2025年8月のとある夕方。大雨が降り続いた一時間ほどの静けさを経て、18時ごろの東京・杉並区。
窓を開けて外に出ると、どこか違和感のある光景――「外が黄色っぽい」。青空もすこしのぞいているのに、いつもの澄んだ感じがない。
近所の子どもたちも「空が変だ!」と騒ぎ出すほど、日常とかけ離れた“色”が街を包んでいました。
実は、こうした現象は日本各地でたびたび目撃されていますが、正しく解明されている場面は意外と少ないもの。
この記事では、専門的な知見を交えつつ、黄色っぽく見える理由を正面から掘り下げていきます。
雨上がりの18時、東京都杉並区で起こったこと
まず状況を整理します。
- 日時・場所:2025年8月、18時ごろ、東京都杉並区
- 天候:1時間ほど強い雨。雨が上がった直後。
- 空の様子:雨雲の隙間から青空が少し見える一方、夕焼けはみえなかった。
- 視覚的変化:「空気が黄色っぽい」、「普段と光の感覚が違う」
この現象は、SNSや地域掲示板などでも「(空が)黄色・オレンジに染まった」「不気味」「いつもと違う」と話題になりやすい特徴があります。
光の散乱と“色彩”の科学――なぜ黄色く見えたのか?
ミー散乱とレイリー散乱(注1)――色が変わる仕組み
普段、昼間の空が青く見えるのは「レイリー散乱」という現象のため。太陽光のうち短い波長(青系)が空気分子により散乱しやすく、目に青く届くからです。
ところが、雨が大量に降った直後には、空気中に水滴や埃(ちり)が増えます。直径0.1~1µm(マイクロメートル、1/1,000,000メートル)ほどの粒子があると、今度は「ミー散乱(注2)」が優位になります。これは青だけでなく、赤、黄色、オレンジなど広い範囲の光がばらけるため、空全体が黄色~白っぽく、あるいは時として不気味な色合いに変化するのです。
(注1)レイリー散乱…主に波長の短い光(青、紫)が空気中の微小粒子により広く散乱される現象。
(注2)ミー散乱…水滴やダスト、黄砂など直径0.1μm以上の比較的大きな粒子による散乱現象。可視光のほぼ全体を散乱するため白色や黄色が強まりやすい。
“湿度95%超”の空気と、降雨量10mm以上の大雨が影響?
気象データを調べると、大雨直後は相対湿度95%超、降雨量も1時間で10mm以上に達することも珍しくありません。
地表近くに水滴や埃が濃縮され、空気全体が「フィルター」化してしまうため、「普段にはない色」や「不透明感」を感じやすくなるわけです。
夕焼けがないのに黄色い?──時間帯&太陽高度のトリック
夕方18時ごろは、8月の東京だと“日の入り”直前。太陽の高度は10~20度程度※で、光が斜めに大気を通過します。
その結果、青系の光がほとんど散乱・吸収され、黄色~赤系だけが大量に目に入る状態に。
※東京での8月の日の入りは大体18:40ごろ。
通常は赤みが目立って「夕焼け」となりますが、雲が厚い場合や大気が湿っている場合は、赤だけでなく黄色の成分が混じり合い、全体が「黄色っぽい」状態になることが多いのです。
また、雨雲の隙間から光が漏れ出すと“スポットライト”のような効果も生じ、「部分的に黄色く強調」された景色となります。
“最近よくある現象”:土埃・黄砂・煙霧、そして大気汚染まで
黄砂や煙霧(えんむ)(注3)への警戒
春に中国大陸からやってくる「黄砂」や、日本国内の工事や畑から上がる煙霧(注3)も、空を黄色く染める原因。
気象庁の報告によれば、都心部で黄砂が観測されるのは年間平均10日程度、ただし2020年代以降は偏西風や気候変動の影響で発生時期が5月~8月にも広がっています。
(注3)煙霧(えんむ)…地表の土埃や煙、ディーゼル排ガスの粒子などが大気中に舞い上がり視界が悪化する現象。PM2.5や花粉とも関連。
このような現象は健康被害が報告されることも多く、過去には視程(前が見える距離)が2kmに満たない事例も。
特に呼吸器が弱い方や小さな子どもは、予防的に窓を閉める、外出を控えるなどの配慮が推奨されています。
“大気の逆転層”(注4)で空が黄色がかる日も?
都市部の「ヒートアイランド」現象や冬~春にかけて、上空の温度が地表より高くなる“逆転層(注4)”が発生しやすくなります。これにより、工場や車の窒素酸化物(NO₂)が地表に溜まりやすく、光と反応して黄~オレンジ色の空になることも。
(注4)逆転層(ぎゃくてんそう)…高度が上がるほど温度が下がる通常の状態とは逆に、上空のほうが温度が高いために汚染物質や空気が地表に溜まる気象現象。
異変を感じた時の「暮らしの知恵」
- 外気の色や匂いがいつもと違うと感じたら?
- 黄砂・煙霧・PM2.5の情報は気象庁や各自治体の「大気汚染マップ」等でチェックするのが有効。
- 鼻や喉に刺激を感じたり、子どもの喘息が悪化しやすいので、必要に応じて外出を控えたり、空気清浄機の使用を推奨。
- 日常的な健康管理ポイント
- 喉や肌のかゆみなどが出たら、うがい・洗顔を徹底。(特に子どもや高齢者は注意)
まとめ – 身近な現象に科学の目を
結論として、“大雨の直後、夕方の空が黄色く見えた”現象は「ミー散乱を生む大量の水滴・埃+低い太陽高度」の組み合わせが主な原因。一見不思議に映りますが、メカニズムは案外論理的です。
近年、気候変動や都市環境の変化による黄砂や煙霧の増加も指摘されており、誰もが“空の色”に敏感になる時代。数字に置き換えると、相対湿度は90%超、黄色くなる日の日中光量は通常の60~70%に減るケースも観測されています。
日常の違和感を「なんとなく変だ」で済ませず、「なぜそんな色なのか?」と考えることこそ、より豊かな都市生活につながるのではないでしょうか。皆さんも次に空の色が違って見えた時は、ぜひ科学的な視点と好奇心をもって身近な自然現象を味わってみてください。