アウター・バイオサイエンシズとは?レディー・ガガ極秘関与、皮膚1カ月培養しAI開発

レディー・ガガが秘密裏に共同創業した化粧品AI企業の全貌

生きた人間の皮膚を体外で1カ月間も培養し、AIで新しい化粧品成分を発見する――そんな極秘プロジェクトが表舞台に姿を現しました。

手掛けているのは、歌手レディー・ガガのパートナーとして知られるマイケル・ポランスキー氏です。

米メディア「テッククランチ」(TechCrunch)が、同氏が創業したスタートアップ「アウター・バイオサイエンシズ」(Outer Biosciences)の実態を報じました。

同社は2022年の創業以来、その存在をほとんど公にしてこなかった知る人ぞ知る企業です。

今回の報道では、独自の生体組織技術に加え、ガガ自身が共同創業者として関わっていたという意外な事実も明らかになりました。

「生きた皮膚」を1カ月維持する技術とは

皮膚科学の分野では通常、体外に取り出した皮膚組織は数日で機能を失うとされてきました。

しかしアウター・バイオサイエンシズは、独自の培養技術によって皮膚組織を最大1カ月間、生きた状態のまま維持することに成功したといいます。

これは業界標準とされる期間の約5倍にあたる長さです。

組織の提供元は主に美容整形手術で摘出され、本来は廃棄される予定だった皮膚です。

提供は「バイオバンク」(研究目的で人体組織を収集・保管する非営利機関)を通じて行われています。

施設内審査委員会(IRB、被験者保護のための倫理審査機関)の監督のもと、ドナーの同意を得た上で調達されているといいます。

主要な提供元は、米国立衛生研究所(NIH)などから資金提供を受ける「全米疾病研究交換機構」と「協力的ヒト組織ネットワーク」の2団体です。

背景には、化粧品の安全性試験における動物実験の規制強化という潮流があります。

欧州連合(EU)ではすでに化粧品への動物実験が全面的に禁止されており、米国でも一部の州で同様の規制が広がりつつあります。

従来の代替手段だった動物モデルや簡易的な細胞培養、人工的な「オルガノイド」(幹細胞から作る簡易臓器モデル)では、実際のヒトの皮膚反応を正確に再現できないという限界がありました。

生きたヒト組織をより長く維持できれば、紫外線ダメージや加齢、炎症といった複雑な生体反応をより現実に近い形で観察できるようになります。

AIが新成分を発見する仕組み——6週間ごとに候補を生成

同社の核心は、培養した生きた皮膚に紫外線(UVB)で人工的にダメージを与え、その後の炎症反応や回復過程を分子レベルで追跡する点にあります。

得られた膨大なデータをAIモデルに学習させることで、未検証の化学物質がどのような効果を持つかを予測できるようにしているのです。

ポランスキー氏によれば、AIが予測した候補は実際に生きた組織で検証され、その結果が再びモデルにフィードバックされる仕組みになっているといいます。

この手法により、同社は約6週間ごとに新たな有望候補を生み出しています。

現在は6件の主要候補と、数十件の追加候補を抱えているとのことです。

米国で承認されている市販薬(OTC)向けの皮膚科用成分は、13分類・120~130種類にとどまります。

科学的根拠のある化粧品成分も、全体で約200種類しか存在しないとされています。

動物実験や単純な細胞培養、人工的な臓器モデルである「オルガノイド」は、人間の皮膚の挙動を十分に再現できないという課題があります。

同社はその代替として、生きたヒト組織にこだわっているといいます。

ポランスキー氏は、生物学の研究がソフトウェア開発に比べて進歩が遅い現状に強い問題意識を持っていたと語っています。

人体で直接実験することは倫理的に許されないため、これまでは不完全な代替手段に頼らざるを得なかったという事情がありました。

AIモデルと生きた組織による検証を繰り返す「自己強化型」の仕組みは、新薬や新素材の開発でしばしば数年単位かかる候補選定のサイクルを大幅に短縮できる可能性があります。

