アメリカ・カリフォルニア州を中心に40年以上にわたり、低価格商品を提供し続けてきた、アメリカ版100円ショップの”99セントオンリーストア”が、2024年4月に全371店舗の閉鎖を発表しました。
この突然のニュースは、アメリカの低価格小売り業界の厳しい現状を象徴するものといえるでしょう。一方、日本の100円ショップは依然として健闘を続けています。両国の違いはどこから来ているのでしょうか?
Once a paradise for penny-pinchers, 99 Cents Only Stores is closing shop. From 99 cent TVs to inflating challenges, discover what led to the downfall. Read the full scoop. 🛍️ https://t.co/mG99ta3hgs
— Los Angeles Magazine (@LAmag) April 5, 2024
99セントオンリーストアとは?
99セントオンリーストアは、アメリカのカリフォルニア州を中心に展開する均一ショップのチェーンで、1982年に創設され、現在約400店舗を展開しています。
店内の商品のほとんどが99セントで購入できるため、日本の100円ショップに相当するお店といえます。日本の100円ショップと違うのは、野菜や果物も豊富に扱っているところです。パーティーグッズ、おもちゃ、日用品など、様々なジャンルの商品が揃っていて、日本の商品も取り扱っています。
営業時間は短めですが、遅い時間でも買い物ができるのが特徴です。日本の100円ショップに似た役割を果たしているお店だと言えるでしょう。
経済状況の悪化
同社の暫定CEOは、この決断について「極めて厳しいものでした。私たちが期待し望んでいた結果ではありません」と述べています。
その背景には、「COVID-19パンデミックの前例のない影響、消費者需要の変化、深刻な商品の盗難、持続的なインフレ圧力、その他の経済的逆風」など、小売業界を取り巻く難しい経営環境が存在したと説明しています。
同様の状況に立たされているのが、先月1,000店舗の閉鎖を発表したダラーツリーです。低価格路線のディスカウントストアは、近年の経済的圧力に苦しんでいるようです。
影響と問題点
この店舗閉鎖ニュースに、カリフォルニア州の一部の消費者からは知事への強い批判の声が上がっています。
「ニューサム知事(カリフォルニア州知事)のせいだ。税金が高すぎ、最低賃金が上がりすぎている。これらの企業は競争できなくなり、結局閉鎖せざるを得ない」と常連客の一人はジュアレスさんは嘆いた。
実際、ジュアレスさんによると、同店のメインストリート店舗には20年以上も通っており、”なくてはならない存在”だったといいます。そのような長年の顧客にとって、99セントショップの閉店は大きな損失であり、州政府の政策が引き金となったと感じているようです。
低価格を武器に地域になくてはならない存在となっていた99セントオンリーストアの閉鎖に、多くの顧客が危機感を抱いているのが伺えます。特に低所得者層にとって、このような店舗の存続は生活に直結する問題だっただけに、その失望は大きいと考えられます。
確かに、カリフォルニア州の高い最低賃金や税率は、同社のような中小企業にとって大きな負担となっていた可能性があります。
日本とアメリカの経営環境の違い
一方、日本の100円ショップは、こうした厳しい環境の中でも健闘を続けています。その背景にあるのは以下のような特徴です。
日本100円ショップの強み
店舗数の違い:99セントオンリーストアはカリフォルニア州を中心に約400店舗を展開しているのに対し、日本の100円ショップチェーンはダイソー、セリア、キャンドゥなどが全国に数千店舗を構えています。つまり、99セントオンリーストアは地域的に集中しているのに対し、日本の100円ショップは全国規模で展開されている点です。
品質の違い:日本の100円ショップは比較的良質な商品を扱うのに対し、99セントオンリーストアの商品は品質が低いと評価されることが多い。
治安の違い:99セントオンリーストアは治安の悪い地域に立地することが多く、店舗の雰囲気も良くないと指摘されています。一方、日本の100円ショップは比較的良い立地に展開されています。
100円ショップ業界は、物価高騰や円安の影響で消費者の節約志向が強まりながらも、アウトドア用品などの好調な販売や価格にとらわれない商品訴求力の向上により、売上が拡大しています。
とはいえ、日本の100円ショップも、原材料価格の高騰や運営コストの上昇が課題となり、特に小規模な地場の100円ショップは経営難に直面しています。このような状況下、業界は大手と中小企業の二極化が進むと予想されています。(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230403.pdf)
終わりに
99セントオンリーストアの閉鎖は、カリフォルニア州の最低賃金引き上げなどの政策が一因となっているようです。店舗の閉鎖に伴い、低所得者層にとって重要な買い物の場所が失われることが懸念されています。
99セントオンリーストアは長年にわたり、99セントという低価格で良質な商品を提供してきましたが、コロナ禍の影響や消費者需要の変化、インフレなどの経営環境の悪化により、事業の継続が困難になったようです。
一方、日本の100円ショップは、経営環境の変化に柔軟に対応しながら、店舗網の拡大を続けています。
日本の100円ショップは、商品の品揃えや店舗の立地、顧客層など、99セントオンリーストアとは異なる特徴を持っています。低所得者層だけでなく、幅広い顧客層に支持されており、地域に根付いた存在となっています。
このように、99セントオンリーストアの閉鎖と日本の100円ショップの展開には大きな違いがあり、両者の経営戦略や顧客基盤の違いが浮き彫りになったと言えるでしょう。