なぜ多くの若者が亡くなったのか?北マケドニアのナイトクラブ火災で数十人の若者が死亡

違法営業と安全軽視が招いた若者たちの悲惨な最期

2025年3月16日、北マケドニアの東部コチャニ市にあるナイトクラブ「パルス」で発生した火災により、59人が命を落とし、155人が負傷するという悲惨な事故が起きました。

この事故は、国内で近年最悪の惨事となり、多くの若者の命を奪いました。

火災の原因や背景、そして遺族や生存者の悲痛な声を通じて、この悲劇の全容に迫ります。

北マケドニア

は、バルカン半島の中央部に位置する内陸国です。

国境は北にコソボとセルビア、東にブルガリア、南にギリシャ、西にアルバニアと接しています。

首都はスコピエで、面積は約2万5,713平方キロメートルです。

北マケドニアは、1991年に旧ユーゴスラビアから独立し、2019年に国名を「北マケドニア共和国」に変更しました。

この国名変更は、ギリシャとの間で長年続いた「マケドニア呼称問題」を解決するためのものでした。

火災発生の瞬間 – パニックと混乱の中で

火災は16日午前2時30分頃、人気ヒップホップデュオDNKのライブ中に発生しました。

ステージで使用された花火の火花が、可燃性の高い天井材料に引火したことが原因とされています。

19歳のマリヤ・タセヴァさんは、姉と一緒にクラブにいた時の様子をこう語ります。

「突然、みんなが『出ろ、出ろ!』と叫び始めました。」約500人の客が一斉に唯一の出口に殺到する中、マリヤさんは転倒し、他の人々に踏みつけられてしまいました。

彼女は奇跡的に脱出できましたが、姉は命を落としてしまいました。

違法営業と安全軽視の実態

内務大臣パンチェ・トシュコフスキ氏によると、このナイトクラブは正式な営業許可を持たず、違法に営業していたことが明らかになりました。

元カーペット倉庫を改装したこの施設は、十分な安全対策が取られていませんでした。

  • 収容人数の2倍以上の客を入れていた
  • 非常口が1つしかなく、裏口は施錠されていた
  • 消火設備や照明システムに不備があった

これらの問題点は、悲劇の規模を拡大させる要因となりました。

贈収賄と汚職の疑い – 15人が拘束される

事故後、警察は15人を拘束しました。

その中には、クラブの経営者や元政府関係者も含まれています。

トシュコフスキ内務大臣は、「贈収賄と汚職の疑いがある」と述べ、違法な営業許可の発行に関与した可能性のある人物の捜査を進めています。

フリスティヤン・ミツコスキ首相は、「政治的地位や所属政党に関係なく、容赦はない」と断言し、徹底的な調査と責任追及を約束しました。

遺族と生存者の悲痛な声

コチャニ病院の前では、多くの家族が愛する人の安否を待ち望んでいました。

赤十字のボランティア、ムスタファ・サイドフさんは、「犠牲者の多くが若者で、40代の両親が18歳や20歳の子供を失っている」と語り、現場の悲惨な状況を伝えました。

唯一の子供を失ったドラギ・ストヤノフさんは、激しい怒りと悲しみを露わにしました。

「私は死んだも同然だ。すべてを失った…ヨーロッパ中に知らせてくれ。この悲劇の後、私に人生なんて必要ない。一人っ子を失ったんだ。」

追悼と再発防止に向けて

政府は7日間の国民喪失期間を宣言し、緊急会議を開いて事故の調査と再発防止策の検討を進めています。

ゴルダナ・シリャノフスカ=ダフコヴァ大統領は、「責任者は誰一人として法と正義、そして処罰を逃れることはできない」と述べ、徹底的な責任追及を約束しました。

最も重症の負傷者たちは、ブルガリア、ギリシャ、セルビア、トルコの専門医療機関に搬送され、治療を受けています。

悲劇を繰り返さないために

この痛ましい事故は、安全規制の遵守と適切な監督の重要性を改めて浮き彫りにしました。

若者たちの命を奪った今回の悲劇を教訓に、北マケドニアだけでなく、世界中の国々が娯楽施設の安全性向上に取り組むことが求められています。

私たちにできることは、犠牲者を追悼し、遺族に寄り添うとともに、同様の悲劇が二度と起きないよう、安全意識を高め、法令遵守の重要性を社会全体で再認識することではないでしょうか。

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