アルテミス計画に参加する日本人宇宙飛行士とルナクルーザー

アルテミス計画は、半世紀ぶりの有人月面着陸を目指す、NASAが主導するプロジェクトです。日本もこの計画に参加しており、日本人宇宙飛行士2名が月面着陸に参加することが発表されました。

さらに日本の技術力を象徴する月面探査車「ルナクルーザー」の開発も発表されました。この記事では、これらのトピックに焦点を当て、日本が国際宇宙探査において果たす役割を探ります。

https://www.nasa.gov/news-release/nasa-japan-advance-space-cooperation-sign-agreement-for-lunar-rover/

<要約>

  1. NASA とJapanが月探査の協力関係を強化し、新たな協定に調印しました。
  2. 日本は有人・無人の月面探査に使用するルナクルーザー(有人型の与圧ローバー)の設計、開発、運用を行います。一方、NASAは月面への打ち上げと輸送、および2回の日本人宇宙飛行士の月面着陸機会を提供します。
  3. ルナクルーザーにより、宇宙飛行士はより遠方へ移動し、長期間の月面活動が可能になります。
  4. 今回の協定は2023年1月に締結された日米宇宙探査分野の協力協定の一環をなすものです。今後、火星探査機ドラゴンフライや次世代太陽観測衛星の共同開発などでも協力が予定されています。
  5. 本協定により、アルテミス計画の一環として、はじめての女性や日本人の月面着陸、さらに初の国際パートナー宇宙飛行士の月面着陸が実現する見通しです。

アルテミス計画の概要

アルテミス計画は、アメリカのNASAが主導する月探査計画です。2017年に正式に立ち上げられました。

この計画は、以前のNASAの計画であるコンステレーション計画アステロイド・リダイレクト・ミッションの主要ミッションを取り入れています。

アルテミス計画の主な目標は、2024年までに初の女性と有色人種の宇宙飛行士を月面に送り込むことです。その後、2030年代半ばまでには火星軌道への有人ミッションを実現することを目指しています。

アルテミス計画では、商業宇宙企業との協力の下、ロボット着陸機、ゲートウェイモジュールの輸送、有人月着陸船の開発など、さまざまなサポートミッションが計画されています。

アルテミス1

  • 2022年11月に無人試験飛行を実施し、成功しました。

アルテミス2

  • SLSロケットで打ち上げられた4人の宇宙飛行士は、オリオン宇宙船に搭乗して月面を飛行し、月面フライバイを行った後、地球に帰還します。
  • このミッションには8~10日間を要し、オリオン宇宙船とその生命維持システムの能力に関する重要なデータを収集します。
  • アルテミス2の当初の打ち上げ目標日は2024年11月でしたが、延期され、2025年9月までに打ち上げられる予定です。

アルテミス3

  • アルテミス3は30日間のミッションで、1972年のアポロ17号以来となる有人月面着陸が予定されています。
  • 4人の宇宙飛行士がオリオン宇宙船に搭乗して月へ向かい、月周回軌道上のルナゲートウェイとドッキングします。
  • 有人着陸システムはSpaceXが設計した再利用可能ロケット「スターシップ」の月面適応版を使用します。
  • スターシップは2人の宇宙飛行士を、これまで人類が訪れたことのない月の南極まで運びます。選ばれた2人は、初の女性と初の有色人種の宇宙飛行士となります。

アルテミス4

  • SLS Block 1Bロケットを使って、4人の宇宙飛行士をルナゲートウェイ宇宙ステーションに送り込みます。
  • ルナーゲートウェイにESAとJAXAが開発した国際居住モジュール(I-Hab)を設置します。
  • I-Habの設置後、宇宙飛行士はSpaceXのスターシップに乗り移り、月面に降下して数日間滞在します。
  • 現時点では、2028年9月の打ち上げを目指しています。

ルナゲートウェイ

「アルテミス計画」の一環として建設が進められている月周回有人拠点です。

主な目的は、月探査の中継地点、科学研究のプラットフォーム、そして将来の火星探査への準備拠点としての役割を果たすことにあります。
ルナゲートウェイは、電力・推進エレメント(PPE)、居住・ロジスティクス拠点(HALO)、国際居住棟(I-Hab)などのモジュールから構成されます。日本はI-Habの生命維持・環境制御システムの開発、HTV-Xによる物資補給、HALOへのバッテリー提供などを担当しています。

ルナゲートウェイは月長楕円極軌道(NRHO)に設置され、最も近い地点で高度約4,000km、最も遠い地点で高度約75,000kmを周回する予定です。将来的には4人の宇宙飛行士が年間30日程度ゲートウェイに滞在することが想定されています。

