アディダスはカニエ・ウェストとの厳しいパートナーシップから脱却したことで、今年は7億ユーロ(約598億円)の利益を見込んでいると発表

スポーツブランドのアディダス(adidas)は、ラッパーのカニエ・ウェストとの提携関係解消の後遺症から脱却することに成功しました。その結果、同社は2024年に7億ユーロ(約598億円)の利益を上げる見通しを立てています。

ウェストの反ユダヤ的な発言を受けて、同社は2022年11月に突然、提携関係を終了させました。その後、アディダスは迅速に対応し、提携によって立ち上げたブランド「Yeezy」のストックの処分に乗り出しました。

その結果、同社の業績は予想以上に好転しつつあります。本記事では、アディダスのこの取り組みの詳細と、今後の展望について見ていきます。

カニエ・ウェストとの提携関係

2014年、アディダスはラッパーのカニエ・ウェストとのコラボレーションを開始しました。

Yeezyブランドの立ち上げから、その後の展開まで、両者は10年近くにわたって緊密な関係を築いてきました。Yeezyは、アディダスの売上の約10%を占める重要なブランドとなっていたました。
ウェストは、Yeezyの広告塔としても活躍し、アディダスのブランド価値向上に大きく貢献してきました。

しかし、2022年11月、アディダスはウェストとの提携関係を突然終了させた。その理由は、ウェストの反ユダヤ的な発言や白人至上主義的なスローガンでした。

契約解除による直接的な損失

アディダスにとって、ウェストとの提携関係の終了は大きな痛手となりました。

同社は、この契約解除によって2億5000万ユーロ(約368億円)の損失を被ると発表しています。長年にわたって築き上げてきたYeezyブランドの売上が一気に失われたのでした。

アディダスのCEOカスパー・ロースティング氏は、「ウェストとの提携関係を終了することは非常に困難な決断でした」と述べています。

ブランドイメージの毀損

ウェストの問題行動は、アディダスのブランドイメージにも深刻な打撃を与えました。

同社は、ウェストの反ユダヤ的な発言や白人至上主義的なスローガンが、アディダスの多様性や包括性、相互尊重といった価値観に反するものだと指摘しています。

特に深刻だったのは、ユダヤ人コミュニティからの批判でした。アディダスは「ユダヤ人に対する憎しみを助長するような発言は決して許容できない」と明確に否定しましたが、ウェストとの提携関係を長年続けてきたことで、ブランドの信頼を失墜させてしまいました。

広告宣伝費の損失

さらに、アディダスはウェストが「誤って処理した」とされる7500万ドル(約103億円)の広告宣伝費の返金を求めています。

ウェストは長年にわたって、アディダスのYeezyブランドの広告塔として活躍してきました。しかし、ウェストの問題行動によって、アディダスはこれらの広告費を無駄にしてしまったのです。

事業パートナーの離反

ウェストの問題行動は、アディダスだけでなく、ウェスト自身の事業にも大きな影響を及ぼしました。ウェストの代理人であったCAA事務所や、長年のレコード会社Def Jamも、ウェストとの関係を解消しています。

これらの事業パートナーが次々とウェストから距離を置いたことで、ウェスト自身の活動基盤が大きく揺らいでいます。アディダスにとっても、これらのパートナー企業との関係が悪化したことは大きな痛手でした。

アルゼンチンペソ下落の影響

アディダスは、カニエ・ウェストとの提携終了による影響だけでなく、アルゼンチンペソの下落の影響も受けていることが明らかになりました。

同社は、アルゼンチン代表チームのユニフォームメーカーでもあることから、同国の通貨下落の影響を大きく受けたと説明しています。具体的には、アルゼンチンでの売上が大幅に減少したことが、アディダスの業績悪化の一因となっているということです。

同国は同社にとって重要な市場の一つであり、通貨下落によって現地での収益が大きく圧迫されたのでした。

同様の影響は、アディダスの競合他社であるプーマにも及んでいます。プーマも、アルゼンチンの通貨下落が自社の財務諸表に悪影響を及ぼしたと発表しています。

アディダスの対応と今後の展望

このように、アディダスはウェストとの提携終了によって多大な損害を被りましたが、同社は迅速に対応を取ってきました。

まず、ウェストとの提携関係を完全に清算することを決めました。2月には、残りのYeezyスニーカーを少なくとも原価で販売すると発表しています。そして先日、アディダスは2024年には7億ユーロ(約598億円)の利益を上げると予想しています。

これは当初の予想よりも2億ユーロ(約170億円)も多い。第1四半期の営業利益が3億3600万ユーロと大幅に改善したことや、Yeezyの追加販売で1億5000万ユーロの収益を上げたことが、この業績予想の好転につながったといいます。

残りのYeezyストックについても、今年後半に約2億ユーロで処分する予定です。ただし、これ以上の利益は見込めないとしています。

つまり、アディダスはウェストとの提携終了による大きな痛手を受けたものの、迅速な対応と、Yeezyブランドの清算によって、ある程度の損失を抑えることができたと言えるでしょう。

まとめ

アディダスにとって、カニエ・ウェストとの提携終了は大きな試練となりました。

長年にわたって築き上げてきたYeezyブランドの失墜は、同社の業績に深刻な影響を及ぼしました。しかし、アディダスは迅速に対応し、Yeezyの清算によって一定の損失抑制に成功し、前向きな姿勢を示しています。今後は、ブランドイメージの回復と、新たな成長戦略の構築が重要な課題となることでしょう。

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