、酪農家の経営悪化や、牛乳・乳製品の価格高騰など、消費者にも影響が及ぶ可能性があります。

関係者全体で、この危機に立ち向かっていく必要があるでしょう。

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