幼児食の81%が「超加工食品」に該当——米テキサス大学調査、WHO基準に半数不適合

保護者の想定を裏切る「規制の穴」——テキサス大学が2,783商品を分析

スーパーの棚に並ぶ「幼児向け」パッケージの裏側には、想像以上に工業的な加工食品が潜んでいるようです。米国の栄養学会「NUTRITION 2026」で発表された最新調査によると、テキサス大学オースティン校の研究チームが分析した幼児向け食品のうち81%が「超加工食品」に分類され、約半数がWHO(世界保健機関)の栄養基準を満たしていないことが判明しました。Medical Daily、EurekAlert、ScienceDaily、Medical Xpressなど複数の米メディアが報じています。

調査概要:テキサス州21店舗の売り場を丸ごと分析

今回の調査は、テキサス大学オースティン校のエリン・A・ハドソン氏(博士課程在籍、米国栄養学会サイエンスポリシー・フェロー)とマリッサ・バーガーマスター准教授が実施したものです。研究チームはテキサス州オースティン市内の21店舗のスーパーを訪問し、生後6か月から36か月向けに販売されている幼児食の棚を撮影。乳児用ミルクや飲料、初期の裏ごしピューレ状食品を除いた2,783商品を対象に、加工度と栄養成分を一つひとつ分析するという大規模な取り組みでした。同学会は7月25日から28日にかけて米メリーランド州ナショナル・ハーバーで開催され、今回の結果は7月26日に発表されています。

「超加工食品」とは?NOVA分類で見えた実態

分析には「NOVA分類」と呼ばれる国際的な食品加工度の分類システムが用いられました。これは食品を未加工・最小限の加工から、工業的な原料を多用する「超加工食品(Ultra-Processed Food、UPF。乳化剤や香料、着色料など家庭では通常使わない工業的添加物を多用し、複数の加工工程を経て作られる食品)」まで4段階に分けるものです。今回の調査では、対象商品の81%がこの最も加工度の高い「超加工食品」に該当しました。フルーツピューレやオートミールバー、チーズパフといった、一見健康的に見えるパッケージの商品も多くがこの区分に含まれていた点が注目されています。

WHO基準に約半数が不適合——糖分・塩分・脂質の実態

研究チームはさらに、WHOが策定した「栄養プロモーション・プロファイルモデル(NPPM。子ども向け食品の望ましい栄養水準を定めた国際基準)」に照らして各商品を評価しました。その結果、全体の49%が少なくとも一つの基準を満たしていないことが判明。内訳は、糖分基準超過が17%、塩分(ナトリウム)基準超過が25%、脂質基準超過が11%、エネルギー密度基準超過が12%でした。特に塩分超過の割合の高さは、幼児の腎機能や将来の高血圧リスクを踏まえると見過ごせない数字だといえます。乳幼児期は味覚や食習慣の基礎が形成される時期であり、この時期に糖分・塩分の強い味に慣れてしまうと、成長後も濃い味付けを好みやすくなる、あるいは肥満や生活習慣病のリスクが高まるといった懸念が、複数の疫学研究で指摘されてきました。今回の調査結果は、そうした懸念が理論上のものではなく、実際に店頭に並ぶ商品の栄養設計として広く存在していることを裏付けたものだといえます。

  • 糖分基準超過:17%(フルーツポーチなどの甘味料入り商品に多い)
  • 塩分基準超過:25%(マカロニ&チーズ、ターキースティックなど)
  • 脂質基準超過:11%(ピーナッツバーパフなど)
  • エネルギー密度基準超過:12%(チーズパフなど)

具体的にどの商品が問題視されたのか

研究チームが名指しで指摘した商品カテゴリーには、フルーツピューレを固めた「フルーツポーチ」(糖分過多)、オートミールバー(糖分・カロリー過多)、マカロニ&チーズ(塩分・脂質過多)、ターキースティック(塩分・脂質過多)、チーズパフ(カロリー過多)、ピーナッツバーパフ(塩分・脂質・カロリーいずれも過多)などが含まれます。これらはいずれも、共働き世帯や育児の時短ニーズに応える形で市場が急拡大してきた「幼児向けスナック」カテゴリーの代表格であり、パッケージには「オーガニック」「無添加」などの表示が付いていることも珍しくありません。しかし今回の調査は、そうした表示と実際の加工度・栄養価が必ずしも一致しないという、消費者にとって見えにくい落とし穴を浮き彫りにしました。

考察:なぜ幼児食売り場に規制の「穴」があるのか

研究者のハドソン氏は「多くの保護者は、幼児食売り場に並ぶ商品には何らかの栄養基準が課されているはずだと考えているだろう」と指摘した上で、「しかし実際には、そうした基準を満たしていない商品が半数近くに上る」と警鐘を鳴らしています。背景には、米国では乳児用ミルクこそ連邦政府による栄養規制の対象になっているものの、離乳後の幼児食・スナックには同様の義務的基準がほとんど存在しないという制度上の空白があります。警告表示の義務もないため、企業側は任意のマーケティング判断でパッケージデザインを決めることができ、結果として「健康そう」に見える見た目と、糖分・塩分過多の中身との乖離が生まれやすい構造になっていると考えられます。日本でも乳幼児向け加工食品市場は拡大していますが、今回のような加工度と栄養基準の両面から棚全体を横断的に検証した調査は珍しく、消費者庁や食品事業者にとっても示唆に富む結果といえるでしょう。米国では近年、食品パッケージの「クリーンラベル」表示(人工添加物不使用などを強調する任意の表示手法)が消費者の購買判断に強く影響する一方、その表示基準自体には法的な統一ルールがないという矛盾も指摘されており、今回の調査はこの構造的な問題を幼児食という切り口から改めて可視化したものと位置づけられます。

補足:NOVA分類とNUTRITION 2026学会について

NOVA分類は2009年にブラジルの研究者らが提唱した分類法で、現在では世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)の報告書でも参照される国際的な枠組みに成長しています。加工度が高いほど生活習慣病リスクとの関連が指摘されており、近年は英国やフランスなど各国で超加工食品の摂取制限を促す政策論議も進んでいます。一方、今回の発表の場となったNUTRITION 2026は、米国栄養学会(American Society for Nutrition)が毎年開催する栄養学分野最大級の学術会議で、世界中から研究者が最新の栄養疫学研究を持ち寄ります。今回の調査はまだ査読前の予備的な発表段階にある点には留意が必要です。

まとめ:今後の注目点

今回の調査は、テキサス州の一地域を対象にしたものではありますが、幼児食市場で「超加工食品」が主流になっている実態と、WHO基準に約半数が不適合という数字を具体的に示した点で注目されています。今後は査読付き論文としての正式発表や、他州・他国での追跡調査の有無、さらには米食品医薬品局(FDA)や業界団体がパッケージ表示の見直しに動くかどうかが焦点になりそうです。日本の保護者にとっても、輸入食品や海外ブランドの幼児食を選ぶ際に「パッケージの見た目」だけで判断しない視点として、参考になるデータといえるでしょう。

出典:
University of Texas at Austin, College of Natural Sciences
EurekAlert!
ScienceDaily
Medical Daily

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