25光年先に第二の地球? 大気は「宇宙の渚」の危機に

25光年先の「隣人」に地球型惑星、しかし大気は風前の灯

太陽系からわずか25光年という近距離に、生命が存在できるかもしれない岩石惑星が見つかりました。

米カリフォルニア大学アーバイン校(UC Irvine)の研究チームが最新観測で軌道と質量を再計算し、この惑星が「ハビタブルゾーン(habitable zone、恒星からの距離が適度で液体の水が存在しうる領域)」のちょうど真ん中に位置することを突き止めたと、Space.com、UC Irvine大学ニュース、The Debrief、Sci.Newsなど複数の海外メディアが報じています。

25光年先で見つかった「スーパーアース」

今回話題となっているのは、きりん座(Camelopardalis)の方向にある赤色矮星(せきしょくわいせい、太陽より小さく低温な恒星)「GJ 3378」を周回する惑星「GJ 3378b」です。

研究チームは、テキサス州マクドナルド天文台の「ハビタブルゾーン・プラネットファインダー」と、アリゾナ州キットピーク国立天文台の「NEID分光器」という2つの精密観測装置を組み合わせて再解析を行いました。

その結果、GJ 3378bの質量は地球の約2.3倍、公転周期は21.45日という、以前の推定値(公転周期25日)よりも短い数値に修正されました。

いわゆる「スーパーアース(地球より大きく海王星より小さい岩石惑星)」に分類される天体で、恒星から受け取る放射エネルギーは地球が太陽から受ける量の約90%とされています。

  • 質量:地球の約2.3倍
  • 公転周期:21.45日
  • 距離:地球から約25光年
  • 受ける放射量:地球の約90%

研究を率いたUC Irvineのポール・ロバートソン准教授は「25光年というと遠く聞こえるが、天の川銀河の直径は約10万光年におよぶので、その意味では“お隣さん”のような存在だ」と表現しています。

数字だけを見れば地球とよく似た環境に思えますが、話はそう単純ではありません。

「宇宙の渚」に立つ危うい惑星

研究チームが特に注目しているのが、GJ 3378bが「コズミック・ショアライン(cosmic shoreline、宇宙の渚)」と呼ばれる境界線のすぐそばに位置している点です。

これは、太陽系内外の惑星を対象に「恒星から受ける放射量」と「惑星の脱出速度(重力の強さの指標)」の関係を整理した経験則で、放射が強すぎる惑星ほど大気を失いやすいという傾向を示すものです。

金星や火星、あるいは地球の大気の有無は、おおむねこの境界線に沿って説明できるとされています。

GJ 3378bはこの「渚」のぎりぎり内側、いわば波打ち際に位置しているとみられ、大気を保持できているかどうかは現時点では分かっていません。

境界線のすぐ外側にはみ出していれば、大気はとうに失われていた可能性もあるだけに、まさに際どい位置取りだと言えるでしょう。

参考になるのが火星の例です。

火星もかつては地球に似た大気を持っていたとされますが、太陽からの強い放射によって長い年月をかけて大気を失ったと考えられています。

GJ 3378bは地球より大きい分、重力も強く大気を保持しやすいとする見方がある一方、赤色矮星は太陽よりもフレア(表面爆発)活動が活発な傾向があり、大気の維持にはむしろ不利に働く可能性も指摘されています。

ロバートソン准教授は大気の薄さを分かりやすく例えて、「地球をリンゴの大きさに縮めたとすれば、その大気の厚みはリンゴの皮ほどしかない」と説明しています。

惑星がハビタブルゾーンに位置することと、実際に生命が存在できることの間には、まだ大きな距離があることがうかがえます。

発見の経緯 – フランスからアメリカへ引き継がれた観測

GJ 3378bという天体そのものは、2024年にフランスの天文学者チームがハワイのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)を用いて存在を報告していました。

今回の成果は、その最初の発見を否定するものではなく、米国のチームが独自の観測データを加えて軌道や質量の推定精度を大きく高めた「再検証」にあたります。

当初の推定では公転周期が25日とされていましたが、今回の再解析で21.45日へと修正されており、こうした数値の見直しは系外惑星研究では珍しいことではありません。

  • 2024年:フランスのチームがCFHTで惑星の存在を報告
  • 2026年:UC Irvineなど米国チームが独自データを追加し質量・周期を再計算
  • 成果は学術誌The Astrophysical Journalに掲載

系外惑星の研究は、一度の発表で完結するのではなく、複数の国・機関が観測装置や手法を持ち寄りながら少しずつ精度を高めていく国際的な積み重ねの作業であることが、この経緯からもよく分かります。

今回のケースでは、フランスの初期発見に対し、テキサスとアリゾナの2つの天文台のデータを組み合わせた米国チームが「答え合わせ」を行った形です。

大気の有無が判明するのは2040年代以降

GJ 3378bに大気が存在するかどうかを直接確認するには、現在の観測技術では力不足だといいます。

研究チームによれば、この謎の解明には、NASAが計画している次世代宇宙望遠鏡「ハビタブル・ワールズ・オブザーバトリー(Habitable Worlds Observatory)」の打ち上げを待つ必要があり、実現は2040年代になる見通しです。

裏を返せば、今後10年以上にわたって「地球に似た環境かもしれない」という期待と謎が同居したまま、この惑星への関心が続くことになります。

地球近傍の系外惑星探査は年々進んでおり、今回のような「再解析による精度向上」も含めて、今後も同様の発見・修正が相次ぐと見られます。

補足情報

赤色矮星は宇宙に存在する恒星の中で最も数が多いタイプとされ、天の川銀河の恒星の7割以上を占めるとも言われています。

太陽より暗く小さいため、ハビタブルゾーンが恒星に近くなり、結果として公転周期の短い惑星が発見されやすいという観測上の特徴があります。

今回使われた「NEID分光器」は、恒星のわずかな揺れ(惑星の重力による影響)を精密に測定し、間接的に惑星の質量を推定する「視線速度法」に用いられる代表的な観測装置です。

系外惑星の直接撮影が難しい現状では、こうした間接的な手法が今も主力となっています。

GJ 3378bが位置するきりん座は、北天の天の川沿いに広がる目立たない星座ですが、地球に近い恒星が数多く含まれており、系外惑星探査の重要な観測対象になりつつあります。

今後もこうした近距離の恒星系から、続々と新たな候補が見つかる可能性があります。

まとめ

今回の研究により、25光年先の惑星GJ 3378bは、質量が地球の約2.3倍、公転周期21.45日、受ける放射量が地球の約90%という、より正確な姿が明らかになりました。

ハビタブルゾーンの中心に位置する一方で、大気を保持できているかどうかという最も重要な問いには、まだ答えが出ていません。

答え合わせには2040年代のNASA次世代望遠鏡の登場を待つ必要があり、当面は「近くて有望だが、詳細は謎」という位置づけが続きそうです。今後も系外惑星探査の進展から目が離せません。

出典:
Space.com
UC Irvine News
The Debrief
Sci.News

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