便利店業界に激震、セブン-イレブンが北米で444店舗を閉鎖へ
コンビニエンス店の代名詞とも言えるセブン-イレブンが、北米地域で400店舗以上の閉鎖を発表しました。
この決定は、業界全体に大きな衝撃を与えています。
なぜ、このような大規模な閉店に踏み切ったのでしょうか?その背景と影響について詳しく見ていきましょう。
閉店の規模と背景
セブン-イレブンの親会社である日本のセブン&アイ・ホールディングスは、2024年10月11日の四半期決算発表で、北米地域で444店舗を閉鎖すると明らかにしました。
https://www.fox5dc.com/news/7-eleven-closing-more-than-400-locations
これは、北米におけるセブン-イレブンの全店舗数の約3%に相当します。
閉店の主な理由
- 業績不振: 閉鎖対象となる店舗は「業績不振」と位置付けられています。
- 来店客数の減少: 北米地域での来店客数が6ヶ月連続で減少しており、2024年8月には前年同月比7.3%減となりました。
- インフレの影響: 物価上昇により、特に中低所得層の消費が慎重になっています。
- たばこ販売の落ち込み: かつては便利店の主力商品だったたばこの売上が2019年以降26%も減少しています。
業界全体への影響とセブン-イレブンの戦略
便利店業界の課題
セブン-イレブンの大規模閉店は、便利店業界全体が直面している課題を浮き彫りにしています。
デジタル化の進展やデリバリーサービスの普及により、消費者の購買行動が変化しています。
また、インフレや高金利の影響で、特に中低所得層の消費が冷え込んでいることも大きな要因です。
セブン-イレブンの新戦略
このような状況下で、セブン-イレブンは以下のような戦略を打ち出しています:
- 食品重視の店舗展開: 既存店舗を「食品重視の便利店」に転換する計画を進めています。
- デジタル化とデリバリーの強化: セブンNOWサービスを拡大し、20分以内の配達を目指しています。
- プライベートブランド商品の拡充: 独自商品の開発と販売に注力しています。
- Speedwayとの統合によるシナジー効果: 2021年に買収したSpeedwayとの統合効果を最大化する取り組みを進めています。
業界再編の動きとセブン-イレブンの未来
買収提案と経営戦略の転換
セブン-イレブンを取り巻く状況はさらに複雑です。
カナダの小売大手アリメンテーション・クーシュ・タール(ACT)が、セブン&アイ・ホールディングスに対して買収提案を行っています。
ACTはCircle Kブランドを展開しており、この買収が実現すれば、北米最大の便利店チェーンが誕生することになります。
セブン&アイは当初、約390億ドル(約5.8兆円)の買収提案を拒否しましたが、最近になって472億ドル(約7兆円)に引き上げられた新たな提案を受け取ったと発表しています。
事業再編の動き
このような状況下で、セブン&アイは大規模な事業再編を計画しています:
- 持株会社名の変更: セブン&アイ・ホールディングスから「7-Eleven Corporation」への社名変更を検討しています。
- 事業の分割: コンビニエンスストア事業以外の事業(スーパーマーケットや専門店など)を「York Holdings Co.」として分社化する計画です。
これらの動きは、セブン-イレブン事業に経営資源を集中させ、企業価値を高めることを目的としています。
閉店の影響と今後の展望
雇用への影響
444店舗の閉鎖は、数百人規模の従業員に影響を与える可能性があります。
特に、米国が最大の市場であることを考えると、その影響は無視できません。
財務面での効果
一方で、この閉店によってセブン-イレブンは財務面でのメリットも期待しています:
- 2024年度の営業利益を3000万ドル(約45億円)押し上げる見込み。
- 年間ベースでは1億1000万ドル(約165億円)の利益改善効果を見込んでいます。
不動産戦略
さらに、セブン-イレブンは北米の一部の不動産をセール・アンド・リースバック(売却後賃借)する契約を結んでおり、これにより5億2000万ドル(約780億円)の利益を得る見込みです。
この取引は2025年2月に完了する予定です。
便利店業界の未来
セブン-イレブンの大規模閉店は、便利店業界全体の変革の必要性を示唆しています。
今後、以下のような傾向が強まると予想されます:
- デジタル化の加速: オンライン注文やモバイル決済の重要性がさらに高まるでしょう。
- 食品サービスの強化: 調理済み食品や健康志向の商品開発が進むと考えられます。
- 地域密着型サービスの拡充: 地域のニーズに合わせたサービス提供が重要になるでしょう。
- サステナビリティへの取り組み: 環境に配慮した商品や店舗運営が求められるようになります。
まとめ
セブン-イレブンの444店舗閉鎖は、便利店業界が直面する課題と変革の必要性を如実に示しています。
消費者行動の変化、デジタル化の進展、経済環境の変化など、様々な要因が複雑に絡み合っています。
しかし、この決定は単なる縮小戦略ではありません。
セブン-イレブンは、不採算店舗の整理と並行して、新たな成長戦略を打ち出しています。
食品重視の店舗展開、デジタルサービスの強化、プライベートブランド商品の拡充など、時代のニーズに合わせた変革を進めています。
さらに、親会社の事業再編や買収提案など、セブン-イレブンを取り巻く状況は目まぐるしく変化しています。
これらの動きは、便利店業界全体の再編につながる可能性もあります。今回の閉店劇は、セブン-イレブンだけでなく、便利店業界全体にとって重要な転換点となるかもしれません。
消費者のニーズに応え、地域社会に貢献し続けるために、便利店はどのように進化していくべきか。その答えを探る旅が、今まさに始まったと言えるでしょう。