GoProがAI企業へ転身、株価2日で140%高騰——427億円でスターマン合併

動画カメラ大手が2日間で株価140%高騰、AI企業への転身を発表

米アクションカメラ大手GoProの株価が2026年8月31日から9月1日にかけてわずか2日間で約140%急騰しました。

きっかけは人気YouTuber「Markiplier(マークプライアー)」による大量株式取得の発覚と、光学部品メーカーとの合併発表という2つのニュースが重なったことでした。

CNBC、Forbes、TechCrunch、PetaPixelなど複数の米メディアの報道をもとに、経営危機が続いていたGoProがなぜAIデータセンター関連企業への転身を選んだのか、その内幕を解説します。

人気YouTuberの株取得で株価が乱高下

事の発端は、登録者数3800万人を超える人気YouTuber、Mark Fischbach氏(通称Markiplier)による株式取得でした。

同氏は2026年8月20日付の証券取引委員会(SEC)への提出書類で、GoProの株式8.5%(約1350万株)を取得したことを開示しました。

取得額は約930万ドル(約14億円)で、これによりMarkiplier氏はGoProの個人株主として筆頭株主に躍り出ました。

同氏はGoProの新型カメラ「Mission 1 Pro ILS」を実際に試用した上で「割安だ」と判断して投資したと説明しています。

ただし提出書類は「純投資」目的とされており、経営への関与や取締役会への参加は求めていないとみられます。

この開示を受けてGoPro株は8月31日(月)に前日比46%高の0.88ドルで取引を終え、時間外取引ではさらに55%上昇し1.37ドルまで買われました。

翌9月1日(火)には78%高の1.56ドルまで上昇し、ナスダック上場維持基準である「株価1ドル以上」を数週間ぶりに回復しました。

8月28日時点の安値0.60ドルから計算すると、わずか数営業日で株価は2倍以上に膨らんだことになります。

市場全体はこの間ほぼ横ばいで推移しており、GoPro株の急騰が同社固有の材料によるものだったことがうかがえます。

光学部品メーカー「スターマン・オプティカル」との合併——285百万ドルの活路

株価急騰と同じタイミングで、GoProは米国の光学部品メーカー「Starman Optical(スターマン・オプティカル)」との合併契約を締結したと発表しました。

Starman Opticalは非上場の光フォトニクス企業で、データを光信号に変換して高速通信を可能にする「光トランシーバー」を米国内で製造しています。

合併条件によると、GoPro株主には合計2億8500万ドル(約427億円)、1株あたり1.14ドル(約171円)の現金が支払われます。

既存株主は合併後の新会社の株式を約10%引き続き保有する形になります。

さらにGoProが抱えていた約9200万ドル(約138億円)の債務は、合併成立時に全額返済される予定です。

取引が完了すればGoProは実質的に無借金の財務基盤を手に入れることになります。

合併はGoPro株主の承認や規制当局の許可を条件としており、成立は2026年末までを見込んでいます。

財務アドバイザーには投資銀行Houlihan Lokey、法律顧問には法律事務所Fenwick & Westが起用されました。

なぜ「AIデータセンター」なのか——GoProの光学技術と国内回帰の思惑

今回の合併の狙いは、GoProが持つ光学技術と2500件超の米国特許を、AIデータセンター向け部品事業に転用することにあります。

生成AIの普及に伴い、データセンターでは膨大な情報を高速でやり取りするための光トランシーバーの需要が急増しています。

光トランシーバー(電気信号と光信号を相互変換し、大容量データを高速伝送する部品)は現在、その多くが海外で生産されており、供給網の脆弱性が指摘されてきました。

GoPro創業者兼CEOのニコラス・ウッドマン氏は「消費者向け、商業向け、そして防衛市場にまたがる米国発の映像・光学ソリューション企業として成長させたい」と述べています。

Starman HoldingのCEOチャールズ・テベレ氏も「GoProの世界クラスの光学技術と知的財産を組み合わせ、これらの重要部品の生産を米国内に取り戻す」と強調しました。

合併後の会社は政府・防衛・航空宇宙・ロボティクス分野への展開も視野に入れており、中国製部品への依存を減らしたい米国の安全保障上の思惑とも合致しています。

民生用カメラメーカーが安全保障がらみのサプライチェーン再編の受け皿として選ばれた点は、AI関連投資の裾野の広がりを象徴する出来事と言えるでしょう。

追い込まれていたGoPro——赤字拡大と人員削減の裏側

今回の合併劇の背景には、GoProが長年抱えてきた深刻な経営不振があります。

2026年4〜6月期の売上高は1億490万ドル(約157億円)で、前年同期比31.3%の減収となりました。

同期の純損失は5100万ドル(約77億円)にのぼり、カメラの販売台数も約29万1000台と前年比38%減少しています。

2023年から2025年までの累計損失は約5億7800万ドル(約867億円)に達し、財務諸表には「継続企業の前提に重要な疑義」を示す注記も付けられていました。

2026年には人員の23%を削減するリストラも実施しており、創業者のウッドマン氏自身も自社株購入という形で2000万ドル(約30億円)を会社に融資していました。

株価急騰前の時価総額はおよそ1億3900万ドル(約209億円)まで落ち込み、52週間の変動幅は0.57ドルから3.05ドルと極めて不安定でした。

証券アナリストの目標株価の平均は0.50ドル(約75円)にとどまり、買い推奨は1件もない状況が続いていました。

まさに「万策尽きた」状態のGoProにとって、Starman Opticalとの合併は事業継続そのものを左右する決断だったと言えます。

補足:希薄化リスクとアクションカメラ市場の今後

GoProは合併とは別に、最大8億ドル(約1200億円)相当のクラスA株式を発行できる株主承認も取得しており、うち1億ドル(約150億円)分は新規発行株とされています。

株価急騰局面でこうした新株が発行されれば、既存株主の持ち分が薄まる「希薄化」のリスクが生じる点には注意が必要です。

アクションカメラ市場では近年、スマートフォンのカメラ性能向上や中国メーカーの低価格製品の台頭により、GoPro従来の主力事業そのものが縮小を続けてきました。

今回の合併が成立しても、GoProは既存の消費者向け製品やサブスクリプション・クラウド事業は継続する方針を示しています。

ただし収益の柱がカメラ事業から光学部品事業へと移行していけば、「GoPro」というブランドの意味合い自体が大きく変わっていく可能性があります。

まとめ——meme株的な熱狂と構造転換が同時進行

今回のGoPro急騰劇は、人気YouTuberの投資という「meme株」的な材料と、AIデータセンター需要を取り込む本質的な事業転換という、性質の異なる2つの要因が重なって生じました。

株価の急騰そのものは投機的な側面が強く、アナリストの多くは依然として慎重な見方を崩していません。

一方でStarman Opticalとの合併が計画通り完了すれば、GoProは債務を解消し、AI関連の成長市場に足場を築く企業へと姿を変えることになります。

合併が正式承認されるかどうか、そして「GoPro」というブランドが光学部品企業としてどこまで市場に評価されるかが、今後の焦点となりそうです。

出典:
24/7 Wall St.
PR Newswire
PetaPixel
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