アメリカ政治の世界に新たな波紋が広がっています。
ドナルド・トランプ次期大統領が、就任わずか2日前に自身の名を冠した仮想通貨「$TRUMP」を発行し、暗号資産市場に衝撃を与えました。
政治家による仮想通貨発行は前例がなく、その是非や影響について、様々な議論が巻き起こっています。
トランプコインの衝撃的デビュー
2025年1月18日金曜日の夜、トランプ氏は自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」とXで、$TRUMPコインの発行を突如発表しました。
「私の新しい公式ミームコインがここに登場!私たちが掲げるすべてのもの、つまり勝利を祝う時が来ました!」というメッセージとともに、この仮想通貨の存在が世に知らされたのです。
$TRUMPコインは、いわゆる「ミームコイン」と呼ばれる仮想通貨の一種です。
ミームコインとは、特定の人物や運動、インターネット上の流行などの人気を利用して作られた仮想通貨のことで、経済的・取引的な価値はほとんどなく、投機的な取引の対象となることが多いものです。
発表から数時間後には、$TRUMPコインの時価総額が約60億ドル(約9000億円)にまで急騰。
わずか24時間で12,000%もの値上がりを記録し、世界の仮想通貨時価総額ランキングでトップ30入りを果たしました。
トランプ氏の仮想通貨戦略
トランプ氏が$TRUMPコインを発行した背景には、彼の仮想通貨に対する姿勢の劇的な変化があります。
かつては仮想通貨に懐疑的だったトランプ氏ですが、2024年の大統領選挙キャンペーン中に一転、仮想通貨の支持者へと転身しました。
昨年夏にナッシュビルで開催されたビットコイン会議では、「アメリカを地球上の仮想通貨の首都にする」と宣言。
さらに、規制緩和を通じて仮想通貨産業の発展を促進することを約束しています。
$TRUMPコインの発行は、トランプ氏のこうした仮想通貨戦略の一環と見られています。
同時に、これは彼の最新のマーチャンダイジング戦略でもあります。
トランプ氏は最近、香水やコロン、腕時計、さらには自身の選挙勝利を祝う100ドルの銀貨なども販売しており、$TRUMPコインはその延長線上にあるとも言えるでしょう。
倫理的懸念と市場への影響
しかし、大統領就任直前にこのような商業的な製品を発表することは極めて異例であり、倫理的な観点から懸念の声も上がっています。
非営利団体「責任ある政治のための市民団体(CREW)」の副代表ジョーダン・リボウィッツ氏は、「数十年にわたり、大統領就任前の候補者たちは利益相反を避けるために自身の財務から距離を置いてきました。
それなのに今回は、就任式の直前に新しいビジネスを立ち上げ、その分野の規制緩和を約束することで露骨に自身の大統領職から利益を得ようとしています。
これは全くもって常軌を逸しています」と批判しています7。一方で、仮想通貨業界はトランプ氏の動きを歓迎しているようです。
トランプ氏の就任式前夜に開催された非公式な仮想通貨業界の祝賀会では、トランプ氏の次期仮想通貨・AI担当責任者であるデビッド・サックス氏が「仮想通貨に対する恐怖政治は終わり、アメリカにおける仮想通貨イノベーションの幕開けが始まったのです」と述べました。
今後の展望と課題
$TRUMPコインの発行は、アメリカの仮想通貨政策に大きな影響を与える可能性があります。
トランプ氏は、デジタル資産の規制方法の見直しや、政府によるビットコインの備蓄など、仮想通貨業界に有利な政策を次々と打ち出すことを約束しています。
しかし、こうした動きは同時に、利益相反や市場操作の懸念も引き起こしています。
大統領の地位を利用した個人的な利益追求ではないかという批判や、仮想通貨市場の健全な発展を阻害する可能性があるという指摘もあります。
$TRUMPコインの詳細
$TRUMPコインは、Solanaネットワーク上に構築されており、総供給量は10億トークンに設定されています。
現在、2億トークンが流通しており、残りの8億トークンは今後3年間で順次解放される予定です。
興味深いことに、$TRUMPコインの発行はSolanaの価格にも影響を与え、発表後にSolanaの価格が18%上昇しました。
まとめ
トランプ次期大統領による$TRUMPコインの発行は、政治と仮想通貨の新たな関係性を示す象徴的な出来事となりました。
仮想通貨業界にとっては追い風となる可能性がある一方で、倫理的な問題や市場への影響など、解決すべき課題も多く残されています。
今後、トランプ政権下でアメリカの仮想通貨政策がどのように展開されていくのか、そしてそれが世界の仮想通貨市場にどのような影響を与えるのか、注目が集まっています。