米Bloomberg報道、Appleはヘッドセットより軽量なスマートグラスを優先へ
米AppleのMR(複合現実)ヘッドセット「Apple Vision Pro」の次世代機が、開発の存続すら危ぶまれる状況にあると報じられました。
米Bloombergの著名記者マーク・ガーマン氏は2026年9月27日のニュースレター「Power On」で、開発コード名「N224」と呼ばれる後継機が「生命維持装置につながれた状態(on life support)」にあると伝えています。
iPhone in Canada、AppleInsider、VR.orgなどが伝えた報道内容をもとに、Vision Proシリーズの現状と今後を整理します。
後継機「N224」とは何か
報道によると、AppleのVisionチームは現在、全面的に刷新したヘッドセット「N224」を開発しており、エンジニアが4種類の設計案を検討しています。
主な案は次のとおりです。
- 現行機の卵形デザインを維持しつつ、プラスチックやチタンなど軽い素材で軽量化する案
- 計算処理とバッテリーを本体から切り離し、ケーブルでつないだ別体の「パック」に収める案
後者は、Metaが最近発表した方式に近い設計とされます。
しかしApple社内の一部幹部は、別体パック方式は使い勝手を損なうとして反対しており、あくまで一体型を望んでいると伝えられています。
もっとも現行のVision Proも、約353グラムの外付けバッテリーをケーブルでつないで持ち歩く設計です。
ガーマン氏は、N224が仮に製品化されても発売は2028年末から2029年初めになるとの見通しを示しています。
中止された計画が相次ぐ
今回の報道で目を引くのは、これまでに検討されてきた複数の派生機が、すでに中止されているという点です。
- N107:処理をMacに肩代わりさせて小型化を狙ったモデル
- N100(Vision Air):部品を外部パックに移して軽量化を図ったモデル
- N109:処理性能を抑えた、より軽く安価なVision Pro
このほか、Mac Studioほどの大きさのワイヤレス周辺機器も、デザインチームの判断で見送られたとされます。
「軽く・安く」を目指した案が次々と消えている事実は、ヘッドセットを大衆向け製品に仕立てることの難しさを物語っています。
「月に1台売れれば幸運」という販売不振
Vision Proは2024年2月に米国で発売され、日本でも同年6月に59万9,800円からという価格で登場しました。
2025年10月には処理チップをM5に強化した改良版も投入されましたが、販売は伸び悩んでいます。
報道によれば、小売店の従業員からは「月に1台売れれば幸運」という声も上がっており、Appleは一般消費者より企業などの業務用途に軸足を移しているとされます。
組織面でも変化が起きています。
Vision Proのハードウェア開発を率いていたポール・ミード氏は、役職が格下げされたのち、2026年6月にOpenAIへ移籍しました。
現在はフレッチャー・ロスコフ氏がVisionのハードウェアを統括していますが、経営陣の直下ではなく、副社長のトム・マリーブ氏の下に置かれているとされ、社内での優先度の低下を示すものと受け止められています。
本命はスマートグラスへ
Appleがヘッドセットの代わりに力を入れているのが、眼鏡型のスマートグラスです。
ガーマン氏によると、Appleは2027年後半に、音声・カメラ・AI機能を備えながらディスプレイは持たないスマートグラスを投入する計画で、ディスプレイ搭載版はその後に続くとされます。
報道によれば、ジョン・ターナスCEOは社内でヘッドセットを、単体で動くAR(拡張現実)グラスへの「足がかり」と位置づけているといいます。
この分野ではMetaがRay-Banブランドのスマートグラスで先行しており、Appleにとっては、重く高価なヘッドセットよりも日常的に身につけられる眼鏡型のほうが勝算がある、という判断が透けて見えます。
補足:報道の信頼性と見方の違い
ガーマン氏はApple関連の報道で高い的中率を持つ記者として知られていますが、今回の内容はAppleが公式に認めたものではありません。
また、アナリストのミンチー・クオ氏は2026年6月の時点で、Vision Proの後継機はAppleの製品計画から完全に外れたと報告していました。
一方でガーマン氏の報道は、少なくとも設計検討は続いていることを示しており、両者の見方には温度差があります。
いずれにしても、Vision Pro後継機の早期登場は期待しにくい状況です。
現行機の購入を検討している人は、当面は現行モデルがVisionシリーズの最新機種であり続ける可能性が高いことを前提に判断するとよいでしょう。
まとめ
Bloombergのガーマン氏によると、Apple Vision Proの後継機「N224」は4種類の設計案を検討中ながら、開発は「生命維持装置」状態にあり、発売されても2028年末以降になる見通しです。
派生機の中止や開発責任者の移籍、販売不振が重なり、Appleの関心は2027年後半に予定されるスマートグラスへと移りつつあります。
「空間コンピューティング」を掲げて登場したVision Proが、眼鏡型デバイスへの橋渡し役で終わるのか、それとも巻き返しがあるのか、今後の動向が注目されます。