従来型の化粧品成分開発が数年がかりだったことを踏まえると、6週間という候補生成サイクルの速さは際立っています。

なぜ隠していたのか——レディー・ガガの意外な関与

今回最大の驚きは、歌手レディー・ガガ(本名ステファニー・ジェルマノッタ氏)が同社の共同創業者であり、取締役を務めていたという事実です。

ポランスキー氏は「これは彼女のアイデアだった」と明かしています。

一方で「ステファニーが関わっていると知られれば注目が集まりすぎる」との理由から、これまで彼女の名前は意図的に伏せられてきたといいます。

同社は米マサチューセッツ州ケンブリッジ近郊を拠点とし、従業員数はわずか19人という小規模な組織です。

ポランスキー氏はハーバード大学で応用数学とコンピューターサイエンスを学んだ人物です。

著名投資家ショーン・パーカー氏の側近としてキャリアを積んだことでも知られています。

有名人が創業に関わるビジネスは、その知名度ゆえに過剰な期待や技術的な誇張への疑いを招きやすいという側面があります。

ポランスキー氏があえて共同創業者としてのガガの関与を隠してきた背景には、科学的な実力そのもので評価されたいという狙いがあったとみられます。

実際、ガガ氏は自身の化粧品ブランドを一代で軌道に乗せた実業家としての顔も持っており、単なる著名人の「箔付け」出資とは一線を画す存在といえそうです。

資金調達とビジネスモデル——製薬企業との提携も

アウター・バイオサイエンシズはこれまでに約2300万ドル(日本円で約34億円)を調達しています。

出資者にはウィング・ベンチャーズやイニシャライズド、ポランスキー氏自身が設立した投資会社ホークテイルなどが名を連ねています。

同社のビジネスモデルは、自社ブランドを立ち上げるのではなく、発見した成分を美容・製薬企業にライセンス供与または販売するというものです。

すでに製薬企業との共同研究も始まっており、一部のがん治療薬が引き起こす重い皮膚発疹の原因解明にも取り組んでいるといいます。

フィラデルフィアを拠点とする「ヴィヴォダイン」(Vivodyne)など、培養臓器モデルでAI創薬を目指す競合も登場しています。

生体組織とAIを組み合わせる分野そのものが、急速に投資家の注目を集めているのです。

資生堂や花王など日本の大手化粧品メーカーも近年、AIを使った成分開発や肌解析への投資を強めています。

自社ブランドを持たずライセンス提供に特化するアウター・バイオサイエンシズのモデルは、こうした大手メーカーにとって新たな技術調達先となる可能性もあります。

がん治療薬による皮膚副作用の研究のように、化粧品にとどまらず医薬品分野への応用が進めば、事業の裾野はさらに広がりそうです。

関連情報——レディー・ガガの化粧品ブランドとの接点

レディー・ガガはすでに自身の化粧品ブランド「ハウス・ラボズ」(Haus Labs)を展開しています。

従業員約70人を抱え、事業は好調に成長しているとされます。

アウター・バイオサイエンシズとハウス・ラボズは別会社ですが、事業の周辺領域で連携することもあるといいます。

ポランスキー氏は、ガガの世界ツアーで3機のジャンボ機を使う大規模な運営を統括した経験も持ちます。

これを「毎日世界を飛び回る200人規模のスタートアップ経営」に例えています。

米国では美容業界へのAI活用投資が急速に広がっており、今回の報道はその代表例の一つといえます。

アウター・バイオサイエンシズの共同創業メンバーには、最高科学責任者のキョンジン・ジャン氏や最高技術責任者のクリス・イノホサ氏、最高事業責任者のスタンリー・キング氏らも名を連ねています。

拠点であるマサチューセッツ州ケンブリッジ周辺は、米国有数のバイオテクノロジー企業集積地としても知られています。

まとめ——AIと生体組織の融合が示す化粧品開発の未来

生きた人間の皮膚を1カ月維持し、AIで新成分を発見するアウター・バイオサイエンシズの取り組みは、動物実験に頼ってきた化粧品・皮膚科学研究のあり方を変える可能性を秘めています。

著名人の秘密裏の関与という意外性も相まって、今後の資金調達や提携先の拡大が注目されます。

同社が生み出す成分が実際に製品化され、市場に登場する時期がいつになるのか、引き続き注視する必要がありそうです。

動物実験に依存しない生体組織×AIというアプローチが業界標準になっていくのか、今後の展開から目が離せません。

出典:
TechCrunch

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