宇宙生命の新たな兆し?―K2-18bに「生命のサイン」発見か

ハビタブルゾーンに位置する系外惑星K2-18bの大気から、地球では生命だけが生み出す分子「ジメチルスルフィド」検出の可能性。

宇宙生命探査の最新成果と今後の展望を詳しく解説します。

はじめに

「宇宙に生命は存在するのか?」――人類が長年抱き続けてきたこの問いに、ついに新たな希望の光が差し込みました。

2025年4月、イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームが、地球から約120光年離れた系外惑星K2-18bの大気中に、地球では生命活動によってのみ生成される分子「ジメチルスルフィド(DMS)」の兆候を発見したと発表しました。

この発見は、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による詳細な分光観測によって得られたものです。

しかし、これが本当に「生命の証拠」なのか、科学界では活発な議論が続いています。

本記事では、K2-18bの最新研究成果とその意義、今後の課題について、専門用語もわかりやすく解説します。

K2-18bとは?―「ハイシアン惑星」の有力候補

K2-18bは2015年に発見された「サブ・ネプチューン型」系外惑星で、地球の約2.6倍の半径と8.6倍の質量を持ちます。

この惑星は、赤色矮星(低温小型の恒星)の周囲を33日周期で公転しており、ちょうど「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」に位置しています。

ハビタブルゾーンとは、水が液体として存在できる温度範囲にある領域のことです。

K2-18bが注目される理由は、2021年に「ハイシアン惑星(Hycean planet)」という新しい分類が提唱されたことにあります。

ハイシアン惑星とは、「水素(Hydrogen)」と「海洋(Ocean)」を組み合わせた造語で、水素に富んだ大気と広大な水の海を持つとされる理論上の惑星です。

K2-18bはその代表的な候補とされており、地球型惑星とは異なる環境で生命が存在する可能性を示しています。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大気分析

K2-18bの大気観測には、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が大きな役割を果たしました。

この望遠鏡は、惑星が主星の前を通過する際に、惑星の大気を通過した星の光を分光分析することで、どのような分子が存在するかを特定できます。

JWSTによる観測で、K2-18bの大気にはメタン(CH₄)や二酸化炭素(CO₂)などの炭素化合物が豊富に含まれていることが判明しました。

これらの分子の組み合わせや、アンモニア(NH₃)の不足は、「水素に富む大気と水の海が存在する」というハイシアン惑星モデルを支持するものです。

さらに注目されたのが、「ジメチルスルフィド(DMS)」という分子の存在を示唆するシグナルです。

DMSは地球では主に海洋の植物プランクトンやバクテリアによって生成されるため、「生命由来分子(バイオシグネチャー)」の一つと考えられています。

ジメチルスルフィド検出の意義と限界

今回の観測で得られたDMSのシグナルは、地球大気中の数千倍にも達する濃度が推定されました。

これは、もし生命由来であれば、K2-18bの海洋が豊かな生態系を持っている可能性を示唆します。

しかし、科学的な確証にはまだ至っていません。

現在の検出結果は「3シグマ(99.7%)」の信頼度であり、科学界が「発見」と認めるために必要な「5シグマ(99.99999%)」には届いていません。

また、DMSが生命以外のプロセス(たとえば地質活動や彗星由来)で生成される可能性も完全には否定できません。

実際、DMSは彗星でも検出されたことがあり、「DMS=生命」とは言い切れないのです。

さらに、K2-18bのような水素リッチな大気では、地球と同じ分子が同じ意味を持つとは限らず、生命の有無を判断するためには多角的な検証が必要です。

科学界の評価と今後の展望

今回の発表は「宇宙生命探査の歴史的な一歩」として大きな注目を集めていますが、専門家の間では慎重な意見が多く見られます。

ケンブリッジ大学のマドゥスダン教授は「1~2年以内に決定的な証拠が得られる可能性がある」と述べており、今後の追加観測に期待が集まっています。

一方で、「DMSの検出は弱い証拠に過ぎない」とする研究者や、「DMSが本当に存在するのか、またその由来は何か」という根本的な疑問を投げかける声もあります。

科学界では、以下の2点が特に重視されています。

  • シグナルが本当にDMSによるものかどうかの再検証
  • DMSが生命以外のプロセスで生成された可能性の排除

今後は、JWSTのさらなる観測や、より高感度な分光器によるデータ取得、地上実験による理論モデルの検証など、多角的なアプローチが求められます。

ハイシアン惑星と宇宙生命探査の最前線

ハイシアン惑星とは?

ハイシアン惑星は、地球型惑星よりも大きく、厚い水素大気と広大な海を持つとされる新しい系外惑星のタイプです。

赤色矮星の周囲に多く存在すると考えられ、従来の「地球型生命観」を超えた多様な生命の可能性を示しています。

宇宙生命探査の今後

NASAや欧州宇宙機関(ESA)は、今後さらに高性能な宇宙望遠鏡を打ち上げ、ハビタブルゾーン内の惑星の詳細な大気分析を進める計画です。

今後10年で、生命の兆候を直接検出する技術が飛躍的に進歩すると期待されています。

まとめ

K2-18bの大気から生命由来分子の可能性が示唆された今回の発見は、宇宙生命探査の新たなマイルストーンとなりました。

確定的な証拠には至っていませんが、今後の観測と研究の進展によって、「宇宙に生命は存在するのか?」という人類最大の謎に一歩近づくことが期待されます。

今後も最新の宇宙探査ニュースに注目し、私たちの「宇宙における居場所」について考え続けていきましょう。

コメントする

CAPTCHA