ジーリー全固体電池とは?航続1000km・寿命100万km、2027年試験導入へ

ダウ・ケミカルと共同開発、ボルボやポールスターにも展開へ

中国の自動車大手ジーリー(吉利)が、次世代の「全固体電池」を2027年に試験導入すると発表しました。

航続距離は1000kmを超え、寿命は100万kmに達するとされています。

米EV専門メディアのElectrekや業界誌CarNewsChina、独Electriveなどの報道をもとに、その中身と各社との競争における位置づけを解説します。

実現すればEVの弱点とされてきた航続距離不足と充電時間の長さを大きく塗り替える技術として、業界の注目を集めています。

ジーリーとは?ボルボやポールスターも傘下に持つ中国自動車大手

ジーリー(浙江吉利控股集団)は、中国・杭州に本社を置く大手自動車グループです。

傘下にはジーリー本体のほか、ボルボポールスターロータスジーカー(Zeekr)スマートなど欧州の有名ブランドを多数抱えています。

2010年にボルボを買収して以来、欧州の自動車技術を吸収しながら急速にEV開発力を高めてきた企業として知られています。

近年は電池を含む基幹部品の内製化にも力を入れており、車両単体の性能だけでなく電池技術そのものを競争力の源泉に位置づけています。

今回の全固体電池は、これらグループ全ブランドの車種に順次搭載される計画です。

背景には、中国国内で激化するEVの価格競争があります。

値下げ合戦だけでは収益を確保しづらくなる中、電池性能という技術力で差別化を図る狙いがあるとみられます。

エネルギー密度500Wh/kg、航続1000km超——現行電池からほぼ倍増

今回発表された全固体電池の最上位仕様は、エネルギー密度500Wh/kgを目標としています。

これは、ジーカーの現行リチウムイオン電池「金磚(ゴールデンブリック)電池」の約2倍にあたる数値です。

この密度が実現すれば、1回の充電で1000kmを超える航続距離が可能になるといいます。

電池寿命についても最大100万kmまで劣化を抑えられるとしており、一般的なガソリン車の耐用距離に匹敵する水準です。

ただし複数の海外メディアは、この500Wh/kgという数値がセル単体のものか、電池パック全体のものか、ジーリー側の説明が一貫していない点を指摘しています。

数値の基準によって「実現度」の評価は大きく変わるため、今後の技術資料の開示が注目されます。

それでも、1000kmという航続距離は東京・大阪間を往復してもなお余裕がある水準であり、EVの弱点として長年指摘されてきた「充電の不安」を根本から解消しうる数値です。

-40度から120度まで安定——ダウ・ケミカルとの共同開発が鍵

全固体電池は、従来の液体電解質の代わりに固体の電解質を使う次世代電池です。

可燃性の液体を使わないため発火リスクが低く、高いエネルギー密度を実現しやすいという特徴があります。

一方で、固体材料同士の接触不良による性能劣化が長年の技術課題とされてきました。

ジーリーは今回、米化学大手ダウ・ケミカルと共同で専用の接着剤を開発したと明らかにしています。

この接着剤はセ氏マイナス40度からプラス120度という幅広い温度域で安定性を保てるとされています。

極寒地から酷暑地まで性能を維持できる設計は、量産車に電池を搭載するうえで欠かせない要件です。

北海道の厳冬から中東の酷暑地まで同一の電池仕様で対応できれば、地域ごとに設計を変える必要がなくなり、車両開発のコスト削減にもつながります。

2027年は「量産」ではなく「試験導入」——CATL・BYDとの開発競争

ジーリーは2026年から実車での実証実験を開始しており、2027年からグループ各ブランドで試験導入を行う計画です。

ここで注意すべきは、2027年の目標があくまで小規模な試験導入であり、一般消費者向けの量産開始ではない点です。

中国電池最大手のCATLBYDも同様に2027年をターゲットに全固体電池の試験生産を計画しています。

CATLの首脳は自社技術について、9段階評価の技術成熟度で「レベル4」の水準にとどまると説明しており、量産にはなお数年を要すると述べています。

各社が同時期に目標を掲げる背景には、中国国内でのEV販売競争が激化し、航続距離と安全性を武器にした差別化が急務になっている事情があります。

裏を返せば、複数の大手が足並みをそろえて「2027年に試験導入」と表明していること自体が、全固体電池が依然として発展途上の技術であることを物語っているともいえます。

  • ジーリー:2026年実証、2027年試験導入
  • CATL:2027年試験生産、技術成熟度は9段階中4
  • BYD:2027年に試験生産を計画

トヨタも同時期に照準——日中の全固体電池開発競争の行方

全固体電池の開発競争は、中国勢だけのものではありません。

トヨタ自動車も、住友金属鉱山や出光興産と連携しながら2027年から2028年にかけて全固体電池搭載車の投入を目指しています。

トヨタが掲げる目標値はエネルギー密度450~500Wh/kg、航続距離約1000~1200km、急速充電10分程度と、ジーリーの数値とほぼ並ぶ水準です。

両社がほぼ同時期に類似の目標を掲げていることは、全固体電池が単なる一企業の技術自慢ではなく、業界全体が見据える共通の到達点になりつつあることを示しています。

日本勢は電解質の量産技術や材料調達網に強みを持つ一方、中国勢は市場投入のスピードと価格競争力で優位に立つ可能性があり、今後数年は両陣営の実車データが技術力を測る材料になりそうです。

全固体電池とは?——EVの弱点を解決する「次世代電池」の基礎知識

全固体電池がこれほど注目される理由は、現行のリチウムイオン電池が抱える課題を根本から解決できる可能性を秘めているためです。

現行の液体電解質電池は、低温での性能低下や、まれに発生する発火事故がEV普及の障壁とされてきました。

固体電解質はこうしたリスクを構造的に低減できるほか、電極材料の選択肢が広がるため、エネルギー密度を高めやすいという利点もあります。

一方で製造コストの高さや量産技術の未成熟さが課題として残っており、実際に消費者が購入できる価格帯で全固体電池搭載車が普及するまでには、なお時間がかかると見られています。

日本では出光興産や住友金属鉱山など素材メーカーがトヨタと組んで開発を進めており、電解質材料の供給網を握る主要プレーヤーとして存在感を示しています。

まとめ——実用化はまだ先、今後は技術データの開示が焦点に

ジーリーの全固体電池計画は、航続1000km超・寿命100万kmという野心的な数値を掲げた点で注目を集めています。

ただし2027年の目標はあくまで試験導入であり、量産車への本格搭載時期や価格は未定です。

エネルギー密度の算出基準など、技術的な詳細の開示が今後の評価を左右します。

CATLやBYD、そしてトヨタなど各社の開発競争から今後も目が離せません。

出典:
Electrek
CarNewsChina
Electrive

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