ゲートウェイの初期構成要素であるPPEとHALOは2025年以降に打ち上げられる予定です。

SLS Block 1Bロケット

NASAが開発・運用しているスペース・ローンチ・システム(SLS)で、より大型の上段ロケットを搭載したバージョンがSLS Block 1Bロケットです。SLS Block 1の後継機種として位置づけられており、打ち上げ能力や搭載可能な貨物の重量が大幅に増強されています。

SLS Block 1Bは現在開発中で、2027年の打ち上げを目指しています。

<国際居住モジュール(I-Hab)のモックアップ>

日本人宇宙飛行士の参加

日米両政府は、アルテミス計画において日本人宇宙飛行士2名が月面着陸することに合意しました。現時点で対象となり得る日本人宇宙飛行士は7名で、具体的な選考方法は未定とのことです。JAXAによると、まだ選考は行っておらず、今後選考プロセスを進めていく予定だそうです。

日本人宇宙飛行士候補

では、具体的に誰が候補に挙がっているのでしょうか。

・諏訪理(まこと)さん(47歳)
・米田あゆさん(29歳)
・若田光一さん(60歳)と野口聡一さん(58歳)は既に引退しているため対象外
・その他の候補としては、星出彰彦さん(55歳)、古川聡さん(60歳)、油井亀美也さん(54歳)、大西卓哉さん(48歳)などの経験豊富な宇宙飛行士が考えられます。

これらの日本人宇宙飛行士候補の中から、2028年以降の月面着陸ミッションに2名が選ばれることになります。JAXAは具体的な選考方法を検討中で、今後発表されるでしょう。

アルテミス計画における日本の役割

具体的な役割としては以下のようなものがあげられます:

  1. 無人補給機HTV-Xの提供
  2. 月面ローバーの開発
  3. 2人の日本人宇宙飛行士の月面着陸機会の獲得

特に注目されるのが、トヨタ自動車が開発を主導する高性能な月面探査車・ルナクルーザーです。この車両の活用により、長期の月面活動が可能になると期待されています。

日本は今回のアルテミス計画への参加によって、月探査分野での主導的な立場を確立できそうです。宇宙開発における日本の存在感が一層高まることが期待されます。

ルナクルーザー(有人型の与圧ローバー)とは

ルナクルーザー開発の経緯

2019年からJAXA、トヨタ自動車、三菱重工が共同で研究を開始しました。
2022年に概念検討フェーズを完了し、現在は2024年の本体開発スタートに向けて先行開発を進めています。

ルナクルーザーの特徴

ルナクルーザーは、乗員が宇宙服を着用しなくても活動できるよう、与圧キャビンを備えた高度なモビリティを目指しています。
全長6m、全幅5.2m、全高3.8mと大型で、4畳半ほどの居住スペースを持つ、まさに”月面を走る宇宙船”のような存在となります。

技術的な特徴

トヨタは、これまでのクルマづくりで培った信頼性、耐久性、走破性、燃料電池技術などを活かし、月面探査に貢献する計画です。また、月面で得られた技術は地球への還元も期待されています。

2029年に打ち上げを目指しています。

タカラトミー(TAKARA TOMY) トミカプレミアム 07 ルナクルーザー TOMICA16201

オリオン宇宙船

オリオン宇宙船は、NASAが開発している次世代の宇宙船です。

この宇宙船は、これまでにない遠方の目的地、特に月や深宇宙への有人宇宙探査を目的として設計されています。最大4名の宇宙飛行士を搭載可能です。
オリオン宇宙船には、推進システムや電力供給、生命維持システムなどの重要な機能が搭載されていますが、これらの機能は欧州宇宙機関(ESA)が開発した「欧州サービスモジュール」によって提供されています。

このモジュールにより、オリオン宇宙船は月や深宇宙への探査ミッションを遂行することができます。オリオン宇宙船は、前述したNASAの強力なロケットSLS(スペース・ローンチ・システム)によって打ち上げられ、地球の重力圏を抜け出して目的地に向かうことができます。

2022年11月には初の無人試験飛行を行い、月周回軌道を飛行して地球に帰還しました。2024年にはアルテミス2ミッションで宇宙飛行士4名が搭乗し、月周回飛行を行う予定です。

<テストを受けるオリオン宇宙船>

<海上回収訓練の様子>

NASAのアルテミスIIのクルーと米海軍の隊員による訓練

まとめ

アルテミス計画では、日本人宇宙飛行士2名が月面着陸に参加することが発表されました。JAXAは今後、選考プロセスを進めていく予定です。

日本人宇宙飛行士の月面着陸は、日本の宇宙開発にとって大きな意義を持つことでしょう。

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