ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡が捉えた”今までに見たことのない日食の映像”

NSOが、これまでに例を見ないユニークな日食の観測画像を公開しました。

4月8日に北アメリカで観測された日食ですが、ハワイの大型太陽望遠鏡「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)」が捉えた映像がこれまでにない視点から太陽の様子を捉えています。

Credit: DKIST/NSO/NSF/AURA

この日食では、北アメリカの特定の地域から観測できましたハワイでは部分日食でした。世界最大級のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡がユニークなデータを取得しました。月の端が鋸歯状のパターンとして捉えられるなど、望遠鏡の高性能が実証されたと言えそうです。

ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)とは

NSFのダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡の落成式 Credit: DKIST/NSO/NSF/AURA

ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡は、口径4mの主鏡を有する世界最大級の太陽専用望遠鏡です。 ハワイのハレアカラ山頂に設置されており、可視光から近赤外域までの広い波長で観測が可能です。最も小さい観測対象は太陽表面の細部にまで及びます。

2022年2月に運用を開始し、太陽の磁場を詳細に研究することが主要ミッションとされています。

「ダニエル・K・イノウエ」の名称はハワイ出身で日系アメリカ人初の連邦上院議員だったダニエル・K・イノウエ議員に由来します。

月の端が性能測定のためのツールに

DKISTのチームは、この日食観測の主な目的を望遠鏡システムの性能評価に置いていました。

月の縁の形状は既知であり、月と太陽の相対的な位置関係から予測できる黒い影が観測できます。このため、この月の黒い影を使って望遠鏡の性能を確認したり、観測機器の校正を行うことができるのです。つまり、月の通過は望遠鏡や観測装置の調整に最適な機会となるのです。

高解像度撮影に成功

DKISTを用いて撮影された日食映像は、月の端がまるで鋸歯のような形状に捉えられています。これは月面の山々の形状を反映していると考えられます。また、太陽大気を支配する対流セル構造も鮮明に映し出されています。

月の縁が映し出す太陽表面の様子

部分日食の際、月の縁が太陽の表面を横切る様子を捉えた映像

https://nso.edu/blog/the-eclipse-as-seen-by-the-daniel-k-inouye-solar-telescope-in-maui

ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡のサポートカメラのデータを使って作成されたものです。先週のマウイ島からの部分日食の際に、月が太陽の一部を遮った貴重な数分間の様子を捉えています。Credit: DKIST/NSO/NSF/AURA

月の縁は凸凹しており、これは月の山脈が影となって映し出されているためです。 この映像を解析することで、望遠鏡の性能評価や、太陽表面の対流パターンの理解につながります。

特に注目されるのは、月の縁が太陽表面の粒状パターンを遮る様子です。この粒状パターンは、太陽表面を覆う対流セルの様子を示しています。 対流セルの大きさは約1万キロメートルにも及び、その動きが太陽活動の源泉となっています。

データ解析と意義

膨大なデータの解析に数カ月

DKISTが日食観測で取得したデータは膨大で、性能評価に加えて新たな科学的発見にもつながる内容が含まれています。データ解析には数カ月を要する見込みだということです。

太陽磁場の解明に向けて

DKISTの主な目的は、太陽の磁場を詳細に観測し、その働きを解明することです。

今回の部分日食観測では、月の縁が太陽表面を横切る様子を捉えることで、望遠鏡の性能評価に役立てることができました。今後さらに、この望遠鏡による太陽観測が進めば、太陽活動と地球への影響、さらには宇宙天気予報の精度向上にも貢献することが期待されます。

私たちの生活に密接に関わる太陽活動の解明は、まさに21世紀の重要課題の一つといえるでしょう。

まとめ

DKISTによる初の日食観測は、望遠鏡の高い観測能力や解析能力を実証するとともに、太陽物理学と宇宙天文学の発展に大きく貢献する画期的な成果になりました。今後の更なる活躍が期待されます。

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