中国北西部・甘粛省天水市の私立幼稚園「培新幼稚園」で、給食の装飾に使われた食用不可の塗料が原因で、233人の園児が鉛中毒となる衝撃的な事件が発生しました。
検査の結果、食品からは基準値の2,000倍を超える鉛が検出され、8人が逮捕される事態に発展しています。
本記事では、事件の経緯や背景、保護者や社会の反応、専門的な分析を交えながら、中国の食の安全問題について深く掘り下げます。
https://www.bbc.com/news/articles/cy4n7wn8l58o
事件の全容と発覚の経緯
2025年7月、甘粛省天水市の私立幼稚園「培新幼稚園」で、251人中233人の園児が血中鉛濃度の異常上昇で病院に搬送されました。
原因は、給食の赤ナツメ蒸しケーキやソーセージ入りコーンロールの装飾に、食用不可と明記された塗料が使用されていたことでした。
- 検出された鉛濃度は、赤ナツメケーキで1052mg/kg、コーンロールで1340mg/kg。
- 中国の食品安全基準は0.5mg/kgであり、2,000倍以上の鉛が含まれていました。
- 園長の指示で厨房スタッフがネットで塗料を購入し、食材に混ぜていたことが警察の調査で判明しています。
事件発覚後、園長や主要投資家、厨房スタッフら8人が「有毒有害食品の製造」の疑いで逮捕されました。
被害の実態と健康への影響
鉛中毒は、特に幼児の発達や健康に深刻な影響を及ぼします。
保護者の証言によると、子どもたちは腹痛、脚の痛み、食欲不振、脱毛、歯の変色、口臭などの症状を訴えていました。
- ある父親は「息子の肝臓や消化器への長期的な影響が心配」とBBCに語っています。
- 症状を訴えた時期は2024年からで、複数の保護者が「3月ごろから体調不良が続いていた」と証言しています。
- 現在、201人以上が入院治療中で、全家庭に対して無料の医療支援が提供されています。
鉛中毒(Lead poisoning)は、神経系や内臓、特に子どもの発達に不可逆的な障害をもたらすため、早期治療と長期的な経過観察が不可欠です。
SNSとインターネット上の反応
事件発覚後、中国国内のSNSやインターネット上では激しい議論と怒りが巻き起こりました。
- 「子どもを守れない社会に未来はない」「食の安全はどこへ行ったのか」といった投稿がX(旧Twitter)やWeiboで拡散。
- 一部の保護者は「当局や園の発表する検査結果の信頼性」に疑問を呈し、独自に再検査を求める声も上がっています。
- 「2008年のメラミン混入粉ミルク事件」など、過去の食品安全スキャンダルを引き合いに出し、「中国の食の安全管理は本当に進歩したのか」との批判も多く見られます。
SNSでは事件の経緯や現場映像、保護者の証言がリアルタイムでシェアされ、社会全体の不信感と危機感が一気に高まりました。
食の安全管理の課題と今後の展望
今回の事件は、「公的な食品安全監督体制の不備」を浮き彫りにしました。
天水市の市長は「監督体制の抜け穴と課題が明らかになった」と述べ、再発防止策の徹底を表明しています。
- 中国では過去にも「有毒ミルク事件」「カビパン事件」など、学校給食に関する集団食中毒が相次いでいます。
- 事件後、食品の仕入れ先や成分表示の厳格化、厨房への監視カメラ設置、定期的な抜き打ち検査などの強化策が求められています。
一方で、「民間幼稚園の経営体制やコスト削減圧力」が背景にあるとの指摘もあり、根本的な解決には業界全体の意識改革と法規制強化が不可欠です。
専門家の見解と社会的インパクト
専門家は、「鉛中毒は一度発症すると神経障害や学習障害など長期的なリスクが高い」と警鐘を鳴らしています。
また、今回の事件は中国社会全体の食の安全文化に大きな揺さぶりをかけました。
- 食品添加物や装飾用素材の厳格な管理、教育現場での安全教育の徹底が急務です。
- 保護者や市民の「監視の目」が強まることで、今後の食の安全行政に対する社会的プレッシャーも高まるでしょう。
過去の類似事件と食の安全改革
中国では過去にも学校給食を巡る深刻な事件が発生しています。
- 2019年、河南省の幼稚園で教師が亜硝酸塩(発色剤)を混入し23人が中毒、うち1人が重体となりました。
- 2008年には「メラミン混入粉ミルク事件」で数十万人の乳児が被害を受け、社会に大きな衝撃を与えました。
これらの事件を受けて、中国政府は食品安全法の強化や学校給食の監督強化を進めていますが、現場レベルでの監視や倫理教育が依然として課題です。
まとめ
今回の培新幼稚園鉛中毒事件は、食の安全を根底から揺るがす深刻な社会問題です。
「見た目の美しさ」を優先した安易な判断が、子どもたちの健康と命を脅かしました。
今後、食品安全管理の徹底と教育現場の倫理意識の向上が強く求められます。
保護者や社会全体が「食の安全」への関心を高め、行政と連携して再発防止に取り組むことが、子どもたちの未来を守るために不可欠です。