世界で億万長者100万人増、格差も拡大

株高とドル安が生んだ「資産バブル」、その裏で進む格差拡大

スイス金融大手UBSが2026年6月30日に発表した年次報告書「グローバル・ウェルス・レポート2026」によると、世界の個人資産は2025年に前年比10.8%という近年まれに見るペースで増加し、新たに約100万人がドル建て資産100万ドル(約1億5000万円)以上を持つ「ミリオネア」の仲間入りを果たしました。

ロイター、CNBC、Fortune誌などの報道をもとに、資産急増の実態とその裏で進む格差の実態を読み解きます。

世界の個人資産、なぜ急増したのか

UBSの調査は世界56の市場(世界の資産の92%以上をカバー)を対象にしたもので、2025年の世界全体の個人資産の伸び率は10.8%に達しました。

これは2024年の4.6%、2023年の4.2%を大きく上回るペースで、2017年以来最も速い増加率だといいます。

新たに生まれたミリオネアは1日あたり約2680人という驚異的なペースで、世界のミリオネア人口は現在およそ5750万人に達しました。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメント共同社長のロバート・カロフスキー氏は「世界の資産は3年連続で増加しており、特に今年はそのペースが顕著に強まった。

平均個人資産の伸びは世界経済の成長率を大きく上回っている」とコメントしています。

背景にあるのは、世界的な株式市場の好調による「資産効果(株価や不動産などの評価額上昇によって、保有者の消費や資産全体が押し上げられる現象)」と、米ドル安によるかさ上げ効果です。

ドルがユーロなどに対して下落したことで、ドル建てで計算する非米国圏の資産額が実質以上に膨らんだ側面もあると分析されています。

株式などの金融資産を多く保有する層ほどこの資産効果の恩恵を受けやすく、資産の伸びが必ずしも実体経済の成長や賃金上昇を伴っていない点は、後述する格差の議論にもつながっていきます。

国・地域別に見る資産増加の内訳

新たなミリオネアの内訳を見ると、米国の突出ぶりが際立ちます。

米国では1日あたり1200人超、年間で44万人以上が新たにミリオネアとなり、これは世界全体の増加数のほぼ半分を占めます。米国のミリオネア人口はすでに2360万人を超え、世界全体の4割以上を占めています。

その他の主要国の状況は以下の通りです。

  • 英国:新たに4万3000人以上が仲間入り
  • フランス・スペイン・日本・インド:それぞれ3万人以上が新規加入
  • 地域別成長率では、欧州・中東(EMEA)が約17.5%増(うち東欧は28%増)と最も高く、南北アメリカは8.5%増、アジア太平洋(APAC)は5.9%増

注目すべきは、前年より資産が減った市場は世界に一つもなかったという点です。

日本も3万人以上の新規ミリオネアを生み出しており、円建てでは実感しにくいものの、世界的な資産増加の波に確実に乗っていることが分かります。

ただし東欧の高成長率が示すように、この伸びの多くはドル安による「見かけ上のかさ上げ」効果を含んでいる点には注意が必要でしょう。

超富裕層への富の集中 – 「独楽」型に変わるピラミッド

ドル建て資産10億ドル(約1500億円)以上を持つ世界の億万長者(ビリオネア)は3302人となり、前年から383人(13.1%)増加しました。

さらに際立つのが、資産保有額で世界上位0.001%にあたる、わずか5万6000人の超富裕層の存在です。

Fortune誌の報道によると、この5万6000人だけで、世界の最貧困層40億人分を合計した資産よりも多くを保有しているとされ、その資産シェアは1995年以降ほぼ倍増しました。

UBSはこの現象を、従来の「富の三角形(裾野が広く頂点が細いピラミッド型)」から、中間層が厚みを増しつつも頂点への集中がさらに先鋭化する「独楽(スピニングトップ)型」への変化と表現しています。

一方で見過ごせないのが「資産の中央値(全世帯を資産額順に並べたときにちょうど真ん中に来る値。平均値と異なり、極端な富裕層の影響を受けにくい)」の動きです。

世界の多くの国で、平均資産は上昇した一方、中央値はむしろ下落しました。

米国を例に取ると、中央値は6万8998ドル(世界28位)にとどまるのに対し、平均資産は69万6277ドル(世界2位)に達しており、両者の差は「格差の度合いを示す指標ジニ係数(0に近いほど平等、1に近いほど格差が大きいことを示す)」で0.77(世界ワースト6位)という数値にも表れています。

世界の中間層はアジアへ – 「米国の世紀」の先にあるもの

今回のレポートで注目されたもう一つの潮流が、世界の中間層の拡大とその地理的な重心移動です。資産1万ドル未満の成人が全体に占める割合は、2000年の75%から現在は41%まで低下しました。

世界的に見れば、貧困層から中間層への移行が着実に進んでいることになります。

UBSは、世界の中間層人口が2030年までに53億人に達すると予測しており、その3分の2をアジアが占めると見込んでいます。

Fortune誌はこの潮流を「米国の世紀は、アジアの中間層に引き継がれた」と表現しました。もっとも、この「中間層」はもはや一枚岩ではなく、株式や不動産などの資産を持つ層、収入は高いがまだ資産形成に至らない層、サービス業中心で資産形成が難しい層――と、内部で明確に階層化が進んでいる点も見逃せません。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメント共同社長のイクバル・カーン氏は「世界の資産は急速なペースで変化しており、その成長は経済情勢の変化や技術革新によって形作られている」と述べています。

今後の資産成長は、投資可能な金融商品へのアクセスや分散投資の実行力に左右され、恩恵が世帯間で不均等に分配される可能性が高いとレポートは指摘しています。

補足情報

「グローバル・ウェルス・レポート」は、UBSが2010年から毎年発行している世界の家計資産に関する調査報告書で、クレディ・スイス買収後もUBSが引き継いで継続発行しています。

世帯の金融資産・不動産などを合算した「純資産」を基準に、成人一人当たりの資産額を国・地域別に算出しているのが特徴です。

今回のレポートでは中国本土・日本・ドイツ・英国・フランスがいずれもミリオネア人口200万人を突破しており、上位国の顔ぶれはここ数年大きく変わっていません。

なお、統計はすべて米ドル建てで算出されているため、為替変動――特に2025年のドル安――が各国の順位や増加率に影響を与えている点には注意が必要です。

ちなみに「ミリオネア」の基準となる資産100万ドルは、住宅ローンなどの負債を差し引いた純資産ベースで計算されており、必ずしも現金や金融資産だけを指すわけではありません。

まとめ

2025年、世界の個人資産は株高とドル安を追い風に10.8%という高い伸びを記録し、約100万人が新たにミリオネアとなりました。

しかしその内実は、平均資産の押し上げに反して資産の中央値が下落するなど、恩恵が均等に行き渡っていないことを示すものでした。

超富裕層への富の集中が加速する一方、世界の中間層の重心はアジアへと移りつつあります。

今後は株式市場の調整局面が訪れた際にこの「資産効果」がどこまで持続するのか、そして日本を含む各国で格差がさらに拡大するのかどうかが注目されます。

出典:
Reuters(Yahoo Finance掲載)
CNBC
Fortune
UBS Global Wealth Report 2026(公式発表)

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