宇宙開発の歴史の中で、これまで人工衛星は主にアルミニウムなどの金属で作られてきました。
しかし、2024年9月、京都大学と住友林業が共同で開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat」が、国際宇宙ステーション(ISS)から軌道上に放出されることになりました。
https://www.space.com/japan-september-launch-first-wooden-satellite
木材を宇宙で活用する、まさに新しい挑戦です。
木材の宇宙利用可能性を検証
LignoSatは、10cmサイズの小型立方体で重さは0.9kgと軽量です。
通常アルミニウムで作られる部分を、強度と加工性に優れた木で製造しています。
この木造人工衛星の目的は、木材の宇宙環境での耐性を検証することです。
具体的には、木材の膨張、収縮、劣化、内部温度、電子機器の性能などのデータを収集し、木材の宇宙利用可能性を明らかにすることが目指されています。
衛星に使われた木の種類は?
LignoSatに使用されている木材は、マグノリアの木です。
マグノリアはモクレン科の木の総称です。美しい花と木材の特性から、庭園樹や街路樹、盆栽などに広く利用されています。
LignoSatの開発は2020年4月から始まり、2年以上の歳月をかけて行われてきました。
まず、木材の候補として強度と加工性の「さくら」 「白樺」 「マグノリア」の木片を使った宇宙環境耐性の事前試験が行われました。
その後、2024年6月にLignoSatはJAXA(宇宙航空研究開発機構)に引き渡され、安全審査に合格。
9月にはケネディ宇宙センターからISSに運搬され、約1ヶ月後にきぼう日本実験棟から軌道上に放出される予定です。
木材の持続可能性に着目
従来の金属製人工衛星は、大気圏に再突入する際に有害な金属粒子を地球に落とすことが問題視されてきました。
一方、木材は環境への影響が小さく、持続可能な素材として注目されています。
LignoSatの成功により、木造人工衛星の実現が期待されています。
木材の宇宙利用が広がれば、月や火星での木造の宇宙居住施設の建設にもつながる可能性があります。
木造人工衛星の将来性
LignoSatの実験成果によっては、木材の宇宙利用が大きく広がる可能性があります。
木材は再生可能な資源であり、環境への影響も小さいため、持続可能な宇宙開発に貢献できると期待されています。
将来的には、月や火星での木造の宇宙居住施設の建設も視野に入ってきました。
木材の強度や耐久性、加工性などの特性を活かせば、宇宙空間でも人間が快適に生活できる環境を実現できるかもしれません。
補足情報
LignoSatの開発には、京都大学と住友林業の他にも多くの関係者が携わっています。
例えば、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は安全審査を行い、打ち上げ支援も行っています。
また、木材の宇宙環境耐性試験では、さくら、白樺、マグノリアの各木材が検討されました。
まとめ
2024年9月、世界初の木造人工衛星「LignoSat」が宇宙に打ち上げられます。この取り組みは、木材の宇宙利用可能性を検証するものであり、持続可能な宇宙開発への貢献が期待されています。
LignoSatの実験成果次第では、木造の宇宙居住施設の建設など、木材の宇宙利用が大きく広がる可能性があります。木材の特性を活かした新しい宇宙開発の扉が開かれるかもしれません。