中学2年、13歳のジョブズが作った手作り展示がオークションに
米カリフォルニア州の中学校で1968年に行われた理科の自由研究発表会で、当時13歳だったスティーブ・ジョブズが手作りした展示物が、Apple創業50周年を記念するオークションに出品されています。米RRオークションが主催する「Steve Jobs & the Computer Revolution」第2弾のセールで、9to5MacやCBSニュースが2026年8月に報じました。パーソナルコンピュータの巨人が生まれる10年近く前、少年ジョブズが電子回路にどう向き合っていたかを物語る一品として注目を集めています。
「シリコン制御整流器とは何か」——13歳の手作り展示の中身
出品されているのは、1968年2月29日の日付が入った縦81センチ(32インチ)のベニヤ板製展示パネルです。タイトルは「シリコン制御整流器(SCR、電流のオン・オフを電気信号で制御できる半導体素子)とは何か」。実際に動作する2つの回路と、手書きの回路図、10ページに及ぶレポートが一式で構成されています。
特に注目されているのが、ジョブズが審査員向けに残した操作メモです。展示の動かし方を説明したうえで、使用後は必ずコンセントを抜くようにと2度も念を押す注意書きが添えられており、当時から機器が熱を持ちやすいことを把握していた様子がうかがえます。RRオークションはこの品の落札予想額を2万ドル(約300万円)以上と見積もっていますが、原稿執筆時点でのオンライン入札額はまだ3000ドル未満にとどまっており、最終盤にかけて競り上がるとみられています。
同時出品される「創業秘話」の品々
今回のオークションにはジョブズ関連の品が全35点出品されており、科学展の展示以外にも創業初期を物語る資料が並びます。動作可能な1977年製Apple-1本体や、幻に終わった開発プロジェクトの試作機まで、Appleの歩みを裏付ける一次資料が一堂に会しているのが特徴です。
- 1976年、Apple創業直後に基板業者へ宛てた直筆サイン入り小切手(現在の入札額は約2万6620ドル、推定2万5000ドル以上)
- Appleの初代簿記担当者宛ての直筆サイン入り小切手(約3万8977ドル)
- ジョブズが個人所有していたApple名刺への手書きメモ付き資料(約1万1959ドル)
- NeXT(ジョブズがAppleを離れた後に設立した会社)名刺への手書きメモ(約2万6264ドル)
- 開発中止となった「幻のiPod」ことP68プロトタイプの試作機と、開発チーム由来の社内資料一式
- ジョブズが所有していたApple-1の木製ケース(約6666ドル)
- 1977年当時の稼働可能なApple-1本体(通称「ノイマーク」個体)
科学展の展示物やApple-1の木製ケースは実用品としての価値がほぼないにもかかわらず、いずれも推定額が数千〜数万ドル規模に設定されている点が興味深いところです。実用性ではなく、「ジョブズ本人が手を動かした痕跡」そのものに価値が見出されていることがわかります。特にNeXT時代の名刺のように、Appleを追放され再起を図っていた時期の品まで対象になっている点は、成功譚だけでなく挫折や再挑戦の過程も収集対象になっている表れといえます。
前回セールの結果が示す市場の過熱ぶり
今回は2部構成の第2弾にあたり、第1弾は2026年1月に開催され総額815万3074ドル(約122億円)を売り上げました。目玉となったApple創業直後の小切手(通し番号1番)は最終的に240万9886ドル(約3億6000万円)で落札され、Apple-1の試作用マザーボードは275万ドルに達しています。ほかにも1976年の銀行取引明細書が82万8569ドル、1977年のApple宣伝ポスターが65万9900ドル、蝶ネクタイでさえ11万3580ドルという値がつきました。
Apple社自体の時価総額は既に3兆ドルを超える規模まで成長していますが、その原点にあった500ドルの小切手や手作りの展示物にまで数百万円規模の値がつく現象は、企業の成功物語そのものが投資対象化していることを示しています。テック業界の黎明期を知る世代が経済的に成熟し、当時の「本物」を所有したいという需要が、コレクター市場全体を押し上げている構図といえるでしょう。
なぜ「少年時代の落書き」に値がつくのか
科学展の展示物が高額を呼ぶ背景には、単なる有名人グッズとは異なる文脈があります。ジョブズが電子工学に触れた最初期の記録である点、そして後に彼がスティーブ・ウォズニアックと出会い、電子回路の知識を土台にApple-1を生み出す物語の「起点」として位置づけられる点です。
美術品オークションでは著名画家の習作や初期作品に高値がつくことが珍しくありませんが、テック業界でも同様の構図が生まれつつあります。成功した起業家の「原点」を所有すること自体がステータスや投資になるという価値観が、Apple、ひいてはシリコンバレー全体の神話化と歩調を合わせて広がっている状況です。今後は他のテック創業者の学生時代の遺品にも、同様の市場が形成される可能性があります。
テック黎明期コレクター市場の広がり
こうした過熱ぶりはApple関連品に限った話ではありません。近年は稼働可能なApple-1本体単体でも数十万〜数百万ドルで取引される例が相次いでおり、テック黎明期の実機や資料を扱う専門オークションハウス自体が増えています。今回のセールで科学展の展示物や名刺のメモ書きといった「本来は捨てられていてもおかしくない紙くず」まで数百万円規模の資産として扱われていることは、コレクター市場がすでに「動作する名機」から「創業者個人の痕跡」へと対象を広げつつある段階にあることを示しています。日本国内ではまだこうした個人資料の取引市場は未成熟ですが、任天堂や国内家電メーカーの創業期資料が将来同様の評価を受ける可能性も考えられます。
関連情報——ジョブズと電子工学の原点
ジョブズは10代の頃、電子機器メーカーの米ヒューレット・パッカード(HP)が地元の学生向けに開いた部品提供プログラムに参加し、後に同社でアルバイトをした経験があります。そこで知り合った先輩社員の紹介で、当時同社に勤めていたスティーブ・ウォズニアックと出会ったとされ、この中学の自由研究はその数年前、2人の運命的な出会いに先立つ時期の作品にあたります。主催するRRオークションはボストンを拠点とする老舗オークション会社で、宇宙開発や歴代米大統領にまつわる歴史的資料の取り扱いでも知られており、今回のようなテック業界の一次資料オークションにも力を入れています。ちなみに2026年はApple創業からちょうど50年の節目にあたり、本社では記念イベントも各地で開催されてきました。
まとめ——落札結果は8月20日に判明
Apple創業50周年を記念するオークション第2弾は2026年8月20日に締め切られる予定で、科学展の展示物を含む全35点のジョブズ関連品がどこまで値を上げるか注目されています。前回セールでは推定額を大きく上回る落札が相次いだだけに、今回も終盤の争奪戦次第では推定20万ドルを超える結果になる可能性があります。最終結果が判明次第、あらためて追跡したいところです。