Zoomsdayとは?Zoom全機種の脆弱性、AIが24時間・20命令で武器化に成功

AIが20個の指示を出しただけで見つかった、Zoom全機種を襲うゼロクリック攻撃

ビデオ会議アプリ「Zoom」に、参加するだけで他の参加者の端末を乗っ取られかねない深刻な脆弱性が見つかりました。セキュリティ企業A Securityが2026年8月11日に公表した調査によると、発見から実際に動く攻撃コードの完成まで24時間未満、使ったAIへの指示はわずか20個未満だったといいます。TechRepublic、Malwarebytes、eSecurity Planetなど複数のセキュリティ専門メディアがこの「Zoomsday」と呼ばれる脆弱性群を詳しく報じています。

Zoomsdayとは何か——AIが変えた「発見のスピード」

今回の脆弱性群は「Zoomsday」と名付けられ、CVE-2026-53413、53414、53415の3つの識別番号が割り当てられています。最大の特徴は、攻撃者が特別な操作をしなくても、同じ会議に参加するだけで相手の端末を乗っ取れる「ゼロクリック攻撃(被害者側の操作なしに成立する攻撃)」である点です。

さらに衝撃的なのは発見の過程です。A Securityの研究者は、一般公開されているAIモデルに20個未満のプロンプト(指示文)を与えるだけで、脆弱性の特定から実際に動作するエクスプロイト(攻撃コード)の完成までを24時間以内に終えたと説明しています。研究者らは「この種の“武器”を作る障壁は崩壊した。そしてもう元には戻らない」と警告しました。従来であれば国家レベルの支援や熟練チームによる数カ月の作業が必要だったとされる作業を、AIが劇的に短縮したことになります。

技術的な仕組み——「注釈機能」に潜んでいた3つの欠陥

攻撃の起点となったのは、画面共有中に参加者が図形や文字を書き込める「注釈(アノテーション)機能」でした。Zoomはこの注釈データを単純な画像としてではなく、構造化データとして参加者間でやり取りしており、受信側のアプリが自動的に処理する仕組みになっていたことが仇となりました。

  • CVE-2026-53413:注釈データを解析する処理で、128バイトの固定バッファに対しサイズ検証なしにデータを書き込めるスタックバッファオーバーフロー。戻り先アドレスの書き換えが可能に。
  • CVE-2026-53414:メモリの未初期化領域を読み取れる情報漏えい系の脆弱性。攻撃者はここから得た情報でメモリ保護機構(ASLR)を回避できる。
  • CVE-2026-53415:図形メタデータの処理における「書き込み先を自由に指定できる」脆弱性。エンドツーエンド暗号化された会議でもサーバー側の検査をすり抜けてしまう。

研究チームはmacOS版で実際にこの欠陥を悪用し、被害者側の端末で無関係のブラウザ(Safari)を勝手に起動させる実演に成功しました。Android版でも、アドレス漏えいなしにコード実行へつなげる手法を確認しています。影響はWindows、macOS、iOS、Android、Linuxの全プラットフォームに及び、Zoom Workplace、VDIクライアント、Zoom Rooms、会議用SDKなど主要製品を広くカバーしていました。

影響範囲とZoomの対応

A Securityによれば、Zoomはフォーチュン100企業の約70%が利用しており、影響を受けた利用者の規模は極めて大きいとみられます。研究者側は脆弱性を「重大(Critical)」と評価した一方、Zoom側は「攻撃には同じ会議への参加という一手間が必要」との理由でCVSS評価を一段階低い「High」としており、深刻度の受け止め方に差が生じている点も注目されています。

対応の時系列としては、2026年6月上旬に研究者から報告を受けたZoomが、まず同月下旬にクライアント向けの修正版(バージョン7.1.0)を配布し、7月にはサーバー側の緩和策と追加の修正版(7.1.5)を順次リリース。そのうえで8月11日に脆弱性の詳細が一般公開されるという流れをたどりました。報告から最初の修正版配布まで約12日というスピードは、脆弱性の深刻さをZoom側も相応に重く見ていたことをうかがわせます。現時点で悪用が確認された報告はないとされていますが、専門メディア各紙はバージョン7.1.5以降・7.0.6以降への即時アップデートと、待機室・パスコードの設定、不要時の注釈機能の無効化などを強く推奨しています。

なぜ重大なのか——AI時代のサイバーセキュリティが直面する課題

この一件が示すのは、単に「Zoomに欠陥があった」という話にとどまりません。これまで高度な脆弱性研究には専門知識と時間、多くの場合は組織的な支援が必要でした。しかし今回、市販レベルのAIモデルを使った個人規模の調査チームが、わずか1日でその水準に到達したことは、攻撃側・防御側双方にとって前提条件が変わったことを意味します。

裏を返せば、同じ手法は防御側の脆弱性診断や修正の高速化にも応用できます。実際に今回の発見自体も、悪用のためではなく開示・修正を目的とした「責任ある開示」の枠組みの中で行われました。今後は、AIを使った脆弱性調査が善悪どちらの目的にも急速に広がっていくとみられ、ソフトウェア企業には従来より短いサイクルでのパッチ配布体制や、AIによる自動コードレビューの導入といった対応が一段と求められることになりそうです。オンライン会議は日本企業でも在宅勤務・商談の標準ツールとして定着しており、海外発の脆弱性であっても対岸の火事とは言えない状況です。

補足:Zoomの脆弱性報告はこれが初めてではない

Zoomは動画会議市場で世界的に高いシェアを持つ一方、過去にもエンドツーエンド暗号化の実装不備や情報漏えいにつながる脆弱性がたびたび報告されてきました。日本国内でも「窓の杜」などのITメディアがZoomの脆弱性情報を継続的に伝えており、企業のリモートワーク環境における定番ツールであるだけに、修正パッチの適用状況は多くの組織にとって見過ごせない課題となっています。なお、今回悪用に使われたのは特定のAIサービス提供企業ではなく、公開されている汎用AIモデル群であり、AI開発企業側の落ち度が直接指摘されているわけではない点も補足しておきます。

まとめ

Zoomの「Zoomsday」脆弱性群は、AIの活用によって高度なサイバー攻撃の開発期間が劇的に短縮されうることを示す象徴的な事例となりました。3つのCVEはいずれも修正済みで、利用者は最新版へのアップデートが最優先の対策となります。今後はAIを悪用した脆弱性発見の高速化が他の主要ソフトウェアにも広がる可能性があり、企業のセキュリティ対応サイクルそのものの見直しが迫られそうです。

出典:
A Security
TechRepublic
Malwarebytes
eSecurity Planet

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